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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
エターナル・マザー編
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アカデミアへ


メイアとクロードはセントラル・アカデミアに到着した。


夕刻、門の前に立つ2人。

メイアは感動のあまり、今にも泣き出しそうだ。

ずっと村娘として静かに暮らすのだと思っていた自分が、まさか夢にまで見た場所に足を踏み入れることになるとは思いもよらなかった。


門を潜ると大きな庭園が広がる。

いたる所にベンチが置かれ、学生や研究者たちが本を読んだり雑談したりしていた。


門からアカデミアの玄関口までは、数百メートルはあった。

学生や研究者たちは2人の姿を一瞥いちべつするとすぐに自分たちの"世界"へと戻る。

冒険者などは彼らにとっては興味の範疇外だったのだ。


2人は建物の前に来た。

アカデミアは四階まであり、Uの字を描くように建てられる。

貴族の屋敷も比にならぬほどの大きな建物だ。

玄関先には雨避けなのかアーケードが設けられていて、2本の柱の前には緊張の表情を浮かべる2人の男性騎士が立っていた。


「なんだ貴様らは」


「ここは許可無く入ることはできん」


その騎士の発言にメイアがハッとした。

少し前にクロードが言った言葉が思い起こされる。


"アカデミアに入るには貴族の紹介が必要"


メイアは貴族になんて知り合いはいない。

そのことをが頭をよぎると途端に表情を暗くした。

だが、それに構うことなくクロードが一歩前に出る。


「貴族の紹介状があるんだが」


「なんだと?」


クロードはボロマントの中に手を入れてゴソゴソと何かを取り出した。

それは一枚の封筒に入った手紙だった。


「リリアン・ラズゥからの紹介だ」


その言葉に2人の騎士は顔を見合わせた。


「ありえん……」


「ラズゥ家だと……」


それだけ言って口籠る2人の騎士。

ラズゥ家と言えば名家だ。

失礼なことがあれば、自分たちの首が飛びかねない。

騎士たちは一気に焦り出した。


その姿を見たクロードはニヤリと笑ったが、すぐに背後から女性の声がする。


「私は、そんな紹介状を書いた覚えはないがな」


振り向くと、そこにいたのはリリアン・ラズゥ本人だった。

ため息混じりの呆れ顔だ。


「貴様!たばかりおって!」


「許さん!!」


血走った目でクロードへ向かう2人の騎士だったが、すぐにリリアンが止めた。


「待て、彼らは私の部下だ。"例の件"で来てもらってる」


「え?リリアン団長がそう仰るのであれば……」


「迷惑かけるわね」


リリアンを先頭として、メイアとクロードはアカデミアへと入る。

玄関は大きく円形状の広間になっており、通路が右と左、二手に分かれるようになっていた。

正面には二階に上がるための階段もある。

場所が場所だけに、通る人の数は多かった。


リリアンが中央で止まりクロードとメイアの方を呆れた様子で見た。

だが、先に口を開いたのはクロードだった。


「"例の件"とは?」


「数日前に、この町の留置所から脱走した囚人の捜索だ」


「脱走?」


「ああ。王都に呼び出されて、戻る途中にこの話があったんだ。第五騎士団を手伝って欲しいとね」


「なるほど」


「それより、お前たちは何故ここにいるんだ?」


「見ての通りさ。アカデミア見学。メイアが来たがっていたから」


「それだけの理由にしては、かなり強引に入ろうとしていた気がするが」


「勘繰りすぎだ。僕はメイアの願いを叶えてあげたかっただけさ」


そう言いながらクロードは持っていた封筒を握りつぶす。

メイアは申し訳なさそうに俯いていた。

その姿を見たリリアンが笑みを浮かべる。


「フィラルクスの一件ではメイアには助けられた。恩は返さねばな。私が紹介状を書こう」


「え……」


「何日滞在するかにもよるが、このアカデミアの裏に学校がある。そこに体験入学でもしてきたらいい」


「ほ、本当ですか!」


メイアの表情が一転してパッと明るくなった。


「かなり優秀な者しかいないと聞く。生半可な気持ちでは他の生徒の迷惑になる。大丈夫か?」


「メイアなら大丈夫さ。僕が出会った冒険者の中でも特に優秀だ」


「クロードさん、それは褒めすぎです……」


顔を赤らめるメイアだが、それにはリリアンも同意だった。


「そういえばガイはどうした?」


「コロセウムさ」


「そう……」


リリアンは残念そうな表情をした。


「それより気になったんだが、君は本当に囚人捜索の任務のためだけにこの町に来たのか?」


「なに?」


「騎士団といっても部隊が全く違うのに、その応援に他の団長が入るなんて聞いたことがない。何か他に理由があるんじゃないかと思ってね」


「……」


リリアンは大きく深呼吸する。

表情は変わり、深刻そうな顔つきだ。


「ザラ姫に関係していることか?」


「まぁ、当たらずとも遠からずだな」


「というと?」


「私の婚約者さ」


「婚約者?」


「ああ。もうすぐ、この町に来るんだ」


「ずっと気になっていたが、君の婚約者というのは誰なんだ?」


リリアンは唇を噛む。

こんな表情をするということは、よほどの人物なのだろうとクロードは思った。


「言いたくないならいいが」


「いや、遅かれ早かれわかることだ。私の婚約者は第二騎士団長の"ゲイン・ヴォルヴエッジ"。メリルの兄さ」


メイアは驚いた。

ヴォルヴエッジ家は貴族第一位の名家。

その名家の長男であるゲイン・ヴォルヴエッジがリリアン・ラズゥの婚約者だったのだ。

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