表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

第二十八話 説明は端折らないようにしよう

「…という訳だ。」


話を終わらせる。

一応言っておくがちゃんと説明したぞ。


『実はかくかくしかじかという訳なんだ…』

『かくかくしかじかしか言って無いじゃん、死ね!』


的なことではない。

決して無い


二人は椅子に座り俺の話を聞いており、くろごまは俺の膝の上で丸くなって眠っている。



「す、すごいです!そんなことやってのけるなんてさすがジン様です!」


シエルはキラキラした目で尊敬の眼差しを向けてくる


「召喚されてすぐにそんな事を考えて、実際にやってのけるなんて…

並の人間では到底不可能でしょうね」


ティアラは俺の手にある蔵書を見ながら呟く


「しかしこのような道具は初めて見ます…コレも装具の一種なのでしょうか?」


「装具?」


なんか聞いたことある名前だな


「あ、申し訳ありません。装具と言うのは普通の武具と違い自由に出し入れ出来る装備品の事です。

私や姉さんの持っている物もその一種で、特徴は出し入れが持ち主の自由にできる事と、普通の武具に比べ遥かに優れており、且つ特殊な力が備わっているんです」


ああ、そういやシエルがそんな事言ってたな。


「装具は極めて数が少なく、且つ装具自体が持ち主を選ぶので所持者は極僅かしかいません。その分とても強大な力を秘めており、使い方次第では魔人とも互角に戦える、とまで言われています」


「持ち主を選ぶってなんか生きてるみたいな言い方だな」


「その表現は間違いではありません。

ある者は装具に触れた途端に火達磨になり死亡した、と言う事例も有りますから」


おお、怖い怖い。


「逆に装具に認められたものが触れれば装具はその場で消え、その後は持ち主が自由に扱えるようになります」


ん?


「なあ、装具って一人で何個も持てるもんなのか?」


「それはできません。装具によって選ばれる者が全く違うというのもありますが、二個以上の装具を扱おうとした者は必ず死亡する、と言う伝承が伝えられており、実際に試した者も例外無く死亡する為、一人一つが限界と言われています」


「なら装具ってジョブに関係無く装備できたりするのか?」


「それもありません、戦士なら戦士、魔法使いなら魔法使いの装備しか扱う事は出来ません」


「ならこれはどういうことだ?」


俺は自分が出し入れできるようにした武器類をその場に無造作に出した。

どっかで聞いたことあると思ったら宝物庫あそこにあった武具が全部そう書いてあったんだ

斧、弓、ナイフ、槍、杖…他にもあったが全部出したら部屋の底が抜けそうだからやめた。

ゴトゴトと音を立て床に転がる装具?達

二人はそれを目を点にしながら呆然と見ていた。

ああ、そういあ靴も装具って書いてあったな。



「全部は出してないけど宝物庫あそこに有った武具は全部自由に出し入れできるぞ。これは装具じゃないのか?」


「…い、いえ、これらからは姉さんのクライムソングや私のハイルフティアと同じ感じがします。

何より出し入れできる、と言う事は…信じられませんが装具で間違いないかと…」


クライムソングとハイルフティアってのは二人の得物の事か。


「んーでも特に死ぬとかそういうの無かったんだけどな」


となると考えられるのは…


「ティアラ、アンサーできるか?」


「え、あ、はい」


「ちょっと俺を見てもらってもいいか?こっち来てから一度も見たこと無いんだよ」


「わかりました」


ティアラは呪文を唱え始めた


「…礎は真実を現す鏡なり、『アンサー』」


アーシェの顔の前に何やら半透明の枠と中に文字のようなものが現れた。


「お見せしますね」


そう言うと枠は40型テレビぐらいになり、中の文字もそれに比例して大きくなった。



〔ジョブ ----〕


〔WK  天衣無縫〕



と表示されていた


「…このWKを見た、若しくは聞いたことあるか?」


「いいえ、ありません」

「は、はじめてみました」


「…ふむ」


しばらく考え


「なあ、もしかして装具って作成できないから希少なのか?」


「はい、装具は材質、作成法、作成した人物、全てが謎に包まれています。

 古代の人間が作ったとも神が落としたとも言われていますが

 実際は良く分かっておらず、主に洞窟やダンジョンにあったり代々受け継がれて

 いたりというのが主流で、現在のウルジアで作成は不可能と言われています。

 良くお分かりになられましたね?」


「なんとなくな、いまので確信が持てたよ」


天衣無縫の『天衣』とは装具を指しているんだろう、

本来の天衣とは天人の着物の事で、特徴は縫い目が全く無い…

つまり人の手で作る事ができない。

『無縫』は『無法』に掛かっていて、繋げて直訳すると装具に関するルールの除外って事だろう。



分かりやすく説明すると


Q.装具が認めない奴が装備した場合

A.『やめて!乱暴する気でしょう!?ならあんたもう死ね!』


Q.認められた奴の場合

A.『し、しょうがないから持ち主として認めてあげる。か、勘違いしないでよね!私がいないとアンタなんにもできないだろうから…そ、そう、仕方なくよ!……でも…た、大切にしてよね…』


Q.もう一つ装具を装備しようとした場合

A.『アンタ装具コブ付きじゃない!舐めないでよクズが!』

or

『…ねぇ…私が居るのに他の装具に手を出すの?…ねぇ……答えてよ…』




Q.俺が装備した場合
















A.『らめぇぇぇぇぇぇぇぇあたま真っ白になっちゃうのぉぉぉ!!!!!

