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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
リア・ケイブスの事件編
22/250

報告


リア・ケイブス



宿の一室にメイアがいた。

ベッドに横になっていたのはローラだ。


昼前頃になって、ようやく目を覚ましたローラ。

虚な目で天井を見る。

少し間を置いて、ようやく自分が無事であることがわかった。


「ローラさん。よかった!」


「メイア……ごめん……あたし、迷惑かけちゃったね」


「いえ、いいです。それよりも無事でよかった」


メイアの笑顔にローラは泣きたくなる。

歯を噛み締めて、それに必死に耐えた。

家族でも、姉以外に優しくされたことはない。

女学校時代もそう。

家柄が大きいのに"低波動"の彼女には友達なんておらず、学生時代は、ただひっそりと地味に過ごしていた。


「一緒に行けて凄く楽しかった、でも……あたしがいたら迷惑よね」


「そんなことは……」


「いいのよ、メイア。あたしはまた一人で旅をする」


そう言ってローラはメイアに背を向けるように横になる。

メイアはどうしていいのかわからなかった。

ただ、これ以上、話をすればローラはさらに傷つくのではないかと思った。

幾分か思考したのち、メイアは立ち上がると部屋を後にした。



____________




メイアが宿の外へ出ると、ちょうどガイとクロードが帰って来た時だった。


2人はメイアの悲しそうな表情を見て顔を見合わせた。


「メイア、どうしたんだ?」


「ローラさん、目を覚ましたんだけど……また一人で旅をするって」


「そっか……」


ガイは少し寂しいと感じていた。

短い間ではあったが、一緒に戦った仲間には違いない。


そんな中、クロードが少し考えて口を開く。


「理由はなんと?」


「迷惑かけるからって」


「なんだ、そんなことか」


クロードが、ため息混じりに苦笑いすると、宿の中へ向かおうとしていた。


「どうするつもりだよ」


「彼女をパーティに誘う。君たちはギルドへ報告へ行ってくれないか」


「え……だけど、ローラは戦えないんだぞ」


「戦いなんて場数さ。それに彼女は"ワイルド・ナイン"だ。必ず強くなる」


クロードは笑みをこぼすと、宿へ入っていった。

取り残されたガイとメイアは仕方なく2人でギルドへと報告へ向かった。



___________




ギルドに到着したガイとメイアは受付カウンターへと向かった。

そこにはマーリン・バーベッチだけがいた。


ガイが東の湿地帯で何があったのか説明する。

それを無表情で聞くマーリン。

頷くこともない、その姿に困惑しつつも、説明を続けた。


「というわけで、盗賊には逃げられたし、デレクはもう死んでたよ」


「……そうですか。では、依頼は未達成ということで」


表情を一切崩す事のないマーリンに対して不気味さを感じつつ、2人はギルドを後にしようと入口へと向かう。

その際、ガイが少しだけ振り向き、マーリンの姿を確認する。


この時、マーリンは"俯き、体を震わせていた"。


それは悲しみによるものなのだろうとガイは思いつつ、ギルドを後にするのだった。




____________




ある大雨の日のこと。


早朝、日も出ないうち、オクトー・ランヴィスターの自宅に来客があった。


軽いノックの音が聞こえると、この家に雇われている老婆は、すぐに玄関へと向かった。


「はいはい」


そう言って玄関ドアを開けると、そこに立っていたのは雨よけのマントを羽織るショートカットのブロンド女性だった。


「これはこれは、マーリン様。こんな朝早くから……中へどうぞ」


「いや、ここで」


「はぁ……どうされましたか?」


「昨日、妙な駆け出しの冒険者が来て、"ミル・ナルヴァスロ"のことを聞いてきた」


「なんと……」


「もしかしたら、この場所を訪れるかもしれない。警戒は怠らぬよう。誰が来ても絶対に2階には行かせるな」


「かしこまりました」


そう言って老婆は頭を下げた。

マーリンはそれだけ告げると雨の中、足早にギルドへと向かった。



マーリンがギルドへ到着しそうな頃、見慣れぬ男2人が"動く何か"を抱きかかえて建物の間へと入って行った。


最初は無視しようと、そのまま通り過ぎようとした。

だがマーリンは男たちの抱えていたものが気になり、腰に下げた武具である"鉄球"を手に取ると、建物の間へと向かった。


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