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第二十七話 伏線ってこんな感じでいいんだろうか?

「随分と派手にやったんだな」


二人に城からここに来た経緯を聞いた最初の感想がそれだった。

街を速攻で出てくろごまに乗って東に向かっている俺達三人と一匹。

畜生、また俺以外の人間をくろごまに乗せる事になるなんて…

本当は歩いてのんびり移動したいんだが、さっさとムルクを出ないと追っ手に捕まる。

こっち来てからこんなんばっかだな


「申し訳ありません…」


しゅんとシエルが俯きながら答える。

座っている位置は俺が真ん中で二人が左右にいる。

二度目なので慣れたと思ったが、まだ怖いのか両腕を絡められている。

貴様らそうまでして俺に凶器むねを押しつけるのか

なんて恐ろしい子…


「別に悪いと言っているわけじゃない。それよりシエル、髪型変えろ」


「え?」


「結構顔売れてるんだろ?多少なりとも変えておかないと他のとこで気づかれるだろうが」


「あ、あーちゃんはいいんですか?」


「国内ならともかく、国外で名前と顔が売れるのは将だからな。

ティアラが外交官として国外に行っていたとしても、会ってるのは国の内政官達だけだろ?」


「そうですね…一般人で私の顔を知っている人は殆どいないと思います」


「取り合えずポニーテールにでもしとけ、それだけでもだいぶ違うだろ」


「は、はい、分かりました」


それからしばらくして国境を越えて更に奥に進み、大陸東海岸側にある港町近くでくろごまから下りた

ここまで来れば大丈夫だろう。

ここで色々準備しておかないとな。

シエルは元々つけていたリボンを使い、ポニーテールに変えた。

街はかなり大きい、ログスも大きかったがここは更にでかいな。


「随分とでかい街なんだな」


「ここはこの大陸で唯一の港町ですからね」


「ほー」


全体的にレンガで出来ているようで港には大小複数の帆船が係留している。

街の形は海岸線に沿って半円型になっており、街の周囲を外壁で覆っている。

外壁は中々立派なもので城壁のように分厚い。

街自体は入り口から港に向けて大通りが出来ており活気がすごい。

あっちこっちうじゃうじゃヒトがいる。

さっきの酒場の比じゃないな。

にしてもさっきからなんか視線を感じる。

大方アーシェとカグラを見ているんだろうけど。

この二人とんでもなく美人だからな。

なんで俺についてきてるのか分からないくらいの。

ほんとなんでついて来るの?帰れば良かったのに


「まず服屋に行くぞ。多少高い所でもかまわない、知ってたら教えてくれ」


「大抵の店は大通り沿いにあります。いい店は港側にありますから奥の方に行けばあると思います」


「分かった」


視線を無視しながら大通りを進んで行くと確かに港の方の店は入り口側の店より高級感があった。

例えるなら入り口側が個人経営のちっさい店で港側に行くにつれて大手の高級服店みたいな感じになっていった。

俺たちはその中の港側に一番近い大きな服屋に入った。


「いらっしゃいませ、どのようなものをお求めでしょうか?」


中に入ると二人の女性店員が姿勢良く頭を下げ、出迎えた。


「後ろの二人に下着も含めて2着分選んでやってくれ。寝巻き用の服も2着ずつ。動きやすくて長旅に耐えられるものであれば多少値が張ってもかまわない。後は二人の希望を聞いて選んでくれ」


