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第十話 お城の名前はよく考えましょう

時間は少し遡り、ジウレスカが宝物庫から玉座の間へ駆けていった直後の宝物庫前―――


そこに一つの動く影、蠢く物は一つのマント、その下にある物の上半身が突然起き上がり


「ふー」


そこには勇者の鼻に棒(3mくらい)を突っ込んだ"彼"がいた、


「うーむ、まさかあそこまで単純とは…もう少し苦労するかと思ったんだけどな」



手に有るのは一本の鍵、それは先程までジウレスカが持っていた宝物庫の鍵に他ならない。


「あんな無造作に腰に付けてんだもんなあ、盗って下さいっていってるようなもんじゃねーか」


彼がジウレスカから鍵を盗ったのはジウレスカが玉座の間に行くことを決意し彼の横をすり抜けたその一瞬である


向かい合っていた自分のすぐ右側を通り抜けようと向かってくるジウレスカの右腰に剥き出しに付いていたその鍵を右手で掠め取ったのだ。

魔神の危機ということに動揺していた一瞬の隙を狙ったのである。


「まあ、それだけ自分の力に自信があったんだろうけど…でも過信はよくねえよなあ」



そう言いながら被せられたマント退かしながら起き上がる彼、


「ふむ、中々良さそうなマントだな…折角だしいただいておくか」


そう言ってマントを肩に掛け、手の中で鍵を遊ばせながら扉に近づいていく。

そのマントは良い物どころか伝説級の代物なのだが当然本人には知る由もない




彼が魔神城に来る前に買った物は三つ、


『ビックリグッズ お徳用セット』 

内容

・化け札2枚

・いくつかの候補の中から選んで変身できる

・自分と余りに体格差のあるものには出来ない

・変身できるのは10分間、但し変身中に誰かに触られると時間が残っていても効果は切れる

・一度変身したものには12時間たたないとできない

・あくまで外見を変えるだけなので触らなくても索敵系魔法を使用されればバレる


・刺すと刃が引っ込み刃の根元から赤い液体が出るナイフ(液体は青色の物に交換)


・砕くと中から色の付いた液体の出る飴(青色を使用、液体は全くの無害)


『眠り粉』

・市販で売られている対魔族用のものと同じだが、本来の使い方はほんの少しの量を風に乗せるだけで効果が有る

・ある程度の力を持つ魔族には効果は無い。だが彼はAに粉全てををクロロフォルムの要領で門番に嗅がせる用仕向けた為、門番は熟睡してしまった


『メッセージカード10枚入り 専用ペン付き』





あの部屋を出た後、手ごろな魔族を見つけ化け札を使い宝物庫の場所を聞き出す。

単純に宝物庫の場所だけ聞けば当然疑われる、そこで宝物庫の門番の出番である。

宝物庫の様な重要な場所にはそれ相応の強力且つ、信頼の置ける魔族が居るのは当然。


そこでまず門番の名前をAから引き出し、そして自分達の事をあえて教え門番の反乱という有り得ない行為に現実味を持たせ、且つ芝居をしてそれを誰にも言えない様にする。

その後適当に理由を付けて門番に会いに行くと言って宝物庫の場所を聞き出し、その場を離れ(この辺りで変身が解けている)他の魔族に気づかれぬように今度は宝物庫へ向かう。

そして宝物庫に着いた後、また化け札を使い別の魔族に変身し、ジウレスカに偽者の存在を示唆する。

Aとの会話からジウレスカは魔神に信頼されていると思っていると推測し、それを逆手に取り偽者の危険性を上昇させた。

結果ジウレスカは宝物庫を離れ、玉座の間に向かう。

向かっている途中で魔族に侵入者の存在を話すだろうから当然騒ぎになり、それはAの耳にもすぐ入り、魔神に報告するだろう。

結果ジウレスカと大勢の魔族は消滅し、且つただでさえ宝物庫に近づく魔族は少ないのに、さらに少なくなる。




そして自分は








「さーてお掃除お掃除」


極めて安全に宝物庫に侵入できる







鍵を使い重々しい扉を開ける


「うわー、想像以上に散らかってんなあ」


体育館程の広さの部屋、その部屋全てが武具財宝道具によって埋まっており、さながらアスレチックのようになっていた。


「んー、ここまでゴミだらけとはいくらなんでも予想GUYだな…時間も後20分くらいしかないし…どうすっかなあ」


そう言いながら無造作に落ちている本を手に取った、







蔵書カタログ

・触れた物をページにして、綴じることが出来る

・1つの物につき1ページ

・ページにはその物の名前と効果、使い方が記される

・ページの上限枚数は無い

・仕舞った物を取り出すには、その物の書かれたページを 本から破ればよい

・本自体は持ち主の意思で何時でも出し入れ出来る

・本を仕舞った状態だと頭の中で本の中の物を検索できその後本を出すと

検索した物のページが開いた状態で現れる

・生きている物を入れることは出来無い

・ページになった物は、なった時の状態のままで保存される






頭の中に突然そんな情報が流れ込んできたと思うと、その本はいきなり消え、使い方が体に勝手に染み込むような感覚に陥った。

半信半疑で手をかざして本をイメージすると先程の本が自分の手の中に現れた。


「こいつは便利だな、ご都合主義万歳」


そう言いながら彼は本の力で宝物庫の"ゴミ"を掃除し始めた。

そして"掃除"が終わり、宝物庫が『塵』一つ無い状態になって


「んじゃ挨拶の手紙でも残しとくかな…っとそうだ。

折角だし掃除したのはイケメン君ということにしておいてやろう。

俺みたいな一般人より勇者がやったって事にしておけば魔神も勇者を礼儀正しいと感じて後々良い関係が築けるかもしれんしな。

俺って本当に奥ゆかしいな…命がけの手柄を世界の為に他人にあげるなんて」


さらさらさらっと


メッセージカードに勇者からの礼儀正しい御挨拶を書いてから宝物庫の壁にぺたりと貼り付ける。

ただ、ここだけでは気づかれるのに時間がかかる可能性もあるから近くの通路にもう一枚書いて置いとこう。

さて、名残惜しいけどそろそろ時間かな



そして彼らが帰った後、時間は戻り、魔神は宝物庫に有ったほうのカードを読み始めた




拝啓、魔神様。


私、つい先日召喚された勇者でございます。

今回ご挨拶にお伺いしたく参上しましたが、御前に行く途中に目に付いたこの部屋と城全体の余りの散らかりように心を痛め、挨拶代わりといたしまして勝手ながら掃除をしようと思った次第で御座います。

ただ、私がこの城に居られるのは極僅かな時間である為、掃除の分担をしようと思い立ちました。

勝手ながら城全体に散らばっているゴミを魔神様の下に集まるようにしておきました。

先程の感じた振動のご様子ではうまくいったようで何よりで御座います。

私もなんとかこのように塵一つ残さず掃除が出来ました。

直接お会いできなかったのは心残りでは御座いますが、それは次の機会の楽しみとして残しておく事に致します。

ではくれぐれもお体に気を付けて。


今世紀最高の怪盗にして女性吸引力の変わらない唯一人のイケメン


アルセーヌ・ヒデト・Dソン・サギヌマより




PS 自分の城に名前そのまんま付けるのどうかと思います。

もうちょい良い感じの名前付けないとネーミングセンス疑われますよ?






直後








咆哮と共に放った魔神の閃光によって魔神城は半壊した



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