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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第一章「始まり――魔道のある日常」
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幕間 死にかけの男の子

「あぁ、もう、あっつい。」


 つい口に出してしまうほどの暑さ。世間が夏休みに入ったばかりの今日は、朝の天気予報によれば、例年より五度近く高い気温らしい。寒いのは特に問題ないのだけれど、夏の暑さは苦手、冬の方が好きだ。冬生まれだからだろうか。


 夏というと服を脱ぐなどの暑さの対処には限界があるが、寒い時に着込む分には暑さよりも拡張性がある。そんな理由で私は夏が苦手で、冬の方が好きなのだが、今日は仕事もあるし、外に出なくてはいけない。


 あのバカが今日はいないらしいから心労は少ないが、やっぱり事務所まで行くのが億劫になる。

 そんなことを考えながら歩いていると、部活帰りと思われる高校生三人組が会話しながら歩いてきた。


「ねー、なんかさっきの公園で寝てる人いたんだけど」

「え、この暑さで? えぐ」

「熱中症とかじゃない?」


 そんな会話をしているが、誰もその寝ている人に声をかけようとはしなかったらしい。まぁ、知らない人相手なのだから、おかしいことでは無い。

 しかし、私的には少し引っかかる。もしその人が危ない状態だったらどうするのか。


「そこの三人」

「え、俺らっすか? ってめっちゃかわいいじゃん!」

「なんか用? もしかして逆ナン的な?」


 めんどくさい。こういう軽いノリを知らない人にやられるの不快なのよね。とっとと終わらせよう。


「そんなわけないでしょう。さっきの、公園で寝てる人っていうのはこの先の公園にいるのかしら」

「えぇー、言動きっつー……そうっすよ。角曲がったとこの公園のベンチでダウンしてたっす」

「そう、ありがとう。じゃあ」


 そう言ってとりあえず近くのコンビニに向かおうとするとバカ三人組は、目の前に立ち塞がってきた。


「まぁそんなことよりもさ、連絡先とか交換しない?」

「しない。それじゃ」

「いや待ってよ」


 引き下がらない。挙句には手をつかもうとしてくるので、少し痛い目を見せてやろう。素早く魔法を発動させ、彼らの体に干渉する。魔力を電気に変換、擬似的な電気信号をつくりだし、汗が止まらなくなる信号を与え、神経に誤作動を起こしてやる。


「ちょっとくらいさ、いいじゃん…………あれ? なんか汗とまんないんだけど」

「え、俺も。やばい」

「えぐい! 滝なんだが!」


 当然だが上手くいった。彼らの体は、汗を出し続けるように命令されたと誤解している。とめどなく汗が溢れる。死ぬことは無い程度にしたから大丈夫。水を飲み続ければなんとかなるでしょう。


「あら……大丈夫? なんだか体調がおかしいようね。水分摂取と病院に行くことをおすすめするわ……お大事に……」

「ちょ、まっ! やばい、汗止まらん!」


 可哀想な三人組を無視し、その場を後にする。コンビニでスポドリとなにか食べ物を買おう……お昼過ぎだからかしら、菓子パンくらいしかないわね。仕方ない。


 そうして、飲み物とパンを購入すると、公園へ向かう。五百円の出費は今は手痛いけれど、仕方ない。

 公園のベンチを見てみると本当にいた。恐らく私と同じくらいの年齢の少年。遠目だが、結構危ない状態に見える。しかし、それ以上におかしな点があった。


「魔力が、揺らいでる……?」


 魔力が少年の周りを漂っている。魔眼で見てギリギリ見える程に繊細な流れ、無意識だろうか。普通、魔法使いは魔力を外に意味無く放出し続けない。体内の魔力は有限だからだ。


 しかし、周りを冷やしているとかでもなく魔力が放出されている。まさか、魔法適正があるのに、魔力の扱いがなっていない?あの歳でどこにも所属していないの?

 そんなことがあるのか。しかし、考えたところで、今の私にわかることは無い。それに、


「普通に危ないわね。熱中症かも」


 そう考えると少年の元へ向かう。


「ガチめに限界だ。死ぬぞこれ」


 喋る気力はあるらしい。ひとり、うわ言のように言っている。


「あらそう。私の前でくたばるのだけはやめてね。死にかけの人」

「…………はい?」


 こうして、私、綾崎美玲はレイジと出会った。

・美玲に魔法をかけられたバカ三人組は、あの後近くの病院に駆け込みなんとかなった。たまたま魔道に理解のある医者が担当したが、何となく事情を察した。かわいそう。

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