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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第一章「始まり――魔道のある日常」

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15話 怪しげな男

 俺が担当した依頼主が色々な証拠から見て現状何かを知っている可能性が高いと睨んだ俺たちは、俺と美玲筆頭に、依頼主の調査をすることになった。今日は実行日、依頼を担当していた俺と美玲が、依頼主の家に入り込み、陽樹、シャスティは外で待機、所長は別で行動する。


「よし、着いたわね。準備はいい?」

「おう、これはただの機械の無線なんだよな」

「そうね、魔力感知に引っかからないためにね」


 小型の無線機で待機組もそれぞれ応答する。魔道具では魔力感知に引っかかる可能性があるため、念の為だ。


「じゃあ、いくわよ……」


 家のベルを鳴らす。昨日作戦が立ってすぐに、この前の依頼に不手際があったと連絡を入れた。すると、すぐに返事が届き、空いている日程があるとの事で約束を取りつけることができたのだ。

 ベルを鳴らしてから数十秒、依頼主が扉を開ける。


「どうぞ、お入りください」

「申し訳ございません。こちら側の不手際ですので、すぐに終わらせます」


 こうして、俺と美玲はあっさりと家に侵入できた。


『……外に異常ないぜ』

『こちらも異常ないです』


 待機組からも報告が入る。俺たちを閉じ込めて何か起こそうとする可能性は今のところないか。

 すぐに、この前修復した術式の元へ着く。ここからが勝負だ。不具合を直すように演技しなくては。


「では、作業に取り掛かりますね」


 俺が直すフリをしている間に美玲が何気ない会話から、事件に関する話に繋げていく。


「今回はお手数お掛けしてしまい、本当に申し訳ないです」

「気にする事はない。人間にミスはつきものだ」

「そう言って貰えると幸いです……」


 話が上手く、だんだんとこの辺りで起こった事件についての話になっていく。


「本当に物騒ですよね。お客様のまわりで何かおかしな事などはなかったですか?」

「なにもない。さっきから出てくる事件についても初耳だ」

「そうなんですか。気をつけてくださいね……何でもあの悪魔式なんじゃないかって言われているらしいので」


 依頼主の様子が少し変わった気がする。作業する背後から不穏な空気を感じる。


「悪魔式とは?」


 空気は変わらない。そろそろ嘘の情報を出す頃だろうか


「あれですよ。ベルディオの悪魔式。リエンドの特務班がその可能性があるって言っているという噂を聞きまして」


 リエンドの特務班、魔道士内ではかなりの確率で存在すると言われているが、噂でしかないものである。軍の暗部とか、そんな感じの組織らしい。


「リエンド、全くどこから流れた噂か。かの特務班が動いていたとして、そんな情報が外部に漏れるか」


「うちは便利屋なので色々な情報が入ってくるんですよ」

「そうそう、ここだけの話なんですが」

「進化の魔石が使われているらしくてですね。リエンドが解明まであと一歩までだとか……」


 解明まであと一歩という時点で、美玲の話を聞いていた依頼主が突然笑いだした。


「…………クク、なんとも、面白いことを言う。あれが解明される手前だと! ククク! 特務班が動いているとかいう話の時点で、嘘でしかないと言うのに……! ククククク!」

