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オルトレイジ  作者: 立木ヌエ
第一章「始まり――魔道のある日常」

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14話 つながる点  / かくしごと

つながる点



 俺達が事務所に戻ると、全員が戻ってきていたようだ。

 陽樹達の見つけた事件、シャスティの予想、そして俺達の依頼主が怪しいという情報をすり合わせる。


「なるほど、どちらもよく見つけてきてくれた。私の持ってきた情報も役立ちそうだ」

「私はこの件の依頼主の元へ行ってきた。ちょっと前から私の金で研究を再開してもらっていてね。」

「その結果、ラーメン屋のマンイーターが変異した時期というのが、およそ一ヶ月前だとわかった」

「一ヶ月ってことは……!」


 陽樹達の言っていた、行方不明者が出たタイミング!


「つまり、ラーメン屋のマンイーターは、本当は路地裏の地点の生贄だったってことね」

「そこで、何らかのトラブル発生! 一ヶ月近く見つからないまま、あの日ラーメン屋に現れたってことだよな!」


 トラブルがどのようなものだったのか、魔石をなぜ埋め込んだのかという点を除けば全ての点が繋がった。

 それならばこの後は……


「では、次の行動は依頼主の元へGO! ですかね?」

「うん、まだ、依頼主が黒幕と確定は出来ないが、何か知っていることは確かだ。とりあえず、依頼主と面識のある二人が処置に不適切があったとでも言って、中に入り、問い詰める。レイジ君の安全については私がなんとかしよう。陽樹とテリムさんは、外で待機してもらう」


 全員が了承し、決行は後日となった。





「にしても、一か月前……ね」


 メンバーの解散後、誰も残っていない暗い事務所で、天草は一人物憂げな表情をしていた。


「偶然……とは思えないな」


 一か月前……特殊なマンイーターが生じたタイミング、それはレイジがうちに来た時期と重なっている。彼の特異性はそこらの魔道士と比べるまでもない。まわりのだれも、美玲ですら気づいていないことがある。かく言う自分も、この前病院で知ったことなのだが、


「王核……」


 かの少年にある特異性、物を灰にする魔法、この話を聞いた時点で少しあたりはついていた。病院での検査時に念入りに調べた結果、僕のできる全力でようやく一端を掴めた。通常の魔法使いには、心臓近くに、魔力核と呼ばれる魔力の心臓と呼べる器官が存在する。魔力の循環、体内回路の構築機能を持った魔力核は、魔法使いにとっての命同然の代物である。

 なかでも、王核は、()()()()()()の魔力核とされる遺物である。三つを除き所在は不明であったが、四つ目がこんなところにあると知っては、魔道界が騒ぎ出すだろう。


「とりあえず、内緒にしとくかな。今はマンイーターだ。レイジ君に渡したあれが上手く働くといいが」


 ここで、そんなビッグニュースを暴露する訳にはいかない。僕には僕の目的がある。そのためなら、例えどんなことだってしてみせよう。



かくしごと



「あー、危なかった」


 今日は本当に危なかったー。危うくボロが出るとこだった。あの男の子が鈍くて助かった。

 まだ、私の正体を明かすことは出来ない。そのような契約だからどうしようもない。もしもバレてしまえば、どうなる事か。


「でも、隠し通すのって、ほんっとダルい。なんでこんな面倒なことさせられてるの、私」


 今思えば意味不明な条件だ。正体を隠して便利屋を手伝えだなんて、隠す意味がどこにあるの?そういう趣味?面白そうだから的な?

 どうしたってまだ隠し通さなければいけないことに変わりは無い。この事件の黒幕がしっぽを出すまで、意地でも私は、シャスティ・テリムなのだ。


「あー、今日も頑張りましょう! なんか、トーンが低いか? 頑張り、頑張りましょう! あーわかんない、今日は寝る! 明日は明日の私が何とかするでしょ」


 演技練習を明日の自分に丸投げしたところで、結局苦しむのはまた自分なのだが、連日慣れないキャラクターを演じた疲れがあるし、とっとと眠りたい。

 そう思いつつ、しばらくスマホをいじってから、少女は眠りについた。


・王核……現在正体不明。ただし、魔法使いの体内(心臓近く)には魔力核と呼ばれる魔力器官が存在する。同じ核の字を用いることに関係があるかもしれない。

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