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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
最終章 死の王 編
249/250

最強


魔城の最深部である謁見室は暗黒空間となっていた。


どこが壁か天井なのかわからない。

部屋自体が大きくも感じるし、小さくも感じる。

立っている場所が本当に地面であるのかどうかもわからずにいた。


ガイ、ヴァン、ローラ。

その後ろにミラと気を失ったメイアがいる。


正面、数十メートル先と表現してもいいのかは不明だが、玉座だった場所にジェノサスが立っており、目の前には漆黒に染まった大剣が突き刺さっていた。

背後には巨大な"黒銀の龍"が長い首と両腕を闇切り裂くようにして突き出させる。


その"魔竜王・インフィニット"と呼ばれた神話上の存在からは凄まじい圧を感じた。


ジェノサスは不適な笑みを浮かべながら言った。


「これで全てを闇へと帰す……」


その言葉に反応して"魔竜王インフィニット"は鋭い爪のある両手と、こちらも鋭い牙が並ぶ口を大きく広げる。


両手のひらと口の前には黒い波動が収束して球体を作り始めた。

それは徐々に大きくなり、球体同士を歪にほとばしる漆黒の雷撃の線で繋ぐ。

線と線が繋がり面となって三角を作った。


ヴァンの額から汗が滴る。

息荒く、呟くように口を開いた。


「あれは確実にヤバい……間違いなく死ぬぞ」


「ここまで来て、あんな化け物が相手だなんて……」


ローラにも"魔竜王インフィニット"がやろうとしていることの危険性は感じ取れた。

"波動数値"なんていうものでは計り知れないほどの強力なエネルギーがそこにある。


竜の魔眼によってヴァンとローラの体の自由がら効かない。


「ここまでか」


諦めて脱力した時、この状況においてもなぜか動ける者がいた。

それを見たジェノサスは驚いた表情をする。


「ガイ・ガラード……竜の魔眼を破るとは……」


「俺は貫くって言っただろ。ここで動けなくなるわけにはいかない」


赤眼のガイの発光した赤い髪が徐々に"銀色"に染まり、全身が"白銀の炎"に包まれた。

スターブレイカーはさらなる深紅に染まり、持ち手のブラックラビットの皮には炎が帯びる。


「まさか"七"まで到達するのか?……やらせるわけにはいかない!!」


ジェノサスは右手を掲げ、それを一気に握る。

"魔竜王インフィニット"が作り出した闇の波動の三角形から凄まじいエネルギーが放たれる。


"一直線に伸びる巨大な砲撃だった"


