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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第二章「日常に潜む影」

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34話 魔道学校!(3)

「うし、じゃああとでな、レイジ!」

「おう」


 夏休みが明けた今日、魔道学校新学期のこの日、俺の学校生活が始まる。

 陽樹は学校に一番乗りすると言って早く出ていったが、俺も少しだけ早めに出よう……


「おっすー! レイちゃん!」

「げっ」

「『げっ』とはなんだ! 今日からうちの学校くるんでしょー! 同学年だけどー、後輩みたいなもんじゃーん。先輩って呼んでもいいよ?」

「なんすかセンパイ早く出たらどうすか遅刻しますよ」

「ガチ棒読みじゃん!」


 くそ!こいつも魔道学校通いだった!めんどくせー!


「てか、制服似合ってんじゃーん、イケメーン」

「言っとけ、俺はもう出る。じゃあな」

「ちょっとー、一緒に行こうよー」


 早歩きしてもついてくる。仕方が無いのでそのままにしていると、ずっと喋り続けている。


「――――それでね! まだ一年の一学期なのに三年生みたいな貫禄もってるの! あと、魔術基礎の先生が――――」


 この後学校に着くまで月城の一方的マシンガントークを聞き続けることになった。



「着いたーって、レイちゃんは最初からクラスに行く感じ?」

「そうだな、始業式って、ホームルームの後だろ?」

「そーね……てか魔道科、だよね! どっちのクラスに入るの?」

「一組だな」

「おー! 二分の一を当てたねーレイちゃん!」


 こいつ一組かよ!まずい、毎日のようにうるさい月城が今からでも頭に浮かぶ。


 この学校はクラスが20人ほどで二組までしかない。魔道科、魔法科、魔術科と分かれているため、学年としては60人くらいだ。

 生徒全員が魔法を使えたとして60人、他にも魔道学校があるとはいえ、魔法の才を持つものが少ない事を改めて実感した。 

 周りに魔法が使える人だらけで感覚が麻痺していたようだ。


「でもさー、なんで魔道科なの? やっぱり魔法も魔術もやりたい感じ?」

「そうだな、魔法科は実践的、魔術科は理論的……だっけ? それぞれの力を伸ばすって言うけど、便利屋って色々できた方がいいだろ? そしたら魔道科で両方やったらいいかもって」

「レイちゃんは便利屋にそのまま就職するってこと?」

「いや、そこまで考えてなかったな……」


 進む先……確かに便利屋で働いて生きるのもいいかもしれない。

研究したい内容を見つけるのもありかも。まだ実感がないな。進路や、俺の王核について……学んでいくうちに見つけることは出来るだろうか。


 当面は便利屋で働いて、あの居場所を守る、それが目標だ。月城に言うのは少し恥ずかしいから口には出さない。

 それに、ゼダの件もある。魔道をいい方向に使うために、あいつから居場所を守るためには力がいる。そういう点で、魔法科も少し考えたものだ。あそこは魔法の模擬戦なんかがあるらしいし。

 

 ともかく、所長がシャスティのゼダ探しに協力すると言った以上、俺も戦えなくては話にならない。


「今はとりあえず勉強かな……」

「そっかー」

「あ、そういや俺担任の先生に先に準備室来いっていわれてたんだ」

「あー、まだ教科書受け取ってないんだっけ? 多分それだ! 重いぞー!」


 教科書を持っていくのと同時にホームルームで紹介……ってことかな。


「じゃあ俺行くわ」

「ういー! アタシが質問整理係やってあげるから安心して!」

「安心できねーよ!」


 今から不安になってきた……だが、今は準備室へ向かおう。





「準備室……ここか」

「失礼しまーす」


 教室のドアを開けると、男性がいた。恐らく担任だろう。

 窓から外を眺めていたようで、俺の声に気がつくと、空色の頭をこちらへ振り向けた。左目を隠した男だが、右目にはモノクルをつけている。


 改めて俺の姿をじっと見つめると、着ていたシャツの襟を正した。


「君がレイジくんか、初めまして、僕は、近衛誠(このえまこと)。魔道科一年一組の担任をしている」

「この前の手続きの際に顔を合わせておこうと思っていたのだが、急用ができてしまったため、ここでの挨拶となってしまった。すまない」

「いや、大丈夫ですよ! レイジです。よろしくお願いします」


 きっちりした真面目な感じの人だ。

 なぜか、俺のことを異様にじっと見つめてくる。


「あの、何か変でしょうか」

「失礼した、そんな事は無い。ただ、天草さんのところで働いているものが、二人も同時に入ってくるとは、凄い世代だと思ってな」

「二人……?」

「ん? シャスティ君とやらも便利屋に所属しているのだろう?」


 シャスティ……?あいつ学校行くなんて言ってたか!?


