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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第二章「日常に潜む影」

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33話 魔道学校!(2)

「ここでは様々な魔道の研究を行っているんだ。世界一、とまでは言わないが、魔道研究の最先端のうちの一つだね」

「他国と比べてもトップクラスだから、卒業後に進む生徒が多いんだ」


 話を聞きながら、校長の後をついて魔道研究棟を歩いていく。

 研究棟の雰囲気は学校自体の外観と同じで、だいぶ近代的だった。病院とかと同じくらい白くて、清潔感のある棟に、広くて、吹き抜けのあるスペースや、木々の陰が気持ちよさそうな中庭などがある。


「すごい広いですよね。この学校、トップクラスの研究所ってみんなこんな感じなんですか?」

「うーん、そういう訳では無いかな。ここは元々別の機関にいた人たちが集まって出来たから、比較的新しいんだ。私も元々はそのうちの一つに所属していたんだよ」

「そうなんですか!」


 新しめのところだからこんな雰囲気なのか。じゃあもっと古風で暗い雰囲気のとこもあるのかもしれない。


「ついたよ、ここが私の研究室」

「さ! はいってはいって!」


 グイグイと押し込まれた扉の先は、なんだか難しそうな魔道の本や、様々な魔道具が散乱していた。

 一言で言えば汚部屋。


「あ……! ちょ、ちょっと待ってね。いや、いつもは片付けてるんだけどさ、最近忙しくてね……ははは」

「……分かりました」


 部屋の外で待つ間、中ではガタゴトと音が響いている。あまり待たずに音がやんだ。


「お待たせ! 改めて入ってどうぞ」

「失礼します」


 さっきまでの空き巣でも入ったかのような散らかりぶりは一切見えなくなっていた。それにしても、資料のようなものが多い。


「そういえば、校長先生は何の研究をしているんですか?」

「ふっふっふ、よく聞いてくれた! わたしの研究とはズバリ!」

「ズバリ……?」

「魔力の変換時に発生する魔力ロス、その軽減さ!」


 魔力ロス……魔道を扱う際、魔力が魔力以外のものに変換されると起きる現象。これがあるため、同じ魔力の量の攻撃でも、魔力を放出したものと、炎を発生させたものでは、前者の方が威力が高くなるのだ。


「そんなことできるんですか?」


 質問してみると、校長はよくぞ聞いてくれたとばかりに、指をパチンとならした。


「そうだね、今まで多くの魔道士がその研究を行ってきたが、目立った成果はなかった」

「でも、わたしは大昔の遺物を研究していてね。その研究から見るに、できると確信している」

「遺物……?」


 アルトが、王核は始まりの七人の遺物だと言っていたが、もしかして王核だったりして、いや、違うか。


「ああ、機械王サトウって知っているかい? 始まりの七人っていうかなーり昔の魔法使いたちなんだけど、彼の残した記録があってね」

「始まりの七人というのは聞いたことがあります」


 始まりの七人!それに関係しているってところは当たっていたようだ。


 しかし、機械王サトウ……随分昔の話だろうに、随分現代的な日本人の苗字のようだ。今俺が知っている七人は魔法士トリト、神人ギルシュ……あと結界師シルバだっけ、あと三人についても今度調べよう。


「彼は魔術の原型を作ったんだけど、魔法がうまく使えない代わりに、始まりの七人の仲間たちの魔法について熱心に研究していてね」

「最近見つかった彼の魔法研究記録では、変換元となる魔力量を同じにしたときの効果について比較したものがあったんだ」


 そうして、校長はなにかの魔道具を持ち出した。


「今では魔力量なんて、魔眼でもなければ感覚的な要素なんだけど、大昔の彼が記録できたならできると思ってね。この魔力測定器(仮)を作ったのさ!」

「え、そんなもの作ったんですか! すげぇ!」


 魔力測定器!血圧計みたいな見た目だ!アルトの魔眼のように体内の魔力量を測ったりできるのだろうか……めっちゃ気になる!


「これは試作品でね。彼の記録にある術式を解読したものをもとに、体を流れる魔力の量や巡る速度など様々なものを測定して、体内の総魔力量を計算する魔道具なんだが……使ってみるかい?」

「ぜひ!」


 すげぇ!これがあればアルトの魔眼を、みんなが持っているようにできるってことか!


「じゃあ、ここに腕入れてー……よし、じゃあやってみよう」


 校長が魔道具を、発動させると、腕をガシッと掴んだように魔道具が締め付けてくる。


「まだ、魔法が使える研究仲間くらいにしか試してないから数値にしても平均とかを出すにはデータが少ないんだけど、だいたい100が基準になるようになってるからね。120当たりを超えたら優秀だと思うよ」


 ……そういえば、俺の魔力量って凄い多いってアルトが言っていたような……どんくらいの数字がでるだろう。ワクワクする。


 すると、魔道具が動作を終了した。それを見ると校長は目を細め、数値をじっくりと見つめた。小さい声で『変だなー……』と呟いている。


「どうかしました?」

「あ、いや、えーと、機械の故障かな? すっごい数値になってて……うーん?」


 ヤバい。王核を持っているってバレちゃいけないんだよな。この人ならなんか知ってそうだし、隠さなきゃなのに、なんでこんな魔道具使っちゃったんだ、俺は!


「…………まぁ試作品だからね、すまない! だが、結構いい感じに研究は進んでいるのは本当だからね」

「大丈夫ですよ、疑ってないんで」


 あっぶね!よかったー。これが試作品で、しっかりと出来上がったものだったら危なかった……


「気を取り直して! まぁ色々あるから好きに見たまえ!」


 この後は実際に研究の手伝いをしている生徒の様子を見せてもらったり、他の研究で使っていた本を見せてもらった。どれも難しくてよく分からなかったが、校長の面白そうに話す様子から、とても楽しそうに見えた。

ミスが多く、過去話にも修正がちょくちょくあります。申し訳ないです。

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