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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第一章「始まり――魔道のある日常」

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29/63

26話 アルトさんに聞いてみよう(2/2)

 『禁忌』名前の通り、おそらくは禁じられた魔道……だとは思うが、ゼダの口ぶりから、俺の魔法が禁忌に該当するらしい。禁忌というものについて調べれば、俺の事も分かるかもしれない。


「うーん、君の魔法が禁忌と呼ばれたということだけど、禁忌と言っても幅があるからねぇ、とりあえず禁忌が何か、教えてあげよう」


 アルトは、会議室内のホワイトボードに箇条書きで色々と書き出した。


 ・特定の魔道にかけられる制限、使用すればリエンドだけでなく、魔道界全てから抹殺対象となる

 ・死者蘇生、生命の創造、世界の改変などが挙げられ、その他あまりに危険なものが指定されることもある

 ・禁忌について理論、効果など、全ての情報の伝聞を禁じられる


 「こんなもんかなぁ、もし仮に君の魔法が禁忌の場合、使ったらやばいかもねぇ」


 抹殺対象……!ゼダもこれに則って抹殺しようとしたのか?いや、そうしたらリエンドから何もアクションがないのはおかしいな。それに三つ目にある言葉……


「伝聞を禁じるんなら、悪魔式は禁忌じゃないってことか?」


たしか伝承があるんだよな。方法にバラつきがあるとしても、それを伝えていいことにはならないのではないか?


「そこは問題でねぇ、悪魔式が禁忌とされたのはつい最近なんだよね」

「界域者による外界の調査、それによってこれまで以上に悪魔式が確実に存在するとされたんだ。それで、禁忌になったんだけど、情報統制しようにも、授業とかで反映するのはすぐには出来ないし、今の君たちくらいの年齢で魔道をやっていた人間には知られすぎた話だからね。処理が追いついてないのさ」

「……なるほど」


「ともかく、禁忌についてはきちんと知っておくといいわ。あなたの魔法が該当するかはゼダの言葉だけでは断定できないけれど、これからはより一層気をつける必要がありそうね」


 美玲の言うとおりだ。今のところの発動のトリガーは俺が命の危険にさらされることだと思う。危ないことに首を突っ込んでいたら、二重に危険だ。


「ともかく、レイジの魔法について少しは進展があったようね……他に質問がある人は?」

「特にないぜ! 俺的にはかつきに聞きたいことがあるからそっちにいきてぇな!」


 ……俺個人としては、病院での件をもう少し聞きたくはあるが、あれは秘密にしなくてはならない。この場では聞けないな。


「俺もない」

「シャスティは? なにかない?」

「私? 私は…………」

「私って今後どうなるの?」

「契約はあの後解除しちゃったし、今は事情があって国には帰れないし、一体どうすればいいのか……」


 そうか、あくまでシャスティの立ち位置は便利屋に協力するリエンド側の人間だった。でも、それ自体は契約に基づいた行動で、リエンドに所属している訳でもない。彼女は今どこにも行き場がないのだ。


「それに関して、私から話そう。シャスティ君、これは提案なんだが、便利屋に入らないかい?」


 所長が優しい笑顔でシャスティに問いかける。


「……え、私が? みんなに、嘘だってついてたのに……?」

「実はゼダに関して、私も少しずつではあるが、調査しようと思っていてね。君が良ければうちと協力しないかな?」


 シャスティは自分にはそんな権利がないとでも言うように目を伏せている。……負い目を感じるのは分かるが言いたいことがある。


「シャスティ、お前はゼダを追いたいんだよな?」

「……うん」

「俺たちに嘘をついてたのも、それはその目的のためで、必要がなければ正体を隠すこともなかったか?」

「うん、実は嘘とかつくの苦手だし、貴方たちとは……仲良くなりたいと思った、し」

「じゃあいいだろ、何気にしてんだ? 俺らはなーんも気にしてないぞ。顔、上げてみろよ」


 シャスティは恐る恐るといった様子で顔をゆっくりと上げた。所長も美玲も陽樹も、そして俺も、あと聞こえてはいないだろうがついでに月城も、シャスティが仲間になることに何も問題など感じていない。便利屋メンバーがそんなことを思うわけが無い。むしろみんな新しい仲間が増えるのかと、にこやかな表情だ。


 俺だって素性がハッキリしないまま受け入れて貰えたんだ。ここはそういう場所だ。


「……いい、の?」

「ああ! だろ? みんな!」


 全員が声を揃って肯定した。シャスティの目には少し涙が溜まっている。


「ほんとは……たった数日だけど、居心地が良くて……国では王女として生活しなきゃ行けなかったから、友達も全然いなくて、普通に過ごせてるのが、とても楽しかったの。ここにいられたら、どれほど幸福なんだろうって、そう思ってた」

「みんながいいって言うんなら、私も、便利屋に入る……!」

「そうかい! よし新人ゲットだ! よろしく、シャスティ君!」

「これからは俺の後輩か! レイジ先輩って呼んでもいいぞ」

「は! そんなふうに呼ぶわけないでしょ! ただのレイジよ! あんたは!」


 んだとこいつ!さっきまでナイーブだったくせに!

