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第二十二話 イケメンがカピバラになるのは良くある事

国境近くまで特に問題無くこれた

道中食事はばれない様に蔵書から取り出して分けて食っていた


商人に簡単にお礼を言って分かれる

なんか良い人で、お礼と言って少しだけどお金をくれた

ギブアンドテイクだったから別に良いと言ったんだけど


「遠慮すんな、持ってけ!」


と言ってなんかくれた

この世界で初めて良い人に会った気がする、

始めて会った良い人が名前も知らない商人なんて…なんか色々間違ってないかな?




さて、国境という事は当然関所がある

ムルク国は戦時中の為、今は関所が閉じられており普通の人間は当然行き来できない


そう、普通の人間なら、である


「ジン様…関所までもうすこし距離がありますがここでよろしかったのですか?」


シエルが上目使いで心配そうに尋ねてくる、

国境には来ているが、関所まではもう少し国沿いを歩いて行く必要がある


結局こいつらは居なくならなかった

いてもたってもいられないとかでさっさと行けばいいのに

そうすりゃ俺も行かなくていいのに


「いやこの辺りでいい、人気の無い所に来たかったんでな」


頭を傾げるシエル

辺りは見渡す限りの草原、モンゴルってこんな感じなのかな、と思う

誰かが近づいてくればすぐ分かる

ムルク国の方には絶壁に近い険しく高い山々が見え、とても登れそうに無い。

この山脈が国境代わりになっているみたいだな

やはり関所からでしか移動はできないようだ


「さっさと行くか」


二人は頭の上に?が浮いている顔をしている



くろごまは俺の考えを理解しているかのようにぱたぱたと頭の上から俺の前に飛んでいき、にゅにゅにゅっと5m程の大きさになった


おお、大きさ変わる時ってバリエーション違いのやつあるのか

ウルトラ男が変身する時みたいに大きくなった

細かいところで楽しませてくれる

おぅふ、鼻血が…


本当は俺以外誰も乗せるどころか触れる事すら許さんのだが、今回は俺自身の為なので、心の中で血涙を流して我慢する

盗賊の時より大きめという事はくろごまも乗せていいという事だろう




くろごまに近づき顔をしばらく撫でる

相変わらず気持ち良さそうに顔を擦り寄せてくる

やはりお前がメインヒロインだ、これは絶対揺るがない


くろごまは乗りやすいように伏せてくれている

首の横に手をかけて飛び乗り、背中に跨る

勝手知ったるくろごまの背中

乗るのは2度目だが、もう何年も前から乗っている気がする


二人の方に顔を向けると今度は頭の上に!が浮かんだまま固まっていた


なんだ、見つかったのか? アラート99.99%か?

