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7話 平穏

 便利屋での生活も始めてひと月。いろんな人の依頼に補佐としてついてまわって、かなり仕事にも慣れてきた。

 魔法は、攻撃魔法は出るようにはなったが、まだまだ威力も制御もままならない。俺のは言ってしまえば、子供がじゃれ合う水遊び程度の威力までしか出ない。これまで魔道に一切触れてこなかった人間にしては成長が早いと美玲には言われたが、いかんせん実感がない。俺的には、とっとと最低限の実力は身につけたいものだ。

 他の魔法はというと、かなり上達した。現段階でも魔道学校で遅れをとることはないレベルらしい。魔術に関しては、魔導文字を少しずつだが覚えてきた。今なら時間はかかるが、簡単な術式を見ながら刻印できる。正確さがまだまだらしいので、そこも頑張りたいと思う。


 今日は俺がメインで依頼をこなす日である。内容自体はよくある例らしい。不安だが美玲もついてくるとのことなので安心だ。


「レイジ、今日は聞く限り魔法が必要そうだから、教えたことをしっかりと忘れずにね」

「まかせろって。それに、なんかあったら美玲が何とかするだろ?」

「私は保険なのだから、それに甘えて雑にならないこと」

「わかってるって」


 美玲は相変わらずだ。多少距離は縮んだと思うが、最初から彼女は自分を偽らずに接してくれていたようで、正直だなと思う。陽樹の他のメンバーとも会話ができるようになった。

 それぞれ異なるタイプの人間に見えるのに、どこか一つにまとまった印象がある。根本に見える善性というようなものが似通っているのだろうか。

 あれこれ考えていると、依頼先に到着する。



 依頼は滞りなく終わった。屋敷の空調を兼ねた術式の不調を直して欲しいというもので、術式を司る刻印の近くに、中途半端に魔力のこもった粗悪な刻印液(術式を刻むためのインク的なもの)が散乱し、干渉していたことが原因だった。

 幸い、刻印する行為に至っていない物は術式と分離可能の為、魔法を用いて術式周りを掃除した。具体的にいえば、魔法で火を起こし、刻印液を浮かび上がらせる。そして、水と混ざらない刻印液の性質から水を用いて容器に分離した。

 術式と粗悪な刻印液の魔力の含有量がかなり違ったため、特に苦戦することもなかった。……依頼主がものぐさで、散らかったうちの人形の魔道具が襲いかかってきたことで少し頭を打ったこと以外はとても順調だった。

 ひとつ予想外のことがあり、別の術式にその粗悪な刻印液を使ってしまったようで、不備が起こってはいけないと美玲が対応、しっかりと術式を刻印しなおした。



 依頼も終わって緊張がほどける。大きめの屋敷だったこともあり、余計緊張した。


「いやー、何とか成功したー」

「良くやったわ。上出来ね」


 イレギュラーは除いて、当初の依頼を一人でこなせた、ということがかなり嬉しい。自分でもできることがある、成長していると、再確認した。


「俺の依頼も終わったし、どっか食い行く?」

「そうね……特に予定もないし、いいわね。私ガッツリ食べたいのだけれど」

「いいな!」


 お昼前に仕事が終わったこともあり、ご飯は外で食べることにした。グラムさんのご飯はとてつもなく美味しいが、外食というのは、時々したくなるものである。便利屋に来る前の自分だったら想像もつかなかっただろう。達成感とともに美味いご飯を食べるのは至福だ。


「ラーメンとか?」

「いいわね、明日もこの後も予定もないし、大盛のラーメン行くわよ」

「美玲ってラーメン結構いけんのか」

「月に一度は食べるわね」

「だいぶ行ってるな!」


 美玲は事務所には住んでいない。食堂でご飯を食べることもあるが割と忙しいらしく、食堂よりも弁当などが多いらしい。それにこのひと月で、割と金欠っぽいところを見たが、外食は結構してそうだ。


「よく外で食うのか? いつも弁当だけど」

「ええ、割と行くわよ。魔道具とかに給料をもっていかれてしまうと、あまり多くは行けないのだけれど、好きなのよね外食」


 美玲は、事務所の備蓄などとは別に、色々な魔道具などを買う。この前も、事務所に何に使うんだか分からない物を持ってきていた。複雑すぎて分からなかったが、あれが理解できるならスマホとかに苦戦しなかったんじゃ……?なんて疑問も浮かんだが、考えるのはやめた。


「じゃあ、いつもの礼もこめて俺の奢りってのはどう?」

「あなたの方が金欠でしょう。いいわよ、自分で払うわ。」

「いいから、俺なりの感謝と気持ちってことで」

「うーん、そうね……じゃあ遠慮なく」


 まだ、こんなものしか返せないが、所長とかもいつかご飯に誘おう。

 調べると近くに美味しそうな店がある。美玲に見せると『このお店、そういえばこの近くにあったわね……!』と、その店について色々と教えてくれた。有名なところで、一度は行ってみたかった店のひとつらしい。


「うし、行くかー」


 そうして俺たちは、腹を空かせながらラーメン屋へと向かった。

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