「「えっ」」


後ろで二人がなにやら驚いていた


「かしこまりました」


さて俺も選ぶか。


「ジ、ジン様」


「ん、なんだよ?」


「よ、よろしいんですか?」


シエルが心配そうな顔をして尋ねてくる。


「お前ら着の身着のままきたんだろ?これから色々なとこ行くんだから買っとけ。(そのままだと身元が割れる可能性があんだろが)」


肝心の部分を店員に聞こえないように言う。


「でも寝巻きまで…」


「早く言って来い。女の服選びは時間がかかるんだろ?」


「わ、私おしゃれはあまり…」


「私が選んであげますよ姉さん。さぁ、行きましょう」


困惑するシエルを引っ張って店員の一人と共に店の奥に行くノリノリのティアラ。やっぱりシエルの服はあいつが選んでたのか。

なんかすごいの選んできそうだけどそれはそれでいいか。

楽しみにしておこう。


んじゃ俺も選ぶとするか。


ティアラ曰く、この格好変わってるらしいからな。

普通のシャツとズボンなんだけどな。


「俺にも動きやすく長旅に耐えられる服を選んでくれ。

後はグローブもあれば適当に見繕ってくれ」


「かしこまりました、こちらへどうぞ」


店員の後に続いて服を選ぶ。

店員が選んだのは襟付きの白いレザーシャツの様な服だった

あとなぜか着た途端涼しくなった。

ズボンは表面がテカテカしてるレザーパンツだ

膝の部分にはプロテクターが付いている。

グローブは革でできた薄い黒のグローブだ。

グローブを着け、手を動かしてみる。

新品特有の硬さを感じたが特に問題はなさそうだ。

時間が経てば馴染んでくるだろう

軽く足を曲げたり肩を回したりと動きやすさも確認する。

ズボンもシャツも体の動きに合わせて伸び縮みするようで行動の妨げにはならない。

いい感じだ



「いかがでしょうか?それらはゼメロスの皮を使っており、かなり丈夫に出来ております。加えて紋章効果で、ある程度の適温自動調整機能も持っており、通気性も高く動きも阻害されません」


「紋章と言うのは?」


「特殊効果が発動する文字や絵の事を総じて紋章といいます。文字、絵、使った材料によってさまざまな効果が現れます。このシャツの場合は多少の熱さ、寒さなら気にならなくなる紋章が刺繍されています」


服にクーラーがついてるようなもんなのかな。

確かにシャツにはなにやら模様のような文字が縫い付けられている。

涼しく感じたのはそれが理由か。


「悪くない、コレを2着貰おう。あとこの店は仕立て直しはやっているか?」


「はい、行っております」


「これをフード付きのコートに出来るだろうか?」


俺が店員に見せたのは懐かしきおっさんマント

表は黒地に金色の糸で紋章のようなものが大きく刺繍されてある。

何かの絵だと思うが良く分からん。

裏は赤で両面共金色の意匠が細かく施されており、かなり良い物だと思う。

首の所にはファーが付いている。

これでかすぎて普通に着れないんだよな。

かといってお蔵入りしとくにはもったいない。

フード付きというのは単にくろごまを入れておきたいからだ。

これから先ずっと頭に乗せていたら厄介な事になるかもしれん。

今は俺の背中に直接くっついて身を隠してもらっている。

その所為かさっきから後ろからスピスピと鼻息が聞こえる。

もう少しだけ我慢してくれまいはにー


ていうかそれ以前にコレ誰から貰ったんだっけか…?

おっさんてどのおっさんだろ…まあいいか。



「知人から譲り受けたものなのだが見ての通り俺には大きすぎてな。だが着ないのも悪い気がして…と思ったんだができるだろうか?」


「確認させていただいて宜しいでしょうか?」


「ああ」


店員はしばらくマントを触りながら全体を確認した後、


「そうですね、この大きさならできると思います。3日程お時間を頂きますがよろしいでしょうか?」


俺のサイズ測らなくても分かるもんなのか?

それともなんかスキルっぽいのを使ったのか?それとも作った後に使うのか?


「かまわない、代金は服の会計に纏めておいてくれ、それと服はこのまま着ていく」


「かしこまりました」


後は俺も寝巻き用に二着程買っておけばいいか。

店員に聞いて適当に寝巻きと下着を二着選んでおいた。

良くある剣と魔法の世界では武器や防具の事は書かれてても着替えの事って殆ど出ない。あれって実際不潔極まりないよな?

鎧は変えても下に着る服はラスボスまで変わらないとか異臭がするってレベルじゃなくね?