そうでしゅ!わらひはあなた様の装具でしゅ!

装具どれだけ持っても使っても良いから!!だから…お願い!!好きなときにいくらでも出し挿れしてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』












異世界ハーレムってこれ(無機物)の事か?

詐欺ってレベルじゃねーぞ

訴訟も辞さない


特定のWKでしか使えない技や術があるならそういうスキルがあってもおかしくない。

そうじゃなきゃとっくに死んでたんだろうか?おお、怖い怖い。

にしてもなんでWKが四字熟語なんだろう?

WKって潜在的な職業じゃなかったっけ?


「ど、どういうことですか?」


シエルが頭に?を浮かべて聞いてくる


「簡単に言うと、装具に関する決まり事が全て俺には適用されないんだ。

俺がこの世界で目覚めた力がコレなんだろうな」








装具が希少な事を考えると本来は微妙な感じかもしれんが、俺の場合はあれだな

パズルゲームで棒一本分の空白地帯のみを残してた時に棒が降りてきた時のあの感覚だな


「す、すごすぎです!」


「そうですね、確かにそう考えるのが妥当だと思います…」


「なんか気になる事でもあるのか?」


「WKは良いとしてもジョブが何も表示されないのが気になります。

たとえ何も持ってない者でも何かしら表示されるはずなので…

まだジン様には何らかの力が隠されている可能性があります」


「ふむ…まぁ今考えても仕方ないわな、それよりさっきの話で気になったんだが

装備できない物をつけると具体的にどうなるんだ?」


「はい!簡単にいうと、とっても戦いにくくなるんです!

例えば魔法使いが剣を装備すると、適正のある戦士系より何倍も重量を感じたり、

装備の能力がうまく発揮できなかったりするんです。

でめりっとの内容は様々ですがすくなくともまともに実践で戦う事は出来なくなります!」


えっへんと胸を張るシエル

おい、揺れてるぞ


「なるほどな」


シエルの頭を撫でる

触った時はビクッとしたが、すぐにされるがままになった


「えへへ…」


「ああ、あとWKって潜在職業を表すんじゃないのか?なんで四文字熟語で表示されるんだ?」


すると今度はティアラが間髪入れずに


「よんもじじゅくご、というのは分かりませんが、固有WKの一部や上級のWKになりますと

 職業名ではなくなるんです。俗に言う『二つ名』と呼ばれるものになるんです」


「でもそれだと同じ二つ名持ちが出たりするんじゃないのか?」


同じ二つ名持ちがいるってすごい滑稽だよな


「俺の名は〇〇、別名閃光だ!」

「いや、俺も別名閃光だけど」

「「…」」


想像して笑いそうになってしまった


「一部の固有WKや上位のWKになりますと、下級WK以上に細かく分類されるんです。

なので今現在同じ二つ名を持った者というのは確認されていません。」


ちょっと残念な気がしないでもないが、杞憂だったようだ。

ん、なんかティアラがちらちら俺とシエルを交互に見てくる


「えっと…」


なんとなくして欲しそうな気がしたのでティアラの頭を撫でる


「あぅ…」


ティアラは顔を真っ赤にして俯いたままされるがままになった

やっぱり姉妹なんだな、となんとなく思った。


「ちなみに二人のWKはなんていうんだ?」


「は、はい…私は『雪姫』と言います。ジョブは中級職の魔術師です」


「わたしは『焔纏』です!ジョブは下級職の剣士です!」


「ほー」


俺のWKが四文字熟語なのはあっちの世界の人間だからなんかな

そう思っていると、部屋のドアがノックされた


「なんだ?」


出した装具を仕舞ってから答える


「失礼します、お食事の御用意が出来ました」


ドアの向こうから店員が話す


「あー、もうそんな時間か」


思ったより話し込んじまったな、窓の方を見ると日が沈みかけていた。


「分かった、ご苦労さん」


「いえ、では失礼致しました」


んじゃまあ飯食いに行くかな


「俺はウルジアの事殆ど分かんないからこれからも色々サポートしてくれな」


「はいっ!まかせてください!」

「かしこまりました」


「んじゃ食堂に行くか」


包みも全て蔵書に仕舞い、

丸くなっているくろごまを肩に乗せ、俺たちは食堂に向かった。

















―――――――『アンサー』でジョブやWKが表示されない理由は二つしかない。




一つは何らかの方法で隠蔽している事、もう一つは…







術者との圧倒的な力量の差があること。





ただ…ジン様の場合WKは表示されているし、ウルジアに来たばかりで

隠蔽の方法など分かる訳も無い。召喚されたからという理由も考えられますが…



「おーい、行くぞー」

「あーちゃんはやくー」


「あ、はい今行きます」





ジン様の言う通り今考えても仕方ないですね

先程の話題の変え方から言ってジン様には何かしら心当たりがあるようですが…

お側にいればいずれ分かる事でしょう。


姉さんはムルクに居た頃と違ってとても楽しそうですし私もそれは同じです。

それにジン様は、その…とても優しくしてくださいますし…

ムルクを出て本当に良かったですね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