これは死を含む砲撃だろう。

少しでも体に触れれば、生命など簡単に消し飛ぶほどの威力だ。


しかしガイはいたって冷静だ。


「"炎天五剣"」


ガイを中心として回転する5本の炎剣は等間隔に円形上に広がり闇の地面に突き刺さる。

それはナイト・ガイ全員をフォローするほどの大きさで防御フィールドを作った。


"魔竜王インフィニット"の攻撃が防御フィールドに当たると凄まじい勢いでV字に割れてメンバー全員を守った。


「耐え続けられるわけがない。この波動は言わば"永遠なる死"なんだ。吸収なんてしたら中にいる人間は全員死ぬぞ」


「わかってるさ……俺には感じるんだ」


「なんだと?」


「まだ終わらない!!死炎鎖しえんさ!!」


ガイはスターブレイカーを闇の地面に突き立てる。

すると闇の中、ガイの足元に四方八方と真っ赤な亀裂が無数に入った。


瞬間、"魔竜王インフィニット"の両腕が出る場所の下から巨大な炎の鎖が突き上がる。

それは4本あり、片腕に対して2本巻き付いた。


「"チェーン・デスフレイム"!!」


炎の鎖は高速回転して地面へと巻き戻る。

すべてが地面へと引き戻されると魔竜王インフィニットの両腕は切断された。

さらに大爆発を起こすと両腕は爆散した。


「まだ一つ残ってるぞ……ガイ」


ジェノサスが言った"一つ"というのは口から放たれている闇の波動による"死砲"だ。

威力と範囲は縮まったとはいえ、それでも数千万もの数値はあるだろう。


「"七つ目"を使う……!!」


「なんだと……ガイ、お前は……やはりそこまで到達していたのか」


「これで終わりだ」


ガイは闇の地面に突き刺したスターブレイカーを引き抜くと両手で持って前に構える。

その切先が向くのは"魔竜王インフィニット"だ。


何度も展開する熱波によって暗黒空間の温度は上昇を続ける。

そしてガイ・ガラードが持つ波動の最後の七つ目が姿を見せた。


「"炎竜王・アルハート"」


炎が渦巻きガイを包み込む。

それは白銀の炎の鎧を纏った騎士のようだ。

両手に持ったスターブレイカーも白銀の炎に包み込まれて大剣と化す。

唯一、赤い瞳は白銀の炎の甲冑から覗かせているが、この凄まじい眼光に睨まれた魔竜王インフィニットは動きを止めた。


「美しい……やはり"六"とは不完全な数字だ……"七"でなければな」


笑みを溢してジェノサスが呟く。

その目には感動があるようだった。


構わず"白銀の炎騎士"は両手に持った炎の大剣を天へ向けて掲げる。

すると暗黒空間に幾度となく熱波が広がった。


「"竜骨の大剣・永久絶炎斬えいきゅうぜつえんざん"」


振り下ろされた炎の大剣は暗黒空間ごと"魔竜王インフィニット"を両断した。

次元すらも斬り裂く、凄まじい斬撃により魔竜インフィニットの頭は割れ、さらに白銀の炎で包まれる。


ガラスが割れるように暗黒空間は破壊され、元の謁見室へと戻った。


ジェノサスは正面に右手をかざす。

なにかしらの攻撃が読めた。


「"炎隼(ファルコン)"」


瞬間、"白銀の炎騎士"の背後から2本の炎剣が高速回転し、目にも止まらぬスピードでジェノサスへ向かっていき右腕を切り落とす。


これにはジェノサスもたまらず声を上げた。


「ぐ……なという反応速度だ……」


さらに"白銀の炎騎士"は両手に持った炎の大剣を斜め下に構え、赤い絨毯を擦るように振り上げる。


「"サラマンダー"」


床を這う白銀の炎が向かう先はジェノサスだった。

炎はジェノサスの胸を斜めに切り裂く。


「がは……」


黒い血を吐くジェノサスは仰け反り、そのまま力なく玉座へと座った。

胸元からの出血もドス黒い血が流れ出す。

それを見たヴァンとローラは、"この男"が人間ではないということを再認識させられた。


白銀の炎を纏ったガイはスターブレイカーを横に振るう。

すると白銀の炎鎧は空気中へと拡散して消えた。

ガイは元の姿に戻っていた。


ジェノサスは項垂れながら、視線を落としたまま口を開く。


「ガイ・ガラード……死を殺す者……君が正義を貫くところが見れなくて残念だよ。しかし……もう少しだけ一緒に旅をしたかった……メイアも……ローラも……みんなで」


「クロード、お前は……」


「同情などいらないよ。今のは……ただのわがままさ。とても楽しかった……あの日々がね……」


ジェノサスの体から炎が上がる。

徐々に炎に体が包まれていく。


「だが……恐らく君は何度も自問することになるよ……果たしてこの選択が正しかったのか……この道でよかったのかとね……」


「……」


「それがいつやってくるのかはわからない。ただ、そう遠い未来ではないということだけは確かだ……」


炎はジェノサスの全身を覆った。

彼の座った玉座すらも燃やしていく。


「ガイ……もし次があるとするのなら……今度こそ僕と一緒に世界を……"平和に導こう"」


この言葉を最後にジェノサス・カオスオーダーは絶命した。

すると、すぐに城内には轟音が鳴り響く。

主人を失ったことによって城が崩れ去るのだろうと容易に想像できた。


こうして炎の男によって"死の王"は倒されたのだった。

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