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エピローグ(二)


「秀也、元気?」

入って来た司に微笑みながら頷くと、明るい黄色のひまわりを微笑ましそうに見つめた。

「ひまわりか」

「うん、途中で見つけてね。何か、いいだろ? 元気が出そうで」

「そうだな」

「花屋みたいだな」

部屋を見渡し、司はクスっと笑った。

「これでもお袋に持って帰ってもらってるんだぜ」

「人気もんだからな、秀也は」

空いたスペースを見つけると、傍まで行ったが、そこにあったバスケットに入ったピンクのガーベラのアレンジメントを見つめた。

陽子が持って来たものだと分かった。


「司」

「ん?」

ひまわりを抱えたまま振り向くと、秀也の視線がピンクのガーベラに行っているのが分かる。

「ごめんな」

「何が?」

「不安、だったろ。 俺、どうしても上手く出来なくて」

司は黙って首を横に振った。

「好きだよ、オレ」

「え?」

「秀也のそういうとこ」

安心したように笑みを浮かべると、秀也に背を向け、ピンクのアレンジメントの隣にひまわりを置いた。

そして、先程まで陽子が座っていた椅子に腰掛けると、秀也の手を握った。


「秀也が生きていてくれればいい。オレの傍に居てくれるだけでいい」

「司」

「それだけでいい。特別な事は何も要らないよ、今は」

「今は?」

「そう、今は。 退院したらいろいろやってもらいたい事は沢山あるけど」

「そういう事か」

クスっと秀也は笑うと、少し意地悪そうに笑った司と目が合った。

互いに笑みを交わすと、二人はそのまま唇を重ねた。



 しばらくして、ノックもなしに突然勢いよく扉が開き、二人は驚いて入口に釘付けになった。

「来週退院だって!?」

入って来たのは晃一だった。

「ノックくらいしろよ。病室だぞ」

呆れて司が言うと、まぁまぁと、晃一は目で応えながら椅子を並べると座った。

「ナオは?」

「実家で休んでるよ。秀也が退院するまでのオフだからな。今の内に休んでおけって、言っといた」

「え?」

「悪いな秀也。スケジュールも迫ってるんだ。あんまりゆっくりもしてられなくてさ。とりあえずボンにはすぐ動けるようになるまで看てくれって言ってあるから、退院を来週にしてもらったんだ」

「は?」

「ハハハ・・・。司も鬼だよな。ホント、秀也の彼女かよって疑っちまうよ。ま、そういう女を選んだんだ。秀也も諦めろ」

「はぁ」

先程二人で交わした会話と重ね、秀也は苦笑するしかない。

見事に司のペースにはまっているとはいえ、それが何とも居心地が良いのだ。

互いを信頼し合っている親友の域を超えた恋人の存在に、晃一は二人を羨ましく思って見ていた。



『秀也だけだ。オレの事、最初から女として見てくれてたの。飾る必要がない。だから居心地がいいんだよ』


そう司は言っていた。

俺には司を女として見る事は出来ても、秀也のように見守ってやる事は出来ない。

男とか女とか意識する事はない。

司は司でしかない。

ただ、司は俺にとっては友達以上に大切な何かだ。

それが分かっただけでも、俺は幸せモンだ。



   〈 END 〉




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