プロローグ
2018年11月に、某小説投稿サイトにて掲載したものです。
毎日更新いたします。
電子書籍版も出版されています。
下記のURLから閲覧できますので、気になった方は是非
表紙だけでもご覧ください。
宜しくお願い致します。
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冷たい
頬を伝う一筋の滴
寒い……
日はもうとっくに暮れていて、あたりは既に真っ暗になってしまっている。
深闇な寒空の下、わたしは公園のベンチでただひとりポツンと、横たわるように座っている。
いつからこうしていただろうか。ずっとこうしているせいで、身体は芯まで冷えてしまい、動けなくなってしまう。
かじかむ手。
震える唇。
気力のない身体。
あたりを見渡しても、その公園にはわたし以外に誰もいない。このままでいれば、どうなってしまうかなんて誰でも容易に想像できるだろう。……そんな当たり前のことですら気が付かないほどに、今のわたしは疲弊しきってしまっていた。というか、もうどうでもいい。
先ほどまで流していた涙はとうに枯れている。
手足はもう動かない。
動こうとする気力すらない。
生きようとする意志すら、すっかり枯れてしまっている。
ぽつり
……涙はもう枯れている。そのはずなのに、頬に当たるこの感触はなんなのだろう。
かじかむ手をゆっくりと頬へと伸ばす。濡れた感覚はすでになく、もうすっかり乾いている。その手にポツリと当たるもう一粒の滴。
雨だろうか。いや違う。
かろうじて動く目を開け、視線を上へと向ける。
薄ぼんやりと見えたのは、長らく忘れていたモノ。いや、ずっとそばにいたのに気が付かなかった。私を支えてくれた、大切なその人のあたたかな涙だった。
その人は、冷え切ってしまったわたしの手を、両手で優しく包みこんでくれる。じんわりと感じる人肌のぬくもり。
安堵を感じ、枯れたはずの涙をはらりと流し、ゆっくりと目を閉じていき、徐々に意識を手放していった……。
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