幕間 私の学校生活
留学生として魔道学校に通うというのは、私が国を出る時には決まっていたことだ。アルトが私の周りの複雑な事情を一旦置いておくことで、留学生という形になった感じだ。
今日までずっと内緒にしていたが、先生から美玲が同じクラスになると聞き、彼女にだけは話しておいた。
美玲は驚いていたが、『ゆらも陽樹も一組だったから便利屋の……友達が同じクラスで嬉しいわ』なんて言ってきた。ちょっと恥ずかしかったのか、顔が少し赤くてかわいかったなぁ。なんか初見だとちょっとツンケンしてるし、友達少ないのかな……?
私はと言うと、朝のホームルームで王女であること、留学生としてやってきたことを話すと、みんなの質問で押し潰されそうになった。
クラスメイトの一人が不敬だろ!なんて言うとおさまったけど、私的には不敬だとかはあんま気にしたこともないし、普通に仲良くして欲しいとは言っておいた。色んな子がいるけど、楽しく話せそうだし、日本の学校生活といえば、ラブコメの舞台……楽しみ!ってことしか考えてない。
「シャスティちゃん、さっき漫画とかアニメ好きって言ってたよね? 何が好きなの?」
始業式のため、体育館に整列していると、近くに居た子が話しかけてきた。長い桜色の髪を三つ編みでまとめた女の子、彼女は坂宮愛美ね。さっきマンガが好きかどうか聞いてきたあたり、仲良くなれそうなんだよね!私の直感がそう言ってる!
髪と同じ色の瞳を輝かせ質問してきた彼女、やっぱり私と同じようなオーラを感じる。
「『終わる世界より君が好き』が好き! あれ、男女みんな可愛くない?」
「……! わかるよシャスティちゃん! 修斗くんの夏祭りのシーンが凄い好きで……」
「わかる!!!!!」
予想通り!彼女は同士だった!便利屋だとあんまり話が合わなかったからすっごい嬉しい!
美玲はそもそも読まないらしいし、ゆらはホラーとかアニメが有名なやつしか読んでないって言うし、男どもは論外だし……ここに来てやっとマンガ仲間を見つけられた!
「でも、王女様もマンガなんて読むんだ? ああ! 悪い意味じゃなくてね!」
「大丈夫だよ、まあ、結構そういうところは甘やかされてたから、色々持ってきてくれたんだよね」
「そうなんだ……所作とか、自己紹介の時も、しっかり王女様って感じで雰囲気違ったから余計驚いたよ! その後すぐに今の感じになるし」
「ほんと?」
そんなに言うほどだったかな?担任の先生から、最初は丁寧王女のオーラをかましていけ!と言われたので、ちょっとだけしっかりやったけど、予想以上に王女感が出ていたみたいだ。
国にいた時は王女としてしか人と接してこなかった。自分を押しつぶすことには慣れたものだ。
でも、面倒くさいし、今の素の状態でいるのが一番いいな。
ふと視線を感じ、振り向くとレイジがいた。私も学校行くこと、黙ってたし、びっくりしてるかな?
なにもおかしなことは無いように、ここにいることが当たり前のように手を振り返してやる。あれ?あんまり驚いてない?というか、苦笑いしてる。ガチでいるじゃんってバレてるみたいな?
「あの男の子も便利屋で仕事しているんだっけ? 一組の編入生」
「そうそう、レイジね。私も編入するって内緒にしてびっくりさせようと思ったのに、見るなり苦笑いしてるんだけど、なに?」
「サプライズ失敗ってこと? 先生とかから聞いてたんじゃない?」
愛美が言うように、先生側から情報が漏れた説か、ありえる……なーんだ、せっかく驚いた顔みてやろうと思ったのに、妙に達観してるから時々驚かせたくなるんだよね、あいつ。
目を見開いて、『なんでここにお前が!?』なんて驚いたところを笑ってやりたかったのに。陽樹とかといる時は割と年相応に見えるのに、それ以外だと同い年に見えないんだよね。
「…………まぁいいや、後でゆらとか陽樹の驚いた顔見て満足しよ」
「なんというか、便利屋って仲良しだよね」
「そう? 同年代の人が周りにいるの慣れなくてよく分かんないや」
「ふふ、元々便利屋の三人って周りから見ても仲良しだったけど、シャスティちゃんとかレイジくんを見てもやっぱり、ちょっとした雰囲気が同じって感じがするよ? 仲間みたいな」
私も便利屋に馴染めたってことかな?あいつらといると楽しいし、その輪に自然に馴染めたのならば嬉しい。
「悪い気はしないかも」
こうして、私の学校生活は始まったのだった。




