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第十八話 決め台詞を言う時はみんな静かにしよう

奴隷の契約方法はさして難しい事ではない

奴隷となったものには首に奴隷用のチョーカーを着用する事になっている

そのチョーカーと対になるカードを所有している者が主人となる

カードは蔵書のように持ち主が自由に出し入れできる

奴隷はカードの所持者に危害を加える事は出来ない

奴隷は自身のカードに触れる事とカードを損傷させる行為は出来ない


ただ、チョーカーをつけただけでは奴隷にはならないようになっている

当然だ、そんな事になったら隙見せたら誰に奴隷にされるか分からん

正規の手続きを踏んだ上で本人が奴隷になる事を了承しないと奴隷にはならないのだ

まあ罪人が奴隷になる時は別だけど


あのばばあは手続きの部分を国のお偉いさんに金を握らせるなりして処理しているんだろう

あとは裏のやり方についての隠蔽とかな

攫ってきた人間はあの手この手で無理やり了承させ奴隷にする。

筋書きとしてはそんな所だろう




しばらくするとばばあは契約書とカードを持ってきてそれをテーブルの上に置いた


「こちらが彼女のけいや…いえ譲渡書でございます。

一枚はこちらで、もう一枚はお客様にお渡ししております」


書類には彼女の名前と売り手側が書く売買同意欄にサインが書かれており、

二枚とも金額、売った相手の欄は空白になっている

書類の一枚を受け取った


「そしてこちらが彼女のカードでございます、どうぞお持ち下さいませ」


受け取ったカードにはティアラと書かれていた。

カードを近づけると彼女から10センチ程の位置で動きを止めた。

磁石の同極が反発し合う感じに似ている


「確かに」


消えるように念じるとカードはふっと消えた


「それにしてもこんな一軒家で奴隷を扱っているとな、これでは奴隷に逃げられるのではないか?」


「それはありえません、奴隷は地下に置いてあります。

地下の入り口、地面壁面天井全て極めて頑丈に作ってあります。

大地震が起きても地下には全く被害は及びません」


「まさに金庫というわけか」


「左様でございます」


ばばあはニタリと笑う

だから気持ち悪りぃんだよ

なんでおっさんやばばあの笑顔ばっか見なきゃならんのだ


まあ今の聞けて俺も笑いをこらえてるんだけどな 


「では約束通りコレは置いていく。今後とも良い付き合いをしたいものだな」


無論袋の事である

俺は立ち上がり部屋を出る準備をする


「はいそれはもう、またのご来店をお待ちしております」


俺はティアラを連れ部屋を後にする

彼女は俺の後ろをついてきた

それにしてもこの家、あの部屋以外ホント何も無いな


多分必要な物は全てあの部屋に集めているんだろう

だからこそ都合がいいんだが


俺達はばばあハウスを出る

家の中では分からなかったが辺りは薄暗くなっていた


入り口にはさっきの下っ端がいた


「へへへ…ぜひまた御来店を」


気持ち悪い

せめて営業スマイルくらいできるようにしろ


「ああ悪いが一つ頼まれてくれるか?」


「へい、何でしょう?」


「生憎明かりになるものを持ってくるのを忘れてな、何か店主から火を貰ってきてくれんか?」


「かしこまりやした、少々お待ち下さいませ」


下っ端は家の中に入る

