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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第一章「始まり――魔道のある日常」
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4話 魔法学基礎入門

 初依頼の後、書類やらなんやらをある程度記入(不明瞭な個人情報は何とかしとくらしい。大丈夫なのかわからない)し終わった。


「って言っても、便利屋の使う魔法って一体なんなんだ?」


 レイジは自身の教育係となった美玲に問いかける。


「そうね、便利屋で使う魔法の大抵は魔法の基礎を細かく丁寧に扱えればいいものよ。例えば、水に指向性を持たせて色んなところを綺麗にするとかね」

「そんなことが出来んだ」

「まずは、普段の依頼で使うような魔法から教えましょうか」

「お願いします。綾崎先生」


 先生という言葉を聞いた瞬間、美鈴は心底いやそうに顔をゆがめた。


「…………名前自体の呼び方はなんでもいいけれど、先生ってつけるのはやめて」

「師匠?」

「分かった。攻撃魔法の基礎を教えてあげる。身に持って体験しなさい」

「ごめんなさい」


 俺の方へ向けた手をどかし、はぁ、とため息をつくと、美玲は指先で様々な現象を起こした。それぞれの指先で炎が燃える、水が発生する、まばゆい光が放たれる。しっかりと魔法を見るのは初めてだった。


「まぁ、こんなふうに魔力を色んな現象に変換して使うことが依頼で多く使うものね」

「水道詰まりも魔法で直せんのか?」

「できるわよ」

「便利だな魔法。あ、でもわざわざ魔法で直すことでもないか」


 水道ならそっちの業者に頼むだろうと、言ってから気がついた。


「いや、魔法で直さなきゃいけない場合があるわ」

「家自体に魔術回路が組み込まれている場合、魔力を扱えない業者が万一そこを開いたりでもしたら、ごっちゃごちゃになって魔術が使い物にならなくなる可能性があるわ。そういう時に魔法でやりくりできるのよ」

