第十七話 なんでキラキラする服を普段着にするの?
誤字脱字などございましたらご連絡ください
入って見張りの下っ端に奥の部屋に案内される
そこには一人のばあさんが椅子に座っていた
趣味悪りぃ格好だなおい
大阪のおばんか貴様は
無駄にキラキラした服装をしており、この部屋も家の外装と他の部屋にはそぐわない豪華な置物や家具が置かれていた
下っ端はばあさんになにやら耳打ちしてから部屋のドアを閉め、入り口に戻っていった
「ここに来たってことはそういうお客様と考えていいんだね?」
座りなよ、とばばあは自分の座ってる椅子の向かいに俺を促す
こちらを値踏みするような目で見ながら無愛想な顔をしている
「ずっと欲しかった奴が身分のある奴だったんであきらめてたんだが…少し前に攫われて奴隷になったと聞いてな、方々に手を尽くして漸くここに居るのを突き止めたんだよ」
椅子に腰掛け、考えておいた設定を口にする
「…分かってると思うけどここで取り扱ってるのはそんじょそこらのとはわけが違うよ?価値も、値段もね」
要するに金持ってんだろうなと言いたいらしい
金持ってるように見えないと思われたんだろう
人を外見で判断するとは三流だな
良く生きてこれたもんだ
持っていた袋を机に勢い良く置く
ぼふっという音が袋の口から出た
「取りあえずこんだけ持ってきたが」
ばばあは目の前に置かれた袋の中の中を見る
途端にさっきとは打って変わって気持ち悪い営業スマイルを始める
「お求めの奴隷の名前は?」
「ティアラだ」
「分かりました、少々お待ちくださいな」
そういってばばあは立ち上がり部屋を出て行った
言葉使いまで変わってやがる
お金って恐ろしいね、人をあそこまで変えるんだね
まあばばあが態度を変えた理由は別にあるけどな
にしても客に茶もださねーのかよ
なってねー店だなおい
まあ入り口の下っ端といいばばあといいそういうことに気の回る奴がいねぇんだろうな
しばらく待っているとばばあが戻ってきた
後ろには一人の女を連れていた
燃える様な赤いロングヘアー、ただあの女と違ってウエーブがかかっている
服装は思ったよりひどい物ではなく薄い水色のパジャマっぽい
大事な売り物だしその辺は考えてるのかもしれない
そして服の上からでも分かるくらいスタイルがいい
やはり血なんだろうか…なんでそんなにでかいんだ
「お待たせいたしました、当店の商品でティアラと言う名の者はこちらのみとなっております」
ティアラと言う女は顔を俯けて無言でいる
当然か、攫われて奴隷にされて売られそうなんだ
笑顔になれってほうが無理だろう
「手は出していないだろうな?」
ばばあに視線を向けて確認する
「それはもう、大事な売り物ですから」
俺は再度ティアラに視線を向ける
「…ふむ確かに似ている…が、念の為少し確認したい事がある。悪いが少し二人きりで話をさせてもらいたい」
「それは」
「こちらとしても高い買い物になるんだ、用心する気持ちは理解してもらいたい、万が一ということになっては目も当てられん。
何、少し話をするだけだ。彼女には一切触れない事を約束する」
ま、こんなとこで約束なんて言ったって何の信用にもならんだろうけど
ばばあも上玉の客をつまらん理由で逃がすような事はしないだろう
「…分かりました、では終わりましたらお呼び下さい」
そう言ってばばあは部屋を出てドアを閉める
部屋には二人だけになった
ティアラはばばあの座っていた椅子の横で、立ったまま相変わらず下を向いている
俺は部屋の外で聞き耳立てているであろうばばあに聞こえないくらいの声で話し始める
「今聞いたとおり余り時間は無い、質問に答えろ」
「…」
返事が無いただのハーレム要員のようだ
まあいい、さっさと用件に入るか
ポケットに手を突っ込み
「コレに見覚えは?」
それをテーブルに出す
女は俯きながらちらりとそれへ視線を向け
「…え」
顔を上げ、始めて声を出した
やはり美女か、イケメンのハーレム要員か
今度あったら確実に鼻の穴3つにしてやる