それを見届けた後


「急げ」


ティアラの手を握り、駆け足でばばあハウスから離れる

突然の行動に彼女は困惑した顔をしながらなんとかついてくる



細い小道を幾つも進む

この程度の暗闇なら暗視ゴーグル無しでも余裕で行ける

俺の夜目の良さは梟を凌駕するのだ、たぶん


家から十分距離が出来たところで速度を緩める

ここまで来ればいいか

そう思っているとティアラが口を開いた



「あの…火を借りるのではな――――」



が、その声は凄まじい爆発音によってかき消された

音のするほうはばばあハウスがある方角だ

小道を幾つも進んだのでもう家は見えないが、家の方の空が赤くなっていた



ティアラはばばあハウスのほうに振り返る

距離があるから分からんが家吹っ飛んでるんじゃねーのかなってぐらいの音 

当然ばばあも、ざまぁ


「…あなたがやったのですか?」


疑われた、疑われてしまった、悲しい

こんな時にくろごまがいないなんて神はなんて殺生なんだろう

俺無神論者だけど


にしても奴隷っぽくない聞き方だな

仕方ないか

再び宿に向けて歩き出す


「んな分けなかろーが、どうせ火の不始末とかだろ?全く怖いねぇ」


そう、アレを起こしたのは俺じゃない

下準備はしたけどね 


ばばあに渡した袋、アレには二つの物が入っていた

一つは金色に塗装した細長い木の箱をたくさんと幻覚効果のある粉末だ

これは空中に舞うと長時間辺りに漂うものだ、

幻覚といってもロープレで言う回避確率を多少上げる程度の呪文と思ってくれればいい

全く違う物に見せる程の効果は無いが似てる物に見せかけるくらいなら出来るのだ



最初あの袋をテーブルに置いた時の衝撃で中の粉末が舞った

ばばあはそれを吸い込み中を見た。

幻覚にかかっているばばあには木の箱が大量の金の延べ棒に見えただろう

この世界でもやはり金は価値があるものらしい

金の価値はどの世界でも共通ということか


ちなみに金の延べ棒を模したのは理由がある

宿のおばちゃんが言っていたことを覚えているだろうか

貨幣には魔法がかけられており、見る、若しくは触れば簡単に見分けることができるようになっている、つまり貨幣に模した物では幻覚をかけても見破られる可能性が極めて高い。


なら他の物はどうか、と思ったわけだよ

案の定、金、銀、レア鉱石のような価値の有る物でも魔法はかけられていない、とおばちゃんは言っていた。あくまで貨幣のみだと

そこで白羽の矢が立ったわけだよ

ちなみに木の箱には小麦粉が詰まっており、ばばあが部屋を出た時に取り出して部屋中に撒き散らしておいた。

あの下っ端もばばあも部屋にいる限り幻覚にかかり続け、小麦粉が舞っている事と箱の事には気づかない。

後はそこで火が着けば粉塵爆発の条件はクリアって状況にしただけだ


「この為にあのような事を持ちかけたのですね」


あのような、とは契約書のことだろう


当然だ


アレだけの爆発が起きれば騒ぎになる

いくらお偉いさんがバックにいてもコレだけの事になれば隠し切るのは無理だろう。

そうなれば非合法の奴隷売買が公になり、ばばあが生きていたとしてもお縄になる、生きてるとは思えんが。

そしてばばあは奴隷のいる地下は頑丈に出来ていると言っていた

つまり建物が全壊するほどの爆発が起きても地下の人間は無事という事だ

調査のメスが入れば彼らは見つかり開放されるだろう(たぶん)