その辺の描写を書くのが面倒なだけかもしれんけど


それはさておき、あちらはどうなったかな


あいつらの向かった方を見るとまだ選んでいるっぽかった。

選んでいるのは店員とティアラ。シエルは着せ替え人形みたいになっているようだ。

なにやらキャーキャーと騒いでいる。

女三人揃えば姦しいとはよく言うものだ


時間がかかるみたいだし色々聞いておくか。


「紋章というのは知っていれば誰でも作れるものなのか?」


「紋章は紋章師しか扱う事はできません。ただし作るのに時間がかかるので

紋章付きの物は必然的に値段も高くなってしまいます。また紋章師の技量や知識によって扱える紋章も全く違うそうです」


紋章専門のジョブがあるってことか。


「ちなみにこのマントの紋章効果は分かるか?」


「申し訳ありません、紋章も縫いこんでいる糸も全く見たことがありません」


「そうか」


「マントの生地自体も見たことが無いので、マント自体にも何か特殊効果が有るかも知れません」


「そういうものもあるのか」


「はい、例えば火に強い生物の皮や植物で出来た衣類や防具は火の防御力が高い物になります」


ああ、成る程な


「武器にもそういう物はあるのか?」


「武器や鎧の場合ですと主に特殊な鉱石を用いることで出来るそうですが

詳しい事は分かりません。そちらについては武器屋、防具屋でお聞きした方がよろしいかと」


「そうか、あと最近変わった事を聞いたことは無いか?」


「変わった事ですか…最近壊滅寸前だったムルクが魔族の侵攻を追い払った、という噂を良く聞きますね。何でも異世界の勇者が活躍したとか」


もう広がってるのか、まあいい感じの噂だな。


「ああ、あとその戦場で山のように大きな龍が現れた、と言うのも聞きました。まぁこちらは怪しいものですが」


むぅ、これぐらいはしょうがないか。

にしてもシエル達の事は噂になっていないのだろうか?

逃げられた事を身内の恥とでも思って隠しているんだろうか?

だったら都合がいいんだが…まあ楽観的な考えはよしておこう。


そうして色々と聞いていると、


「お待たせしました」


とティアラが声を掛けてきた。


声のした方を見てみると二人が立っていた。

……おいィ?


「何でそのままなんだ?」


ティアラの服装は変わっていなかった、折角選んだなら着ればいいのに。

するとなにやらティアラは顔を赤くして


「…これはジン様と出会ったときに頂いた思い出深い物ですから」


と言う

まあ本人がそういうならいいか

似合ってるし、買ってないって訳でも無いみたいだしな

ティアラは両手で選んだ衣服を抱えていた


「そうか、確かに似合っているしティアラが良いならそれで良いか」


「あ、ありがとうございます」


耳まで真っ赤になった

こいつ褒め言葉の耐性意外に低いんだろうか?もしかしたらチョロインなのかもしれない


さて、シエルはというと、


「ど…どうでしょうか?」


俯きながら恥ずかしそうに立っている。

両手を胸元に重ねてちらちらこちらを見てくる


最初シエルの着ていた服はティアラが選んだ物だと確信した

簡単に言うと『布面積少ない』の一言に尽きる


「それでいいのか?」


念の為本人に確認を取ってみる


「な、なにかおかしいでしょうか!?」


途端に不安で今にも泣きそうな顔になるシエル


「いや?良く似合ってるぞ」


これ以外の言葉を言うとヤバイ事になりそうだ…ていうか確実になる。

まあ実際似合ってるし、いろんな意味で。

にしても俺褒め言葉のレパートリーすくねぇな。

褒めた事なんて無いからどういったらいいのか分からん

貶すのなら大得意なのに。


「あ、ありがとうございます!ジン様もとっても似合っててかっこいいです!」


途端にぱっと花が咲いた様に嬉しそうにするシエル

ほんところころ表情変えるな。


「そうか、ありがとな」


俺は特に外見を意識したわけではないのでお世辞なんて言わなくてもいいんだがな


白と赤を基調とした上着は最初着ていた物とほぼ同じ布面積で、首から胸上部は完全に露出していて谷間部分がVの字に開いている。

バニーガールのあれと着物が合わさったような感じ。

良くこんなの置いてたな、そして選んだな。

下はこれまたミニスカート、色は赤で以前と同じ位の短さ。

ただ前と違い太もも辺りまでの長さの細かい意匠が施されている白のタイツを履いていた。

他の衣服は店員が持っているようだ。


まあ本人達が選んだんだし特に文句は無いんだろう。

さっさとカウンターに移動し、会計をする。


「全て合わせまして、6700Gでございます」


普段着1000×6=6000

寝巻き100×6=600

仕立て直し=100


と言う計算らしい。


ログスの宿の事も考えると1G=100円くらいか?