上等だ、俺は逃げも隠れもせん

迎え撃って全滅させてから堂々と揉んでやる


「何固まってんだよ、早く乗れ」


「あ、あの…えっと」


「ジン様、その…どこから言えばいいのか」


「いいから早くしろ、時間ねーんだから」


「でもあの…龍は自分の主人しか乗せませんし…」


「こんなに大きな龍は見た事ありません…」


「お前らの常識が世界の全てな訳なかろーが。くだらん枠を作って世界を狭めるな、世の中広いんだよ」



そう言うと二人共恐る恐るくろごまに近づいてきた

くろごまはちらりと二人を見たが、興味が無いのかすぐに視線を外した

首の横辺りまで来たので手を差し出す


「ほら」


「あ、ありがとうございます」


シエルは手を握り、勢いをつけて背に乗った

おい、勢いつけすぎだ


「あ」


どすんと


案の定バランスを崩して抱き合う形になった


「大丈夫か?」


「は!ひゃい!す、すみまひぇん!」


ばたばたと抱きつきながら暴れるな、くろごまの上だぞ

さっさと後ろに誘導して座らせる


シエルは俯いて、耳を赤くしていた

抱きついたくらいでなに恥ずかしがってんだよ

決して柔らかかった等と思っていない

俺は紳士です


「ほい次」


気にせずティアラに手を向ける

クスクス笑っている


「ありがとうございます」


そう言って手を取りシエルの横に誘導した


少しして後ろからぼそぼそと話し声が聞こえ始めた

どうやらシエルがティアラに詰め寄ってるっぽい

まあ何でもいいか


「しっかりつかまってろよ、落ちても知らんぞ」


くろごまは4枚の翼を羽ばたかせ高度を上げ始める

さっきまで居た場所がどんどん小さくなる


「わ、わ、わ、たた、とっても高いです」


「さっき居た場所がもうあんなに小さくなってます」


なんか言ってるが気にしない

十分な高度になった所で


「んじゃ悪いけど北に行ってくれるか?」


「ぐるぅ」


大きさを変えると鳴き声も変わるみたいだな

ひと鳴きすると以前の速度で飛び始めた


シエルは俺の脇の下に両手を回してがっちり抱き、声にならない悲鳴を上げている

ティアラは俺の右腕にしっかり抱きついている

こちらは声は上げてないが、目を瞑り、腕に強く抱きついている


おいお前ら凶器むねを押し付けるな

脅迫か?脅迫してんのか?

負けない!どれだけ押し付けられたって絶対に負けないんだからっ!

たとえ生でされたって………………………………………ま、負けない!


「別に風は感じねーだろうが、着くまで大人しくしてろ」


「で、でも…」


「4枚の翼に銀色の鱗…でもこれがあの龍だとしても」


前方の風景がまばたきするともう後ろに行ってしまっている

そんな速さ

なのに風やGは一切感じられない

新幹線に乗って空から地面を見ているような不思議な感覚

今回は前回と違い、結構な高度なのに寒さや息苦しさを感じない

やはりくろごまが守ってくれているんだろう

さすがメインヒロインである


国境になっている山脈をあっさり越え、ムルク国に入った

南側はまだ戦場になっていないのか、特に変わった所は無い

魔族はこの大陸の最北端から来ているからだろう


そのまましばらく飛んでいると地平線の先に建造物が見えてきた

城っぽいしあそこがフロトラム城なんだろう

石造りの立派な城

千葉にあるのに東京とかいってるあの場所の城を想像してくれればいい

その周りには城下町がある


城の真上でくろごまは止まり、ゆっくりと城に向かって降下する。

上階層にあるテラスの横に付けた。

奥の方から結構な数の人がざわつきながらこっちを見て警戒している

まあ戦時中にいきなり龍が降りてくればそう思うのも無理無いか

だからといってくろごまに手出ししたらこの城問答無用で消し飛ばすけどな



「降りろ、んでさっさとこの国救って来い。お前らなら出来るだろうが」


「…え?え?」


振り向いて二人に言う

突然の言葉にシエルは戸惑っているがティアラはそうでもなかった


「お前らの身の上は有る程度知ってる、その上で言ってるんだ」


途端にシエルは顔を強張らせる

だがティアラにはやはり動揺が見られない

俺が知っていることに気づいていたみたいだな

どうでもいいけど


「今を逃せばもう二度と故郷に戻れるチャンスは無いぞ?