そしてばばあが今まで取引した契約書が見つかればそいつらにも捜査の手が伸びる。

契約書が金庫に入っていて無事な可能性は十分ある。

だが俺の場合は自分の名前も書いてないし金額も記載されてない。

証拠が残っていないのだ。

バーローでも俺が犯人とは分からないだろう



それを全て理解した上で言っているんだろう

聞いてた通り頭が切れるな


「これでは犯罪者になってしまうのでは?」


「ならない、絶対にな」


俺は一言もばばあに金の延べ棒とは言っていない

袋の中の物といってだけだ

それに小麦粉を撒き散らしはしたが火をつけたのはあいつら自身

俺に責任はない

それ以前にあいつらが犯罪者なんだし大丈夫だろう




宿に戻ってきた

来る途中で結構な数の野次馬が各建物から出てきてばばあハウスのほうを見ていた。

俺達は怪しまれないよう遠回りをして違う方向から大通りに出てそいつらの隙間を縫うように宿に戻ってきた。

ドアを開けると最初の時のようにカウンターにおばちゃんがいた

頬杖ついて入り口のほうを見ている


「随分大きな音がしたけど外で何かあったのかい?」


「街の隅のほうの空が赤くなっていた、火事か何かだと思う」


「ふぅん、火事ねえ」


おばちゃんは後ろにいるティアラに視線を向ける


「部屋移るのかい?」


「いや今のままでいい、人数は増えない」


「そうかい、食事をそろそろ持ってこうと考えてたんだ、丁度よかったよ」


「なら30分後くらいに持ってきてくれ」


鍵を受け取り部屋に向かう

多少の明かりはそこらにあるがやはり暗い

人気の無い所の電信柱についてる蛍光灯を思い浮かべてくれればいい。

足元に気を付けつつ部屋の前に来た


鍵を開け少しだけドアを開ける


「ぎぅ♪」


呼ぶ前にくろごまはドアの隙間からぱたぱたと飛んできて俺の顔にへばりついた

犬とか猫みたいに足音で分かったのだろうか?


嬉しそうにへばりついているくろごまの首後ろをつまんでそのまま頭に乗せる

マジ癒される

もう何年も会ってなかったかのようだ

やはりお前がいないとつらいものがあるよ


「子龍?でもその姿は」


ティアラが呟いているのを無視して指輪と部屋の鍵を押し付けた

リングは途端に輝き始める

さっき渡さなかったのは単にばばあに取られる可能性があったからだ


「中に入れ、入ったら1時間は部屋を出るな。ああ、ついでに外も見るな」


「え、あの」


「入ればやるべきことは分かる」


ティアラを強引に部屋に入れドアを閉める

ここから先の事は部外者が立ち入る事じゃない

命令しておいたから俺を追うことは出来ないだろう

さっさとその場を後にした


階段を降りてカウンターに行く


「どうかしたのかい?」


「部屋には俺の変わりにさっきのが連れと一緒に居る。

払った分の期日はあいつらを泊めておいてくれ、無論食事もな。

それと食事を持っていくときにコレを渡しておいてくれ」


おばちゃんに包みを渡す

中には大臣の部屋から貰っておいた質の良い女性用の服と履物

大方愛人へのプレゼントとして用意しておいた物だろう



紫を基調とし花柄模様があしらってある着物の様な外見だが、肩から二の腕にかけての袖は無く、肘から手首には袖がついている

袖と着物はセットになっているものだ

下は大正時代の女性が着るような黒い袴っぽいものだ

履く者も舞妓さんの下駄のような物を入れておいた

アーシェの着ている服であそこにいた奴隷だとばれる可能性があるのでこいつを渡しておく必要がある。

あの格好では色々不便だろうしな

サイズのほうは多少は違うだろうがその辺は我慢できるだろう、胸囲とか胸囲とかあと胸囲とかな

あいつも姉に会えた以上面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだろう

ついでに多少の金も入れておいた、縁切りのつもりで


「ふーん」


おばちゃんは包みを受け取ってから何故かこっちをじーっと見てくる


「あんた良い男だね」


何言ってるんだろう、当然だろうそんな事は

俺は何時だって超絶良い男だ

右の頬を打たれたら槍で地獄突きするくらい良い奴だ




無言でおばちゃんに背を向け宿を出て夜のログスの街に歩き出す

カードが出るように念じ、出てきたカードをパキリと割った

途端に砂のようにさらさらと音を立て消えていく

カードとチョーカーは対になっているのは言ったが、その関係はカードが本体でチョーカーは端末という感じだ。

カードが壊れればチョーカーも消滅する

つまり奴隷で無くなるというわけだ

今頃ティアラのチョーカーも消滅しているだろう


後はコレを処分すれば証拠は一切無くなる

譲渡書をポケットから取り出し、丸めて上に軽く投げる


「ぎぅ」


頭の上辺りにまで上がった時にくろごまがちいさい火を吐き譲渡書は灰になった

それを踏みつけてぐしゃぐしゃにして


「宿探して寝よ」


夜だというのに外の野次馬は増えていた

そいつらにまぎれて俺はその場を立ち去った

今までのに比べてかなり長くなりました

なので妙な所があるかもしれません

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