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第十二話 ヒロインに手を出す奴は【検閲削除】

北に向かいながら俺は蔵書カタログを開いていた

収められたページを確認しながら歩いているのだ

魔神城から今までまともに見る時間が無かったからな

ここらでじっくり読んでおこうと思ったわけだよ

自分の手札もわかんねえようじゃ人生という大勝負には勝てないのだ。


今は早朝だ、昨日は取りあえず街から出てすぐの森に入って一夜を過ごした。

さすがに見知らぬ場所でしかも真っ暗の中進んでいこうという気にはなれなかった。

街の宿に泊るのは避けた。すぐに城のファッキン共にばれてしまうと思ったからだ。

森なら隠れる場所も食料も困らない、食べれる果実や木の実があり、凶暴な獣もいないということは本で調べていたのでこれ幸いと判断したのだ。


ぺらぺらとページをめくりながら街道を歩く

辺りは一面の草原、日が上がりかけており今日も晴れそうだ。

だが早朝ということもあり少し肌寒い、風はそよそよと草木を軽く揺らす程度だ。

まあこの程度の温度なら凍死したり熱中症になることはないだろう

そう考えて歩いていると興味深いページを見つけた。



稀龍笛


龍が1匹呼び寄せられてくる

どんな龍がくるかは吹いた本人によって異なる

現れた龍に自らの力を認めさせれば力になってくれる



おお、来ましたよドラゴン、これは吹かずにはいられない


なぜなら俺は動物が、特にでかいのが好きなのだ

動物は人間のように騙したり嘘をついたり手榴弾投げてきたり宝物庫から物を盗んだり鼻に棒(3mくらい)突っ込んだりしない…汚い世間で傷ついた俺の心を癒してくれるのだ。

まあドラゴンが動物と呼べるのかとかいうのは置いといて、とにかく吹いてみよう


ページを破ると形を変えて笛になっていった

宝物庫にあった奴だがあそこにあった物は特に見ないままページにしたから形がよく分からん。

でっかい角笛みたいなのを想像してたんだがそんなことなかった

ぱっと見犬笛だった

まあ形なんてどうでもよかったので口に当てて吹いてみた


ふむ、何も聞こえんな、音も犬笛みたいなんだろうか

それとも失敗して鳴らなかったんだろうか。

吹き方に決まったやり方があるとか場所が指定されているとか、

…でもページにはそんなの載ってなかったけどなあ。

うーむ、と考えていると


先程まで雲一つ無かったのに俺の立っている周囲一面に濃い影が落ちた


何だろう、俺の人生お先どころか全て真っ暗ってことを天が知らせてるんだろうか

少しネガティブになりながら上を見るとその影の正体がこちらに降りてきていた



猫科の肉食獣の様な体に丸太の様に太い四肢、そして長い尻尾。

体毛は無く、全身が美しい銀色の鱗に覆われており、日の光が反射して神々しく輝く。

顔は口は肉食獣っぽいが他はまさにドラゴンという感じで、その目はルビーのように燃え上がるような緋色だった。

全長は30、40m…いやもっとあるな。

絵とかゲームだと大抵翼二枚だけどこいつは四枚生えてるな。


色々考えてるうちにドラゴンは地響きを起こし地面に着地した

俺がこいつを見たときの…見たときの最初の感想は――――――




かあああわぃぃぃぃぃいいいいぃいいいいぃい!

なにこれ何コレKOREナになにきゃあああああああ!


この世界に来て初めて発した言葉をものすごいでかく叫んでしまった


でかい体につぶらな瞳、これでもふもふならいうことないんだがこれも十分イイ!



ゆっくりと首を曲げながら興味深そうにこちらに顔を近づけてくる

俺の目の前にその顔は来た

そのときの体勢は散歩している時に犬が落ちている物に足を曲げて顔を近づけているのに似ている



俺はナデナデしたい気持ちに逆らわず思いっきりナデナデした

これで死ぬなら本望だ!

なでなでなでなでなでなでなでなでなでなで

猫のようにあごをかく

ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ


ドラゴンは目を細め気持ち良さそうにされるがままになっていた

それを見て俺は決心した


こいつをこの話のメインヒロインにする異論は認めない

そうなのだこの世界にはヒロインが居ないのだ

メインヒロインのいない世界なんて勤め先で黒歴史暴露されるレベルの絶望しかない。

だがこいつなら十分その重責を果たせるだろう


そう考えているとドラゴンは大きな顔を俺にすりすりとこすり付けてきた




俺の何かがぷつんと切れた



もう迷わない俺はお前と一生生きていく、

俺がお前を養っていく邪魔する奴は全員虐殺ジェノサイド

俺がお前を幸せにしてやる黙って俺について来い!


「よし、お前の名前は今日からくろごまだ」


「ぐるるるるぅ」


俺はなでなでしながらそう言った。くろごまは相変わらず気持ち良さそうに喉を鳴らしている。


うむ、愛い奴だ、

だが、問題が一つあるな

コレだけでかいと人の住むところに行きにくい

行くたびに騒ぎになりそうだな

まあこいつに手を出す奴は細胞一つ残らず消し去るけどな


「なあくろごま、お前大きさ自由に変えられないか?」


なでなでしながら聞いてみる。

動物との会話はとても重要なコミュニケーションなのだ。

するとくろごまはポンと音を立てていきなり小犬並に小さくなった。

ぱたぱた四枚の翼を羽ばたかせながら俺の顔の真ん前にいた


おうふ…でかい時には劣るがコレもまた良しだな。

そう考えているとくろごまはふわふわと俺の頭の上に着地した。


いいな、これなら特に目立たないだろう

さすがくろごま、俺の気持ちに素直に答えてくれるとは


「よし、行くかくろごま」


「ぎぅ!」


俺は笛をしまい歩き出した

うん、幸先いいな、やっぱりこの世界は面白い

楽しくなりそうだ




彼らの去った後にはくろごまが着地したときに出来たクレーターが残されていた。

それは後にちょっとした騒ぎになるが本人達にはものすごくどうでもよかった


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