4 拒絶
「やっと外か」
ようやく外に辿り着いた。
ゴブリン部隊と邂逅してから拷問時間を合わせると3時間ぐらいか?
時計画面があれば良かったが、こんなところで不便さがでるとは。
外はまだ日が出ているのか、明るい―――
「おかしくないか?周りは森でダンジョンの入口はほとんど日が当たって無かったはずだ」
そうだ。
日が出ているのはおかしい。
入口には、木が覆いかぶさっていたからだ。
もしかして地形が変わっているのか?
それとも別の入口に繋がっているのか?
どうすべきか。
いや、どのみち出ることには変わりないのだが。
はぁ、周辺の勢力やこの世界についての情報を集めることに集中し過ぎてしまった。
肝心のダンジョンの外について聞くのを忘れた。
やっぱり俺は、少し抜けているところがあるな。
まぁ、ゴブリン部隊を殺した時点で遅かれ早かれここら一帯を治めているゴブリンの親玉には気付かれるだろう。
敵対は免れない、のかな?
俺にできることはプレイヤーでないことを祈るぐらいだ。
「ふぅー、行くか」
ここに居ても暗くなるだけだ。
それなら明るいうちに周りを把握しておこう。
意を決して外に出た。
「これは……」
外に広がっていたのは絶景だった。
どこまでも広がる世界。
大空を羽ばたく鳥たち。
少し離れたところにある集落。
大陸を分けるように流れる川。
「爽快だ……」
ダンジョンの入口は山道の途中に繋がっていたらしい。
別に疲れてはいないが、疲労感は溜まっていた俺の体を気持ちの良い冷たい風で癒された。
視界の隅に集落があるが、人間の国でいうところの村だろうか。
隊長の情報によるとここら一帯、川の内側まではゴブリンの親玉が支配しているらしい。
つまり、ここは辺境のゴブリン村だろう。
そして川を渡って向かい側の土地は、人間の国が広がっていると。
どうしようか。
俺のアバター、今の身体は人類種だからゴブリン王国よりも人間の国の方が暮らしやすいだろう。
うん、人間の国に行こうか。
道中でゴブリン狩りしながら宿代やら何やらを稼ぐとしよう。
今の時間帯は丁度、日が真上にあるから正午あたりか?
歩いて行ったら野宿確定だな。
まぁ、それならそれで観光しながら向かうとするか。
その後は、特に何も起こらず日が暮れるまでのんびりと川の方まで向かった。
道中、部隊ほどではないが装備が整ったゴブリンの群れに遭遇した。
まぁ、問題無く対処できたが。
ああ見えて隊長たちはゴブリンの中で優秀な方だったらしい。
戦闘は対して面白くなかったが、ドロップアイテムを回収できただけましと考えよう。
そうこうしている内に目的の川まで辿り着いた。
着いたんだが―――
水弾、土弾、氷槍、風刃。
対岸から大量の魔法を浴びせられた。
耐性スキルのおかげで全くといって良いほどダメージは効いていない。
というか耐性スキルであって無敵化スキルじゃないのに無傷とはこれ一体。
彼らともレベル差が開いているということだろうか。
それにこちらとあちら側の岸はかなり離れている。
<索敵>の範囲外にもかかわらず、どうして気付いたのだろうか。
それに魔法の射程距離も信じられない。
上級魔法レベル以上の射程距離だ。
まだ俺の知らないことは沢山あるらしい。
はぁ、隊長は役に立たなかったな。
まぁ、スキルの考察はこれぐらいにして彼らが攻撃してきた理由について考えるか。
恐らくゴブリンと見間違えたんだと思うが。
少し腹立たしいが、距離が離れているんだ。
見間違えるのも無理は―――
「鬱陶しい!」
再度、魔法を放たれた。
一度は見逃したが、懲らしめる必要があるだろう。
俺は同じ種族だからといって贔屓などしない。
命の重さは平等だからな。
迫りくる魔法目掛けて腰を落として剣を構える。
ゼロ距離で魔力を込めた剣を鞘から押し出し魔法を弾き返すイメージをする。
「『リフレクト・エッジ』」
多種多様な魔法が合わさって1つの塊のような物になっていたのでそれを古代スポーツの野球みたいに弾き返した。
対岸から悲鳴が聞こえてきた。
うん、上手く行ったらしいな。
はぁ、それにしても当てが外れた。
人間の国に行こうと思ったが、渡る手段が無い。
橋か船でもあるかと思ってた……。
これなら<飛行>を取っておけばよかった……。
どうにかしてスキルポイント振りができるようにならないとな。
現状、渡る手段が無いならここに居ても仕方が無い。
ひとまず、離れるか。
はぁ、鬱だ……。