だとすると寝巻きたっけーな。

まあ店も店だし長旅用だししょうがないか。

服は二人の物も紋章がついてるみたいだし戦闘にも耐えれるらしいしこんなもんか。むしろ防具としてみれば安めかもしれんが別にいいだろう。

1G以下の金の単位とかあるんだろうか。



清算し、包まれた衣服を受け取る


「では三日後に顔を出す」


「はい、お待ちしております」


ありがとうございました。という挨拶を背中で受けながら店を出る。


「あの、ジン様」


ちなみに衣服は各人で自分の物を持って歩いている。


「ん?」


店を出て歩き出すとシエルが声を掛けてきた


「こんなにもたくさん買っていただいて本当にありがとうございました!ずっと大事にします!」


「本当にありがとうございます」


満面の笑みを浮かべ、幸せそうに包みを両手でしっかり抱きしめながら二人が言う。どの世界も女ってのは衣服をプレゼントされると喜ぶもんなんだな。

まあ俺が選んだわけじゃないが。


「別に気にする必要は無い、それより宿に行くぞ、他にも色々買うものがあるから一度荷物を片付ける」


「はい!」


「かしこまりました」


蔵書を人目につくところで使いたく無い。

それにこの街でアレを買うとなると色々時間がかかる可能性もある。

アレが無ければそもそも寝巻きなんざ買わない。

と、適当に伏線でも立てとこう…まあ大体予想はつくだろうけど。

蔵書の事はまあこいつらに知られるのはしょうがないだろう。


そう思いつつ服屋のすぐ近くにあった宿屋に入った。

ここも港にすぐのところだから信用できるだろう。

その分高いのは仕方ない。


「いらっしゃいませ」


カウンターの中で男の店員が出迎える。


「3人で10日程泊まりたい」


「お部屋はいかがなさいますか?」


「1部屋でいい」


「ベッドはいかがなさいますか?」


「ダブルがあればそれで」


言った途端後ろで何やら二人が反応した気配がしたが一切無視する。

ええ、無視しますとも。


「かしこまりました。3人で10泊ですと2000Gでございます。先払いになりますがよろしいでしょうか?」


「ああ、わかった」


カウンターに4G貨を2枚置き、清算する。

一泊200Gか、さすがにログスの宿より高いな。

まあ人数も部屋も違うしその辺は仕方ないか。


「では少々説明をさせていただきます、まず当宿は御食事をお部屋に持っていく事はできません。すべて食堂でご用意しております。食堂の場所はこの通路をまっすぐ進んだ突き当たりにございます。御食事のご用意が出来ましたら部屋に御呼びに参りますが、いらっしゃらない場合、食堂の開いている間に来ていただけませんと御用意出来ませんので御了承下さいませ。開いている時間は朝7時から9時、昼11時から13時、夕方18時から20時となっております」


そういあ今更だけど時間の表し方はあっちと一緒なんだな。

それともそう翻訳されてるだけなんかな?


「次に入浴時間についてご説明します。入浴時間は予約制となっており、店の者に聞いて頂ければ入浴可能な時間をお調べできます。一度の入浴時間は最大50分とさせていただいております。これは希望するお客様が入れないことを防ぐ為と、御利用後逐一清掃する為ですので御了承下さい。説明は以上ですが何か御不明な点はありますでしょうか?」


「今の所は無い、何かあれば聞くことにする」


「それではお部屋にご案内させていただきます」


そう言って店員が小さなベルを鳴らすとカウンターの奥の部屋からもう一人店員が出てきた。


「どうぞこちらへ」


その店員の案内で移動し、3階の一室の前まで来た。


「鍵はこちらです、それではごゆっくり」


鍵を受け取ると店員はカウンターの方に戻っていった。

鍵を開け中に入る。

おお、結構広いな。

簡素な机と椅子が二脚、机の上にはランプが一つ。

あとはダブルベッドとクローゼットがある。

窓は二つ付いており。カーテンがしっかりと両端に結んである。


んじゃさっさと始めるか。

二人が入った後にしっかり鍵をかけ、窓のカーテンを閉める。


何か後ろで二人が強張る気配がした、ナニ考えてんだか。


「買ったものを全部机の上に置いてくれ、これから色々説明する事がある」


そう言いつつ俺も持っている包みを机の上に置く。


どうせこいつらにはいつかばれるだろうから今のうちに説明しておこう。

後でトラブルになりそうな火種は残しておきたくない。


「は、はい!」


「分かりました」


そう言って机に包みを置く二人

そして俺は包みの一つに触れる

包みは一瞬で消え、蔵書に収められた。


「え?え?あれ!?」


目の前の突然の現象に目を白黒させるシエル


二人の疑問符を無視して話し出す。


「これから言うことは全て事実だ、その上で話をするから良く聞いておけ」


そうして俺は二人にかつて行った

『ドキッ!魔族だらけのダイナミックお掃除大作戦!(五体が)ポロリもあるYO!』

について話し始めた。









無論イケメン君についてはぼやかして。

読んで察しているかも知れませんが服自体に興味ないので

さっぱり分かりません。

裁縫も同様なので妙なところが多々あると思います。

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