 暖かい空気の場となった会議室だったが、ここでアルトが口を開いた。


「まぁ、それはほとんど決まってた、というか決定事項だったんだけどねぇ」


 水を差すような事言う人だなこの人!てかどういうことだ。


「……え?」


 シャスティもキョトンとしている。


「あれ、もしかして契約の内容しっかり見てなかったなぁ? シャスティちゃん、はいこれ契約書」


 そういってどこからか書類を取り出す。みんなで見てみると、隅の方に、裸眼ではギリギリ見える程の小さい字でなにか書いてあるのが見える。


「ええと、なお、本契約の解除時には天草勝己所長の元で、便利屋メンバーとして働くこと……先輩の許可は取ってないけど、多分行けるでしょ……ですって」


 美玲が呆れた声で朗読する。


「おい! アルト! なんだこれ! いくら後輩でも許されることと許されないことがあるだろう!」

「ごめんなさぁい先輩☆」

「こいつ!」


 所長も預かり知らぬ事だったらしく、アルトに詰め寄っている。

シャスティはというと……


「……え、じゃあ私……便利屋に入ることは絶対条件だったのに、あれこれ悩んだってこと……?」


 またもや顔が赤くなっている。初対面の時に不憫そうだと感じたのは正しかったようだ。一日に何度もこんな目にあうなんてすげぇよ。


「ま、まぁいいじゃんか! よろしくな! シャスティ!」

「稲垣に気を使われた!」


 シャスティは地面に埋まるレベルで顔を伏せている。


「……詐欺師の契約書に関しては置いておいて、最後に所長への質問に移りましょう。レイジ、ゆらの耳あて取ってあげて」

「ボク詐欺師になっちゃったぁ」


 美玲のアルトの呼び方は詐欺師となった。未だ真剣な空気に戻りきらないが、とりあえず言われた通り月城から耳あてを外す。


「うわ! もう外していーの……ってか世界ってこんなにも音に溢れてたんだ! これは新発見! 耐えたかいがあったかも!」


 割と長い時間放置されてたのに、ハチャメチャに元気だなこいつ。


「なんの話だったか気になるけどー、何となく空気的にいい事あったっぽい? まーいいや! これからしょちょーの秘密暴露会に移るってことだよね!」

「その恐ろしい名前の会については触れないでおくが、一旦休憩にしないかい? 色々な情報だらけで頭が疲れただろう」

「そうね、ちょっと考えたいこともあるし、休憩しましょうか。い十分、いや三十分休憩にしましょうか」


 美玲の提案にみんなも納得して、各々がくつろぎ始める。座り続けるのも疲れたし、凝り固まった体を動かしてほぐす。


「えー、秘密暴露会をずーっと待ってたのにー! じゃあレイちゃん構ってよー!」

「や! だ! 俺も一応病み上がりなんだよ! 休憩させろ! 陽樹にでも構ってもらえ!」


 体を揺らすな!なんでこいつ俺にだけだる絡みしてくんだよ!陽樹には雑なのに!


「お、じゃあゆら! あっち向いてホイでもやるか!」


 そう言って陽樹はジャンケンを繰り出す構えをとる。なにかオーラが見えるようだ。


「やーりーまーせーんー! 陽樹と違って子供じゃないし! 一人でやりなよ!」

「一人じゃできねぇよ! あと俺と違ってってなんだよ!」


 くそ!陽樹にまわしたのは間違いだった!うるさいコンビが覚醒する……!美玲に助けを求めるか……?

 そう思って美玲の方を向くと、前とは違ってしっかり使いこなせるようになったスマホでなにか調べ物をしているようだ。イヤホンまでしている。

 チラリとこちらを向いたが、目で話しかけるなと訴えかけてくる。面倒に巻き込まれたくないらしい、イヤホンしてるのは、こうなることを予測していたのか!


 所長……は当てにならないし、アルトは論外、それに二人ともなにか話をしているようだ。シャスティはさっきまでの顔の赤みは引いて、落ち着いた様子だ

「……シャスティ、助けてくれ」

「なに、あんたが自分で蒔いた種でしょ……あの二人っていつもこうなの?」


 そういえばシャスティは月城とは今日が初対面か、聞かれた通り、普段の様子を思い出す……


「ああ、月城って結構陽樹の扱いが雑なんだよ。この前なんか、わざわざ陽樹のプリンを目の前で狙って食べてたし」

「そうなんだ……いや、え、もしかしたらかまって欲しいとかあるんじゃないの? 好きだからつい意地悪しちゃう! 的な!」


 シャスティが突然早口になった。コイツ恋バナ好きなのか。


「いやぁ、ないだろー、それ言ったら俺も意味不明な絡みされてるんだけど、一体なんなんだよ」

「……! もしかしたら、かまって欲しいってのはあるけど、実はレイジが本命で、稲垣になにかけしかけることで、誤魔化してるとか!」


 こいつの推理能力は恋愛に振り切ってんのか!悪魔式に関しては鋭い指摘をしてた気もするが、あれは演技によるたまものだったのか?てか、推理っていうか妄想だな!


「ないない。面白がってるだけだろ」

「えー? そうかなぁ? あ、もしかしてレイジ、別に本命が……!」

「ちょっと待て! 全部恋愛に繋げんな! 頭真っピンクか!」

「頭真っピンクってなによ! ワンチャンあるでしょ! ワンチャン!」


 ためだ!こいつも平穏枠になり得ない!誰か助けてくれ!

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