「な、なんでそれをも「質問に答えろ」」
時間が無いっていってるだろーが
具体的に言うとカラータイマー点滅しだしたウルトラ男並みに
時間ねぇんだよ、光線出して締めないと後が無いんだよ、がけっぷちなんだよ
「…あります」
「どこで?」
「それは元々私の物です」
「証拠は?」
「それは特定の人間が触ると淡い緑色に輝きます…私以外の人が触れても何も起きません」
俺が女に見せたのは象形文字の様な模様がついた銀色の指輪
姉の方が首にぶら下げていた二つのうちの一つだ
あいつが寝てる時にこれを拝借した
妹を見分けるためだ
姉の所持品を見せれば何かしらの反応を起こすだろうと思った
それで何か良い物はないかと見ていたらコレが目に入った
見た目は何の変哲も無い唯のリング、だがそのうちの一つは淡い青色の光を放っていた
気になってそのリングを手に取ると途端に光を失った
姉に戻すと再び光りだした
恐らく特定の人間に反応して光る物だろう
もう一つのほうは全く光を発さない
とするとこちらは妹の物である可能性がある
妹を見極めるためにこいつが所持していたと推理できる
外見がいくら変わってもコレを使えば確実に分かるからな
もし違っていたとしてもリングの特徴について知っていれば可能性はある
そう判断して拝借してきた
そして先程情報屋にコレについても聞いてみたところ、極めて高価な代物で
コレを最初にはめた人間が付けなければリングは光を発さないという物だった
さらに作られた数とこのリングの存在を知っている人は極めて少なく、
発する色と装飾が全て違うとの事。恐らく特注品ということなのだろう
さらにこいつらの境遇を聞き、ほぼ間違いないと確信した
光の色を知っている事、触れてその色に光る事
この二つが確認できれば本人確定だろう
「手を出せ」
女はゆっくりと両手を出す
手のひらにリングを置いた
銀色の指輪は淡い緑色の光を放ち始めた
どうやら間違いないようだ
んでは締めのお仕事に入るかな エヘへ
俺は指輪を取り上げた
「あ」
「心配するな後でちゃんと返してやる」
「それは、どういう―――――」
女が言い終わる前に指輪をポケットにしまいばばあを呼んだ
「いかがでしたでしょうか?」
「ああ、間違いなく探していた女だった」
「それはようございました、私共も嬉しゅうございます」
白々しい、鼻毛全部抜けて鼻炎になれ
「それで幾らだ」
「左様でございますねぇ」
ばばあは袋に視線を向ける
欲深ばばあが、頭の中透けて見えるぜ
俺は袋の口を握って言った
「今日の俺は気分が良い、目的の物も手に入り、良い店も知る事ができた。
それにこちらの我侭も聞いてくれた事もある、この中身すべて持っていっていいぞ」
驚愕の表情を浮かべるばばあ
「まさかとは思うがこれで足りんと言うのか?」
「い、いえいえいえ滅相も無い。しかし、本当によろしいので?」
「言っただろう?今日の俺はとても気分が良い。
探していた物と良い店の二つが見つかったのだ。
コレは今後とも良い付き合いをしたいという俺の気持ちだ」
そういうことでしたら、とほくほく顔のばばあ
「ただ一つだけ条件を飲んで欲しい」
「何でございましょう?」
「これは全うな方法で手に入れたものじゃなくてな、万が一にも足がつくのは避けたいのだ。この気持ちは理解してもらえると思うが?」
無言を肯定ととりそのまま話を続ける
「なに簡単な事だ。この中身はすべて渡す、その代わり契約書に俺の名前と金額を記入しないで欲しい」
「つまり契約上は譲渡という事になるわけですね?」
「ああ、万が一契約書を見つけられても言い逃れが出来る。
事が露見しそうな時に適当な名前を書けば別の人間に罪を押し付けられる」
「かしこまりました、それくらいならばお安い御用でございます。
契約の用意をしますので少々お待ち下さいませ」
そう言ってばばあはにこにこしながら部屋を出た
笑いがとまんねぇなおい
気持ちを押し隠しながらティアラの顔を見る
複雑そうな顔で俺を見ていた