「ああー、なるほど」


 魔法やら魔術が絡んでくると普通の会社が手を出せない。その際に役立つのが便利屋か、需要はたしかにありそうだ。


「で、依頼で多く使わない魔法っていうのは魔力をそのまま放出して攻撃する。いわゆる攻撃魔法」

「ちょっとは使うのか……?」

「心配はしなくていいわ。あなたは今のところ雑用だから、何かあったら私たちが対応する」


 乱暴沙汰もあるのか。少し不安になりながらも、レイジはさっき見せて貰った魔法を自分も使えるようになるのかと、期待が高まっていく。


「とにかく俺は基礎をやんなきゃいけないと」

「そうね、それと同時に魔道具の扱いを覚えてもらうわ。こちらはそんなに難しいものではないから安心して」

「とりあえず、今回は魔法の出し方から」

「うす」


 魔法の出し方、正直考えつかない。マンガとかでよくある詠唱が必要なのかと思っていたが、美玲は何も言わずに発動させていた。


「とりあえず今日みたいな目に集中するだけじゃなくて、体全体で魔力を自覚しないといけないわね。手、出して」

「ほい」


 美玲が手に触れると、体内になにかが巡る感覚を覚えた。なんというか、止まっていた血の流れが動いた時に暖かくなるあの感じだ。


「これが魔力の流れ、わかった?」

「なんかわかったかも」

「よし、次はとりあえずやってみましょう」


「まずは自分の発動する魔法のイメージをして、体が魔法を発生させる装置だと思い込みなさい。最初は水を出してみましょう」

「イメージ」

「私たちの体内の魔力を導線に、体という媒体を通して、世界に現象として発生させるの」


 魔力があるのは分かったが、流れを把握してもそれを操作できる訳ではない。全くわからん。


「自分をウォーターサーバーだと思ってみて。魔力は電気で、出てくる水が魔法ね。出てくるとこは手のひらで」


 俺はウォーターサーバー、俺はウォーターサーバー。なにかカチッとハマった感覚がした。その瞬間手のひらから水が溢れ出した。魔法を使えたことを確信できた。


「……筋がいいわね。1度魔法を発動したからこれからは他のものもイメージすれば、だんだん体内に回路が出来上がって使えるようになっていくわ」

「すげぇ! 使えた!」


 自分でも魔法を使えた。本当に俺にはその才があった。

 心のうちで喜んでいると、美玲は次の魔法について話し始めた。


「じゃあ次は攻撃魔法ね。基礎中の基礎、魔力の放出。さっきの基礎魔法も魔法戦では扱うけれど、純粋な攻撃となるとこっちの魔法が挙げられるわ。」


 そう言って美玲は離れた位置にある、何に使うんだかわからない魔道具に魔力を当てた。指先からモヤのように見えていた魔力が、白い球状になって発射された。


「感覚だけ覚えて今はそれ以上威力を上げたりはしないこと。今度は、そうね、今度はただの水鉄砲。水という魔力を体という水鉄砲でそのまま放出する感じ、」


 ……ムズい。まだ魔力がそのままで現れることを想像出来ていないのだろう。


「出来そうな流れはあるわ。まぁどちらも日々鍛錬あるのみね」

「そういや美玲って魔力の流れ見るの得意なん?」

「たしかに得意だけれど、どうしてそう思ったの?」

「所長に聞いた」


 依頼から帰ってきて教育係が美玲に決まったと聞いた際『綾崎はうちの中でも、いや、魔法使いの中でもずば抜けて魔力の流れを見るのが得意だし、頭もいいから気になったことはなんでも聞くといいよ』と、言われたのだ。


 あと、魔道や魔道具に関しては一級だが、機械系統はまだてんでダメなのでフォローできる時はしてやって欲しいと言われたのは秘密にしておこう。


「ふーん所長が、まぁ、私の場合得意であることと同時に魔眼を持っているというのも大きな強みね」


 魔眼とは特定の魔法や術式の効果を宿した一種の魔道具とも言える器官だ。数は少なく先天的なものと、後天的なものがある。研究自体は古くからされているものの、その発生要因、種類などには不明な点も数多く残っている。


 一般に魔眼はメリットとなることが多いが、稀に所有者に害をなすものも存在する……らしい。この情報はさっき本で読んだ。


「凄いんだな美玲って」

「褒めても何も出ないわよ」

「別にお世辞じゃねえよ」


 実際だいぶすごい部類だろう。魔法を使えるのはひと握り、なかでも魔眼持ちなんてさらに数が少ないらしい。こんなすごいやつがいるのに、人手不足ってこの便利屋は一体……


「まぁいいわ。今日は疲れただろうし終わり。もう寝なさい。おやすみ」   

「あぁおやすみ」


 たしかに疲れた。ちょうど見計らったのか、所長が現れた。

 部屋を案内してくれるというのでついて行く。



 所長に案内された部屋は一人で住むには十分いや、むしろ広いスペースで、つい今日まで放浪していたレイジにとっては天国だった。特にベッド。

 なぜ二段なのかは知らないが、吸い込まれるように寝転がりそうになるものだ。試しに座ってみると、早速悪魔の誘惑が襲う。


「いや、風呂入んなきゃ」


 放浪中もなけなしの金で銭湯に行くほどレイジは風呂を重要視していた。どれだけ疲れていようとそれだけは欠かせない。くたびれた体を頑張って動かして風呂場へ向かう。服を脱いで、既に誰かが脱いだであろう衣服を見つけ別のカゴに入れ……ん?誰かの衣服?


 危険を察知し、風呂場から緊急離脱。急いで所長に電話をかける。


「所長!? なんか人が! 風呂に!」

「あれ、言ってなかったっけ。ごめーん」


 まったくごめんという気持ちの感じられない声が電話先から聞こえてくる。


「ルームメイトがいるんだよ。新人が入ったってことは伝えてあるから挨拶しといてね。まじごめん!」


 この所長!雑すぎる!違和感はあったよ。一人にしては広い部屋、二段ベッド、てかあの人流石にわざとだろ。


「お、あんたが新しく入ったやつか!」


 背後からやけに元気な声が聞こえる。振り向くと全裸の男が仁王立ちしている。


「俺は稲垣陽樹(いながきようき)!よろしくぅ!」

「…………よろ……しく」


 赤髪にベリーショート、茶色い瞳の少年は仁王立ちのままでそう名乗った。


 なんだこいつ。


・美玲の持つ魔眼は通称、流れの魔眼と呼ばれる。魔力の流れを詳細に見ることができることなどからそう呼ばれる。制御できない場合、視界が待機中の魔力全ての流れに干渉してしまい、魔力以外が見えなくなってしまう。

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