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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
大迷宮ニクス・ヘル編
66/250

夢の狭間で(1)


西の遺跡


迷宮内の最後の部屋。

そこは円形状で広く、天井も高い。


中央に立つのは少女に近い見た目をした女性だった。

透き通るような長い白銀の髪。

青白い全身の肌があらわになっているが、そこに青い花柄、薔薇のようなタトゥーが入っている。


女性の名は"魔幻夢ニクス・ヘル"


この世界にいる魔物の中でも最強クラスと言われるほどの存在だ。


メイアとスキンヘッドは息を呑む。

一方、フィオナは鋭い眼光でニクスを睨んでいた。


「気をつけろよ。やつは幻影を見せる」


「幻影?」


「ああ。"誰かの夢"を展開してリアルな幻影を見せるんじゃよ。幻影でありながらも物理的に現実世界に干渉できる」


フィオナはそう言うと杖を前に構える。

前衛はスキンヘッドで大きな棍棒を持っていた。

後衛のメイアとフィオナは2人横に並ぶ。


「誰の夢を見せるってんだよ。こんなところに寝てるやつなんて……」


「いるじゃなかいか、やつの後ろに」


フィオナは杖の先でその方向を指した。

それはニクスの後方にあるベッドに眠る少女。


ニクスは笑みを溢す。


「彼女の夢は興味深いわよ。とても残酷で……それでいて美しい」


ニヤリはそう言うと手を前にかざす。

向かい合う3人の緊張感は増した。


「さぁ、夢を始めましょうか」


その言葉が言い放たれた瞬間だった。

周囲が閉鎖的な空間だったはずが、一瞬で一面が"花畑"に変わる。

空は雲ひとつない青さだ。


「これは……幻影なの?」


「メイア、気を抜くなよ。ヤツの能力はここからだ」


「は、はい」


メイアは杖を強く握った。

暖かさがある風が頬撫でるように吹く。

その、あまりの気持ちよさに逆に違和感を覚えるほどだ。

気づくと正面にいたはずのニクスの姿は無い。


「どこに消えやがった!!」


スキンヘッドの叫びは反響する。

周りは壁ひとつない花園が広がっているが、明らかに室内だということを認識できた。


突然、強い風が吹いた。

その風の匂いを嗅いだ3人は顔を顰める。

それは強烈な屍臭だった。


瞬間、前衛のスキンヘッドの前にドン!と何かが落ちた。

かなりの上空からだったからか、轟音もさることながら、花々を大きく揺らす。

舞い散る花びらがは風に靡いて、3人へ向かった。

だが散ったのは花びらだけではない。

スキンヘッドの服に飛び散ったのは真っ赤な血液だった。


「な、なんだ……これは」


恐る恐る、落ちた物体を見る。

それは、まだ小さい子供だ。

10歳くらいだろうか?花の上に、また大きな花が咲くように大地に血痕を残した。


「そんな……まだ子供だぞ……なんでこんなことができる!!」


「動揺するな!ヤツにつけ込まれる!」


スキンヘッドは奥歯を噛み締め、目を見開く。

絶対に許されない行為が目の前で起こっていたからだ。

体に熱を感じると、一気にそれを手に持つ武具に流し込む。

スキンヘッドが持つ棍棒は雷撃を放ち始めた。


どこからともなくニクスの声が聞こえる。


「私がやったと?違うわ。これは彼女の夢なのよ。彼女が体験したことを、あなたが見てるに過ぎない」


「なんだと……」


「その"綺麗に咲いた花"は彼女の弟みたいね。昔暮らしていた村に盗賊が来た。2人だけ逃げれたけど見つかって弟は死んで彼女は売られた」


スキンヘッドは唖然とした。

確かに盗賊は世の中には存在する。

だが、これほど倫理を無視した殺し方ができる人間がいるのか。


「それをやった犯人は捕まって処刑されたみたいだけどね。夢の中では関係ない。存在は永遠だから」


笑みを含む口調だった。


そして3人の前には一つの幻影が姿をあらわす。

それは、この綺麗な場所に似つかわしくない格好をしていた。

全身が黒ずくめでボロボロのフードを被って顔は見えない。

腕が異様に長く、どちらの腕にも指先まで包帯がグルグル巻きにされていた。

両手には見るからに鋭利な短刀を持つ。


「"殺風さっぷうのパズ"だ……」


スキンヘッドが呟く。


「盗賊って、有名な殺人鬼じゃねぇかよ……波動数値が30万くらいあるって聞いたことあるぜ」


「30万……」


「焦るな。メイア、教えた通りにやればいい」


「はい!」


「いやいや、30万なんて貴族並の波動数値なんだぞ!俺たちのみたいな数値の人間が勝てる相手じゃねぇ!」


その言葉を聞いたフィオナはニヤリと笑う。


「それは波動を理解してない人間の発言だ。"高い波動の人間には、それ以下の波動数値の人間は勝てない"……そう思ってるんだろ?」


「なんで、そんな当たり前のことを……」


「なら下がって見てるがいい。メイアなら、ヤツを倒せるさ」


スキンヘッドはあり得ないと思った。

例えば"100の波動数値の人間"は"101の波動数値の人間"には勝てないというのは世界の常識。

なにせ高い方が低い波動を掻き消してしまうからだ。

その数値の差が大きければ大きいほど、簡単に消されてしまう。


だが、それは表向きの話。

フィオナは知っているのだ、低い波動数値の人間が、それ以上に高い波動数値を持つ人間に勝つ方法を。

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