「……どういうことでしょう?」

「ああ、もう芝居はいいぞ。そこの男も直すフリをやめろ」


 雰囲気がさらに異なる。もともとの、人形のように生気が感じられなかった様子が、まるで命が吹き込まれたように生き生きとしている。


「大体の検討をつけてここに来たのだろう? まぁ、そうなるように仕向けたのだから当然だがな」


 ……!やっぱりクロだったのか!口ぶり的に関係者どころか一連の黒幕の可能性もある。


「しかし、こうして見れば誤算の多い計画だったな。どうだ、真実を聞くつもりはあるか?」

「……正直に全部話すつもりはあるのかしら」


 相手の出方が分からない以上、下手に動けない。外の二人もまだ侵入するタイミングを伺っている。


「ああ、話してやるとも。かなり気分が良いからな。質問にするか? それとも全部話してやろうか」


 得体がしれない。余裕がある。恐ろしいと感じる。


「安心しろ。これはただの厚意と受け取れ。魔道具で制限してもよい、なんなら契約したって構わん」

「……そうね、そこまで言うなら話してもらおうかしら。この魔石事件の全貌について」

「質問は最後にしろよ? そうだな……まず、ベルディオの悪魔式を発動しようとしているという点、正解だ。あれは実在した術式、再現する価値がある。」


 実在していた……悪魔とやらを呼び出す術はただの伝承ではなかったのか。


「次にこれもおおよそ分かっているのだろう? 生贄は魔力を持たない人間、それを魔道で殺すことで、贄としての役割を成す」

「次に誤算だが……まず生贄に使った魔石だが、予想以上にいい魔石だったのか、実験体の一体が想定以上の魔力を欲したことだな。そのせいで点の位置関係がズレた。」


 路地裏のマンイーターのことだ。


「わざわざ人間の肉塊を用意して、移動しないよう縛りまでつけたというのに」

「それに隠れやすい物が多かったからか、一ヶ月ものうのうと逃げてみせた。廃墟に住み込んで野良猫だのを食らっていたな。さらに、あいつらは進化していくと、そのうち魔力以外の血肉を必要とする。一つ発見だな」

「だから、レイジ、お前に術式を付与した。マンイーターをあの空き地の近くに誘導することは分かっていたからな」


 本当に誘導していた……? しかも俺たちがあの空き地の近くに行くことが分かっていたのか?


「では、誤算その二、それこそお前だ、レイジ。お前の出現によって排除命令を実行しなくてはいけなくなった。だから同時進行で片付けてしまおうと思ったんだが、失敗したな」


 ……俺の排除命令?


「まぁざっとこんなもんか? 質問はあるか?」

「多すぎて困るのだけれど、とりあえず、悪魔式で悪魔を召喚して何するつもり?」

「そうだな。ふむ、単純に悪魔を呼んでみようと思ってな」


 依頼主はさも当然のことのように言う。


「……そう、次に、進化の魔石によってマンイーターを生み出したのはどうして?」

「マンイーター……そう呼んでいるのか、人を食らっていたからか。……それは実験だな。詳細は話せん。契約でな」

「じゃあ、どうやって私たちにマンイーターを誘導させたの?」

「それは、別の協力者のおかげだな。これも詳細は話せない。契約でな」

「最後に、レイジの排除命令ってなに。どこから?」

「名前の通り、それ以上は話せん」


 契約とやらで話せないこと以外すべて正直に答えている……答えてはいるものの、不明点が多すぎる。

 美玲もまともな情報を引き出せないと考えたのか、質問をやめた。


「質問は終わりだな。じゃあ、お引き取り願えるか?」

「そんなわけないでしょう。捕まえるわよ。あなたを」

「そうだな! まぁいい捕まえられるのなら、捕まえるといい」


 ふと、周囲の違和感が危険を知らせる本能に切り替わる。なにか魔力を発動させようとしている!


「二人とも!」

「おうよ! やっときた!」

「……任せてください」


 陽樹は壁をぶち破ってきた。シャスティは窓を割ってはいってくる。


「いいぞ! 4対1か! とりあえず!」


 屋敷中から人形が集まってくる。狙いは、俺だ!

 人形が数体で突進してくる。速い!


「ッ!」


 突進を受ける。衝撃で外へ吹っ飛ぶ。所長が何とかすると言っていた通り、俺にはなにか凄い魔道が使われているらしい。痛みはまるでない。しかし、


「んな!」


 穴が完全に塞がれ、中に入れなくなる。俺だけ追い出された!

 俺にも役目があったのに……!


「大丈夫か! みんな!」


 早く戻らなくては……!

・リエンドの特務班……美玲が依頼主を釣るためについた嘘で出てきた。リエンドの噂(怪談的な話)にあるリエンド特務班というものを利用した。噂と言っても、ほとんどの魔道士は存在を確信している。なぜならば、リエンド自体が古くから存在しており、かつては魔道を用いた戦争にも多く関与していたからである。


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