ボンクラ共にお前らがこの国に必要不可欠な存在だって事を証明して来い」


そう言ってティアラに視線を向ける

『連れて行け』という意思を目に込めて

シエルは俯き、なにやら考え込んでいる

ティアラは視線の意味を察したのか


「姉さん行きましょう。ジン様の御命令です」


「あーちゃん…でも私達は…」


「この場所に居てこの状況を知って…それでも何もしないなんて、姉さんに出来ますか?」


シエルはまだ悩んでいるようだ

恐らく俺に恩があるのに、とか考えているんだろう


「恩を返す事が大事だと言うのなら、まず育ててもらった恩を返して来い。

順番で言うならそっちが先だろうが」


シエルは俺の言葉に何も言えなくなり、無言でくろごまから降りた

ティアラもそれに続く


「心配しなくても少しくらいは手を貸してやる」


「え?」


それだけ言うとくろごまはまた高度を上げる

下でなんか騒いでるがどうでもいい

取り合えずこれであいつらはこの国に残るだろう

育てられた恩ってのはそう簡単に返せるもんじゃないしな

それこそ一生かけて返す事になるだろう

まあ残らなくても俺の予想通りならもうついて来る事は無い筈だ



なんにせよ国が滅んだら元も子も無いからな

せめて戦況を五分くらいにしておいてやろう



この国が隣接している魔族の地との拮抗が崩れた理由は単純にあいつらが居なくなったせいだ

シエルの方は将軍達を束ねる地位にあり、指揮能力、戦闘力は随一

ティアラは作戦立案、行動予測等、戦争時の総指揮官の立場だったのだ

簡単に言えばこの国の頭脳と剣なのだ

蜀でいう関羽と孔明だ

碌な奴が居ないのにそれらが一度に居なくなってしまえば負けが続くのは当然だろう

羊が獅子百頭を引き連れるよりって奴だ

いや、兵の能力は互角か、人間側がやや下ってくらいだからもう目も当てられん

ここの王の無能さが良く分かる

だがこんな状況で主力の二人が帰ってきて、且つ呪いが消えていれば誰でも大喜びするだろう

そして後は魔族を追い払えばあいつらは英雄として再び故郷に戻ってこれる



あいつらが軍の指揮権を取り戻し、状況確認、作戦立案、実行まで3…いや、2時間あれば何とかするだろう。

その間久しぶりに無双しよう


北に進んでいくと地平線の先に土煙が広域に広がっているのが見えた

どうやらあそこが今の主戦場のようだ

結構な高度なのでこちらには誰も気づいていない

戦場上空まで来て下を見る


「あーあー…ぼろっくそにされてんなあ」


人間側は鶴翼っぽいが陣形というより単に真ん中を押し込まれてる

だけのような感じだ

見た感じ数もかなり差がある、負けが続けば当然か


ん?なんか城方面に馬に乗って逃げてく奴が居る

身なりからして将軍格だな

現場の指揮官が真っ先に逃げるとか終わってるな

兵は寡兵でも結構がんばってるのに。

なんとなく癪に障ったから逃げ道に槍を勢い付けて投げ落としてやった

槍は宝物庫にあった奴で、蔵書やシエル達の武器のように自由に出し入れできるものだ。

こういう物は手元から離しても念じればすぐ手元に現れる、これは実験済み

名前…なんつったかな?ぶるどーざー、いや、ぶり…ぶりざーど?

忘れたけど確かかなりとんでも設定が書いてあったような気がする

あ、クレーターが出来た、馬がびびって将軍が振り落とされた。

なんか腰抜かしている。 ざまぁ


槍を手元に戻して消えるように念じる

さて気を取り直して、予想通りなら…お、いたいた

戦場の一番の激戦地である押し込まれている所に探していた人間を見つけた。

案の定目立っていたのであっさり見つかった


光り輝く鎧を身に纏い、なにやらよさげな剣持って戦っている。

人間側は明らかに押されているのにそこだけは持ちこたえており、近づいてくる魔族をぶった切りまくっている。

久しぶりだね、イケメン君、えーと名前…カピバラ君だっけ?

あれ?彼日本人じゃなかったっけ?

それ以前に人間じゃなかったっけ?

…まあそういうこともあるんだろう、俺は細かい事は気にしないのだ


何やら仲間っぽいのもいるな

ここからはよく見えんが多分そうだろう

そこそこの腕持ってるみたいだな

イケメン君と一緒に魔族を倒しまくっている


俺より先にここに居るのは多分あの魔神城行く時のような魔道具でも使ったんだろう

バウムから援軍が向かってるって聞いた時から予想してたけどビンゴだったな


にしてもなんていうかイケメン君に敵が妙に集まってる気がする

イケメン君の居る所が激戦地じゃなく

イケメン君の行く所が激戦地になってる感じ

何だろう、魔族に恨まれる事でもしたんだろうか?

なんか魔族側がなんたらの仇ー!とか言ってる気がする

まあ勇者だし狙われるのはしょうがないんだろうな




まああっちは適当にやらせとくとして俺はもっと奥に行こう。

色々見られたくないからな

彼が居るのなら俺の計画はほぼ問題無い


次回は久々に無双ができるなあ

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