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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第二章「日常に潜む影」

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36話 そうだ、部活作ろう

 学校に通い始めてからしばらく経ち、授業にもだいぶ慣れてきた。

 しかし、まだ部活には所属していない。


 放課後になり、どこか部活を見に行こうかと校舎をつなぐ渡り廊下で考えていると、前から陽樹がやってきた。


「お、レイジ! 今日はどこいくんだ?」

「おー、陽樹か。んー、昨日はサッカーいったし、この前は吹部いったし……ほかにも結構いったんだよなあ」


 どれも楽しそうではあったのだが、どうもこれがいいという部活には巡り合えていない。


「そういや、今日はグラムさんがなんかすげーチーズ手に入れたとか言ってチーズフォンデュ祭りらしいぜ」

「マジで! チーズフォンデュかぁ、美味そー!」


 夕食の楽しみができた。だが、今日の部活見学……どうしたものか。


「あら、こんなところで何しているの?」


 陽樹と一緒に雑談しながら考えていると、後ろから声をかけられる。


「美玲か、いやー、部活入ろうかと思ったんだけど、決まんねぇんだよ」

「俺も運動部の助っ人しかやってないからな! レイジが面白そうなとこに入るんなら、俺も本腰入れてやろうかと思ってんだ!」


 そう、陽樹も正式に所属している部活がないのだ。運動神経の高さから運動部全般からスカウトされているらしいが、助っ人しかやっていないらしい。


「そうね……私もたまに研究室にお邪魔するくらいで、特に何かに所属している訳じゃないのよね」

「そうだったんか」


 今ここにいる便利屋たちは全員部活に所属していない。

 便利屋……あ、ワンチャンこれなら……


「部活って新しく作れんの?」

「できるわよ。五人以上の部員がいればね」

「なんだレイジ! 部活作るんか!」


 そう、部活を新しく作る。考えもしなかった。

 だが、作れると分かったならば可能性が出てきた。


「そうだな、――思いついたんだけど便利屋を部活としてやるってどうだ?」


 学校内で依頼を受けて、解決してしまう。それが出来れば、便利屋での活動にも繋がる何かを得ることが出来るのではないかと、そう考えたのだった。


「便利屋の依頼を学内で募集して解決するってことね……そう簡単に行くかしら」

「俺は面白いと思うぞ! 名前つけんなら便利部だな!」


 美玲は何やら考えているようだが、陽樹はもう既に名前を決めている。


「まぁ美玲! 五人いればいいんだろ! 俺らで三人、あとはゆらとシャスティで五人だ! うっし、やるぞ便利部!」

「ちょっと、なんで私も入ることが確定しているのよ」


 勢いのままに部員を確定させる陽樹に、美玲はすかさずツッコミを入れる。

 俺も思いつきで言ったしな……それに月城って新聞部と放送部の掛け持ちをしてるんじゃなかったっけ。


「人数がなんとかなったとしても、部活として成立するための目標や、作ったあとも活動実績が必要なのよ。分かりやすい大会などがない分納得できる理由を考えないといけないわ」

「それはレイジと美玲の担当だぜ!」

「「おあなたも考えろよ(なさい)!」」


 完全に丸投げの陽樹に、美玲は呆れた様子だった。





「とりあえず人を集める前に、どういった目的でこの部を作るのか、それを考えるわよ」


 俺は部活見学の予定を変え、美玲と陽樹とともに教室で計画を立てていた。


「結局部には入ってくれるのか?」

「そうね、まだ確定ではないけれど……楽しそうだとは思うし入ってもいいとは思うわ」


 質問すると、美玲は顔を逸らしながら言った。やってみたいとは思っているらしい。


「素直に入りたいって言えよー」

「うるさいバカ陽樹」


 いつものように美玲と陽樹が言いあっている。

 俺は、それを横目にどうした目的で部活を作るのか、それを考えていた。


「目的、活動実績……活動実績は依頼を受けた内容をいつもみたいにまとめればいいけど、目的なぁー」

「人助けじゃあダメなんか?」


 陽樹がサラッと言うが、美玲がすぐに反応した。


「漠然としすぎじゃないかしら。もっとこう具体的かつ、それが成長に繋がるような目的を表面だけでも決めないと」

「そうね……便利屋って基礎的な魔法と魔術、魔道具の知識が必要だから、課題を見つけて解決することで人の役に立ちつつ、自身の能力向上を目指す……みたいな」

「それっぽい!」


 なんかいい感じにまとまってる!陽樹も『なんかいいんじゃねぇか!?』と不満も無さそうだ。


「じゃあ美玲の案を目的として……次は人だな」

「ゆらとシャスティを呼べばいいんじゃねぇのか?」

「ゆらは既に二つ掛け持ち、シャスティは友達と漫画研究部に入って頑張ると言っていたわ。多分無理ね」


 月城が部活を掛け持ちしてるのは知っていたが、シャスティももう部活に入っていたのか……これはどうしたものか。


「話は聞かせてもらった!」


 突然教室の外から声がした。

 驚いて振り返ると、そこにはガレスが立っていた。


「俺もその便利部とやらに入ろう」

「あなたはヴァメルベルト君だったわよね。運動部に所属していたと記憶しているのだけれど」

「柔道ならば辞めた。俺の習得できるものは全て得たからな」


 こいつマジで言ってんの?まだ夏休み明けだぞ、最初から入部していたとしてそんな早く上達するんか?


「いいんじゃねぇか? ガレスなら魔術も得意だぜ! 俺とは比べられねぇくらいな!」

「稲垣、お前と比べるな。魔術成績最悪なやつに比べれば大抵の生徒はマシになる」

「ははっ! 確かにな!」


 陽樹は魔法の感覚に関しては天才だが、魔道初心者かつ魔術は苦手な俺にも満たないレベルで魔術はこれっきしである。魔術上達にも繋がるし、便利部での魔術関連を積極的にやらせた方がいいかもしれない。


「とにかくガレスも入るってことでいいのか?」

「そうだ。天野、この部に入れば月城さんと話せる可能性は上がるだろう?」

「え、いや知らんけど」

「ふっ、お前に着いていけば月城さんと遭遇できる確率は上がる。そうなれば話す機会も自ずと増えるものだ」


 月城狂いは相変わらずだが、既に四人集まった。

 便利部……面白くなりそうだ。俺は初めて魔道を学んだ時と同じくらいワクワクしていた。

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