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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
ディセプション・メモリー編
215/250

ディセプション


クロードとメイアは王都にある騎士団本部にいた。


"少しだけ寄り道をしていく"ということだったが、恐らく王宮騎士団の最高司令官であるアデルバート・アドルヴに会うのだろうとメイアは思った。


推測するにアデルバートは六大英雄の1人なのだろう。


メイアには不安感など微塵も無かった。

それ以上に何か妙な高揚感をおぼえる。

最初に旅に出た時と同様の胸の高鳴りを感じていた。


クロードとメイアが転移した場所は騎士団本部の集会室のような場所だった。

何も無い殺風景で長方形の広い部屋、右サイドに等間隔にある窓からは日の光が差し込む。

その入り口ドアを背にして立つ2人。


正面、数十メートルほど先には全身を重厚な白銀の鎧に身を包んだ騎士がいた。

顔が全て隠れるほどの仮面を付けた屈強な体格で腕には竜が巻き付くような形のガンドレッド。

その甲には大きな丸い波動石が装着してあるが、色は濃いブラウンだった。


クロードが一歩だけ前に出て口を開く。


「アデルバート・アドルヴ……いや、グレイグと呼んだ方がいいか?」


問いかけに騎士は答える。

その声はとても低いものだった。


「どちらでも。しかし……まさか私が最後になろうとは」


「ゾルア・ガウスに期待でもしてたのかい?もしかして"彼"の予知によってのことかな」


「まぁ、そんなところだ」


「本当に厄介な能力だったよ。それと似た能力の少女と一緒にここまで来たが、やはり気味が悪いね」


「似てるも何も、彼女の能力は"彼"を超えてる」


「なんと……やはり殺しておくべきだったな」


「それはできないとわかっていたよ。貴様は頭が良すぎるからな。必ず一緒にここまで来るだろうと思った」


クロードは眉を顰めた。

目の前に立つ人物はゼクスほどでは無いが頭はキレる。

恐らくザラ姫のことも最初から魔物だと知っており、それを利用して様々な工作を練っていたのだろうと予想していた。


「それにしても……まさか()()来るとはね。とても残念だよ」


アデルバート改め、グレイグが言ったのはクロードの後ろに立つ"メイア"のことだった。


困惑したメイアは首を傾げながら言った。


「私はあなたとは初対面のはずですが」


「いや、君と私は少し前に会ってるよ」


「……え?」


「波動連続展開を使う少女。ここに来るということは、もしや"あの領域"に辿り着いたかい?」


メイアが思考して、その問いに答えようとした瞬間にクロードに止められた。


「彼の質問に答えてはいけない。嘘を言っても心を読まれる」


「心を……読む?」


「彼のワイルド・スキルさ。"質問"か"接触"で人間の心を覗き込む。()()なスキルだ」


グレイグは仮面越しに笑ったように感じた。


「別に心を読まずともわかるさ。貴様と一緒にいるだけで、"絶の領域"に辿り着いているのだろうね」


「……絶の領域?」


初めて聞く言葉だった。

メイアはクロードへと視線を送るがグレイグを睨んだままだ。


「波動連続展開の先にある領域。私が最も懸念しているものだ」


「なぜですか?波動連続展開は波動使いにとって様々な可能性を広げてくれます」


「確かに。だが使用後の負荷が大きすぎるんだよ。特に"絶"まで到達すると徐々に精神が破壊されて正常な判断ができなくなる。そんな人間を私は多く捕まえたし殺しもした。君にも経験があるのではないかな?」


グレイグは"その結果がこれだ"と言わんばかりだった。

確かにメイア自身、波動連続展開を多く使用するようになってから異常な感情のたかぶりを感じる。

特に最近は波動を使用すると理性が働かなくなり、かなり攻撃的になった。


「やはり、あの時に迷わず"ディセプション"しておくべきだった。君はとても聡明な女性で必ず波動連続展開の危険性に気づくと思っていたが……」 


「あなたに私の何がわかるというのです?」


「わかるさ。だから、あの"香水"を君にあげたんだ」


「……まさか」


「クラウス君とは……仲直りできたでしょ?メイアちゃん」


瞬間、目の前に立つ仮面の騎士と以前に出会った、とある人物の声が一致した。

ここまでメイアは気づかなかった。

なにせ口調が全く違うからだ。


「そういえば、もしかして僕に"虚偽記憶改変ディセプション・メモリー"をしたんじゃないか?」


「なぜ、そう思う」


「ここまで来るまでに昔のことを思い出していたが、なぜか"あなた"だけが登場しないからさ。他の五人はいいが、あなたの顔を全く思い出せない」


「やったよ。他の"四人"にも」


「やはり……最後の魔王城での仲間割れはあなたが仕組んだことだったか。薄々はわかっていたが。あの男の計画なのだろうね」


「貴様の倒し方を探るために長く生きなければならなかったからな。お前なら必ず私たちを生かすだろうと思っての判断さ」


「それで見つかったのかい?」


「ゼクスが見つけた。貴様の能力には欠点がある。ここで私諸共わたしもろとも、消え去るといい」


凄まじい殺気が部屋を包み込んだ。

それはここまで戦い抜いてきたメイアですらも後退りさせるほど強力なもの。

しかしクロードは一切、構うことなく前へと踏み出した。

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