「それはそうなんですけど、え、あいつもいるんですか?」

「彼女は二組だがな、国からの留学生としてやってきている」

「そうなんですか!」


 留学生か、確かにおかしくは無いが、まさかこれがアルトがやった工作……?それとも普通に?


「二組には綾崎もいる。それに王女という身分はクラスの注目の的だろう。友人には困らなそうだな」


 そう言うと、近衛先生は机の上の教科書を見る。


「とりあえずこれを持っていきなさい。事前に教室に運んでおければ良かったのだが、何せ今日届いたものでな」

「はい……わかりました」


 天草さんと言っていたことや便利屋を知っていることが気になるが、所長と先生の関係については後で聞くことにした。

 大量の教科書を持って、教室を出る。結構重いな。


「そろそろホームルームだ。そこで軽く自己紹介をしてもらった後、始業式は体育館で行う」

「はい!」





「全員、席に着け。朝のホームルームを始める」


 教室に入ると、先生が全員を席につかせた。本当に人数が少ないんだな……うわ、月城がすげー笑ってる。陽樹はすげー変顔してる。


「そして、今日は編入生がいる。自己紹介、頼んだぞ」


 自己紹介!すげー緊張する…………

 持っていた教科書を教壇に置いて、心を落ち着かせる。


「はい、天野レイジです。よろしくお願いします……」


 クラスメイトが、各々よろしくと反応している。まじでなんも言えなかった!

 ちなみに天野という苗字は所長が適当に付けた。


「天野の席だが、月城の隣が空いている。知り合いだし、ちょうどいいな。あそこに座れ」


 マジかよ!絶対授業中うるさいじゃん!なんて言える訳もなく、いそいそと席へと移動する。


「いえーい、おとなりーよろー」

「なんでこんなことに……」

「ちょっと! そこは喜べよー!」


 教科書を一旦机に置いて座ると、月城が机を近づけてちょっかいをかけてくる。今後が心配だ……


「お前、授業中はそういうのやめろよ?」

「んふ、わかってるって」

「絶対分かってない……」

「始業式は9時開始だ。それぞれ遅れぬように移動するように。僕は先に向かう」


 自由時間になると、クラスメイトが席に集まってきた。


「なあなあ! どこ出身なんだ!」

「編入ってすごいよね、試験ってどうだった? 特別生ってホント?」

「月城さんとどんな関係なんだお前ェ!」


 クラスメイトの男が質問したのを皮切りに、この後、質問責めが始まった。

・魔道学校……文字通り魔道を学ぶ学校。魔法の才能が無くても入ること自体はできる。普通科は存在せず、魔道科、魔法科、魔術科と分かれており、魔法が使えないものは必然的に魔術科へと入ることとなる。それぞれ2クラス存在し、1クラスの人数は20人ほどである。

 部活の人数が足りるのか問題は実際足りていないので、チームスポーツの運動部で人の少ない代だと、他校との合同になることが多い。(近くにあるのは第二、第三学校であり、大体ここで合同になる)


 レイジ達の通う他にも魔道学校は存在し、レイジの通う学校は、「国立魔道第一学校」である。かなりランクの高い方であり、進路として、同敷地内の研究所があるのもそれに関連している。分野問わず優秀な人材が集まる。


 卒業後学年の三分の二程が研究所の方へ進む。

 研究テーマは多岐にわたり、様々な分野の専門家も集まってくるので、学校で研究の基礎とするテーマを見つけてから進むものが多い。

 最初からやりたい研究があるものは第一では無いところで学んでから研究所へと入ってくる。


 魔法生物科、魔道力学科、魔道工学科など、様々な学科を持つ学校があるが、第一は魔法能力や魔術の構築能力などに重点を置いた学校である。

 ミラは魔道力学を専攻しており、他にも独学で魔道歴史学、魔道工学にも手をだした。


・魔道大学……第一含めた魔道学校は専門学校的側面が強い。高校としての立ち位置にある魔道学校卒業後の進路に研究所があるのもそのためである。

 魔道大学も存在はするが、研究のみではなく、魔道を扱う企業への進路が多い。魔道を極める道へ進むものは、基本的に個人による研究を軸とするため、行っても高校までであることが多い。

 もちろん、大学から研究所に入るものもいる。

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