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第三話 魔法訓練

 魔法学園のクラス分けというのは、基本的に学期末に行われる魔法測定による。三年間でクラスが上がったり下がったりすることももちろんあるが、大体は三年間変わらない。


 そして大抵、上がった人たちというのはクラス同士の違いに驚くものだ。授業体制から大きく違うし、人数も異なる。


 Eクラスは6時間授業があり、魔法の実践よりかは理論的な内容を学ぶことが多い。座学で様々なことを学ぶため、研究職も多い。


 Dクラスも6時間授業だが、Eクラスより実践が多い。操作性を高める訓練のため、瞳の色が重要視されていた気がしなくもない。


 Cクラスは授業時間が午前のみで、午後は実践も更に増える。そして精霊との交流が増え、魔法使いとよばれる役職の人たちのほとんどはここにいる。


 Bクラスはほとんどすべての時間が実践的な訓練になる。登校日数がほとんどなくなり、対戦や実技ばかりやらされる。


 Aクラスは……登校するもしないも自由、何をしてもいいし、個人で任務に出るひともいる。そのため在籍する必要がないと判断すると辞める人も多い。


 私は個人で任務を受けるタイプだった。私はここに家族がいない。学園にいる間は身元も保証されるが、そのあとも保護を受けることになったら面倒だ。


 だからアルバイト感覚で魔法の練習を兼ねて任務をすることが多かった。


 久しぶりだし、まずは練習の練習をするべきかもしれない。飛行はすんなり上手くいったが、攻撃魔法となると話は別だ。以前、回復魔法は序章までしか学んでいなかったし、そういうところも含めて新しい魔法の研究もしよう。


 そう決めて、私は本を閉じて席から立ち上がった。先ほどの通り、Aクラスには授業がない。学校がやっている時間なら、好きに設備を使える。


 魔法訓練場も、今なら開いているだろう。


 廊下を歩いていると、授業中ということもあって静かだ。校舎内は少しずつ綺麗になっているらしく、以前の面影は徐々に消えていっている。


 どこか寂しいような、安心したような、変な気分になる。二年も経てば、変わるものだ。


 校舎も、人も。


「まずは精霊に関してー……」


 間延びした教師の声がして、足を止める。魔法訓練場の一角を、Dクラスの生徒が使っているようだ。授業なのだろう。生徒の数の割りに静かだ。


 まぁ、静かなら別に構わない。私も片隅を使わせてもらおう。


 そう考えて、訓練場に入ると、教師がこちらを振り返った。


「君は……」


 この見た目を見れば、私がティーナ・エフェクターだということは一目瞭然だ。わざわざ騒ぎなおす必要はないだろう。


「授業中失礼します、少しだけ使わせてもらいますね」


「あ、あぁ」


 目の前から的が下りてくる。まずは得意だった氷魔法の練習から始めるとしよう。


 右手に杖を持ち、頭の中につららを思い浮かべる。水をぎゅっと固めて、鋭く、速く。


 形成されていく氷は、現実のものへと姿を変える。


 杖をまっすぐ前に向けると、氷の粒が的を目掛けて飛ぶ。もっと早く、正確に。


 バババッ!と、音がして的に氷が突き刺さる。スピードは以前よりはやはり遅くなっている。0.01秒の差でも、実践になれば大きく変わることがある。


 さて、スピードを上げるためには操作力の出力の上げ方を変えないと……


「すごい……これが、ティーナ・エフェクターなんですね」


 突如、拍手に包まれた。驚いて振り返ると、先ほどまで授業に集中していたはずの生徒たちと先生がこちらを見ている。


「ぜひこの子たちに……いや!私自身に教えてはくれませんかね!」


「えっ……」


 ギラギラとした視線が突き刺さる。羨望、畏怖、尊敬、嫉妬。色々なものが入り混じっているのがすぐにわかる。


 頭の中に声が響きはじめ、咄嗟に耳を塞ぐ。


 ダメ、だめだ。一回深呼吸をしよう。大丈夫、何もかもは変わって言っている。


「嫌です」


「そんな……」


「お前らに教えても無駄だもん。鏡で見ればそんなの私に聞くまでもないでしょ?身の丈に合った方法で練習したほうが幾何かマシになるんじゃない?」


 そう並べたて、足をわざと大きく踏み鳴らしながら外へ出る。


「あの女神のような、ティーナはどこに行ったんだ……」


 そんな声が聞こえてきて、体が熱くなる。女神のような、ティーナ。


 それは、私が殺した。お前たちが殺した。


 今の私は、冷酷で、毒舌で、人の気持ちなんて考えることもしないような最低な人間だ。


「……あーあ」


 どこで魔法の練習をしたらいいんだろう。


 どこに行ったって、目立つだけだ。一々対処するのも楽ではない。今日はもう、寮に帰ろうかな。なんだか嫌な気持ちになってしまった。


「……でも、まぁ……魔法はそこまで衰えてなさそうかな」


 明日から早速任務を受けてみよう。例えば、そうだな……


「ねぇ、なんか私に文句でもあるの?」


 そう言って、私は勢いよく杖から氷の弾丸を発射する。


 こういう面倒な人間には、力を見せつけるのが一番手っ取り早い。


 こそこそと後ろを付けてきた人間を処理してからでも、任務は遅くない。


「いったぁ……もう、ひどいなぁ。ティーナ」


「え……」

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