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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
エターナル・マザー編
98/250

ダーク・ナイツ戦(1)


闘技場



一回戦目はとどこおりなく終わり、二回戦目が開始されようとしていた。


二回戦目の第一試合は"ナイトガイ"対"ダークナイツ"だ。

ナイトガイは最初に話し合ったようにローラ、ガイ、エリザヴェートの順番で出る。


3人は試合の待合室から繋がる通路を通ってステージを目指した。

通路は二手に分かれており、北と南と向かい合わせの出口に通じている。

ガイ、ローラ、エリザヴェートは光が差し込む出口を抜けると大きな歓声が上がった。

本戦ともあってか予選と違って観客席は埋め尽くされていた。

これがこの町で最も人の集まる娯楽と言っても過言ではない。


緊張感の増したガイとローラは深呼吸して自身を落ち着かせる。

一方、2人の背後に立つエリザヴェートは相変わらず長い黒髪によって顔が見えず何を考えてるのかわからなかった。



ステージは石造りこそ変わらないが、真ん中に大きく一つだけ設置され直されていた。

恐らく土の波動の使い手が作ったものなのだろう。


南側から入ったナイトガイのメンバーに向かい合うようにして、ダークナイツのメンバーたちも入場する。

ナイトガイ以上の凄まじい歓声が上がった。


軽装の鎧を纏った大男と民族衣装の女性。

そして黒い鎧と赤いマントが印象的な男だ。

3人を見る限り、緊張感など一切感じさせない堂々たる歩みにガイとローラの表情は強張る。


「場慣れしすぎでしょ」


「俺たちは一回しか試合してないからな……」


ラッキーとも言うべき本戦出場ではあったが、少なからずデメリットもあった。

だが、それを今考えている暇などない。

もう試合は始まろうとしていた。


「じゃあ、行ってくるわ」


「ああ」


「……が、が、が、頑張って」


エリザの言葉に頷き、ローラはゆっくりと石階段を上がってステージへと向かう。

この時、思うことはただ一つ。

先鋒がルガーラであってほしいということだった。

もし自分が負けても、ガイは他の2人には引けを取らないだとろうとのローラの期待があったのだ。

ガイが勝てば大将戦になり、エリザヴェートが勝って三回戦へいける。


だが、その思い虚しく、ステージの中央に来た人物は自分が望んだ相手ではなかった。


「あら、あなたが先鋒?」


「え、ええ」


露出度の高い民族衣装を着た褐色肌の女性。

ルガーラから"ミレーヌ"と呼ばれていた人物。

この時点で相手チームの構成は決まった。

ミレーヌ、ルガーラ、大男の順番だ。


「手加減できないわよ」


「こっちだって負けてやるつもりはないわ」


ローラは腰に差したレイピアを鞘から引き抜くと片手で持って前に構えた。

一方、ミレーヌが腰から取り出したの皮でできた長い"鞭"だった。


女学校時代、剣術の成績はよかった。

だが、それはあくまでも剣同士の戦いにおいてだ。

異なる武器相手の授業なんてものは無い。


「短剣とかだと思ったけど、まさか"ウィップ"なんて」


「使ってみるとなかなか面白いのよ」


ニコリと笑うミレーヌ。

しかし目は全く笑っていない。

必ず相手を屈服させる……そんな鋭い眼差しだと感じた。


そんなやりとりの中、向かい合う2人の間に審判が入る。


「波動の使用は禁止だ。使ってしまったら即失格だから気をつけるように。相手を死なせてしまった場合はチームごと失格になるからそのつもりで」


お互いの姿を確認しつつ、最初から決まった言葉でルールを述べる審判。


ローラとミレーヌはどちらも審判には目もくれず、相手から視線を逸らさない。


「ルールは以上だ。では二人とも位置へ」


二人は少し後ずさるように距離を取る。

15メートルほどといったところか。

ローラにとってはワンステップのダッシュだとギリギリ間合いには届かないような位置だった。


そして遂にその時が来る。


「では始め!!」


合図と共に観客席から歓声が高まった。


先に前に出たのはローラだった。

逆にミレーヌは全く動かず、片手に持った鞭を地面に垂らす。

鞭の長さは3メールといったところ。


ローラがおこなったのは高速の突き攻撃だ。


「あら、思ったよりも早いわね」


ミレーヌがそう言うと鞭を持った右手を少しだけ上げた。

そして瞬時に手首をスナップさせて鞭を波うたせる。

バチン!と甲高い音は凄まじいスピードで地面に鞭が当たったものだろう。

しなる鞭の先端は意志を持ったかのように、ローラのレイピアを下から突き上げた。


前に重心があったローラだが、あまりの衝撃にバンザイする形で仰け反った。


「なに!?」


相手のシャープな動きからは想像ができないほどの強さ。

力強い打撃にも似た衝撃に驚きを隠せなかった。


「案外パワーもあるのよ」


ミレーヌは頭上で右手を一回転させて、鞭を右から左へと薙ぎ払う。

狙い目はローラの首元のようだ。


だがローラは相手の腕の動きから鞭の向かう場所を予測していた。

すぐに体勢を低くして、鞭の遠距離攻撃を回避し、すぐに前にダッシュした。


「なんて反応!!」


次に驚かされたのはミレーヌの方だ。

距離にして数メートルに迫るローラ。

レイピアの突きは確実に彼女を捉える。


「もらったぁ!!」


しかし、ミレーヌの動きにはまだ続きがあった。

その体にぐるぐると鞭が巻きつく。

同時に体も回転させてローラのレイピアの刃先へ向けて回し蹴りを放った。


ローラの体は横に流れる。

同時にミレーヌの体に巻きついた鞭は遠心力で逆にぐるぐると離れていく。

そして勢いづいた鞭の先端がローラの肩へ直撃した。


「ぐぁ!!」


これも凄まじい高音を響かせ、ローラの体をいとも簡単に吹き飛ばすと、地面を何度も転がる。

ローラはそのまま立てずに気を失った。


「勝者はダークナイツのミレーヌ!!」


審判が叫ぶと歓声が飛んだ。

この敗北はナイトガイにとっては大きな痛手だった。

次の試合はガイ対ルガーラ。

相手は戦闘の天才であると思われる人物だったからだ。

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