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追放の魔女

コーブライド



雲一つない晴れ空の下、ガイは"ミラ・ハートル"と名乗った少女と共に街中を歩いていた。


先行するのはミラだった。

彼女の提案によって"猫探し"の依頼を受けたが、ガイは乗る気ではない。

なにせ冒険者のデュランも同じ依頼を受けて完了するまでに3日も掛かっというのだ。

現在、ガイの空腹は限界に達しつつある。

この状態で3日もの時間、猫を探して追いかけ回すなんてできるのだろうか?


だが、楽しそうに鼻歌混じりに前を歩くミラは猫の行き先がわかってるがごとく街を歩いていた。


「そんなに楽しいかなぁ……」


「え?」


ミラがガイの呟きを聞いて振り向く。

やはり、とても美しい顔立ち。

髪の色も見たことがない桃色で綺麗だ。


「あ、いや、なんでもない」


「顔が赤いです。具合でも悪いですか?」


急いで目を逸らしたガイは必死に思考する。

何か話題になることはないか……


「そ、そういえば、俺より強いやつが世界に三人いるって話だけど」


「ああ、"2"と"4"と"9"ですね」


「は?」


「でも近い将来、ガイ君が戦うことになるのはこの中の"一人だけ"です」


そう言ってニコリと笑うとミラは再び歩き始めた。

意味のわからない発言に戸惑うガイだったが、すぐに跡を追うように歩き始める。


「俺は別に強い奴と戦いたくて旅してるわけじゃないからな」


「そうなんですか?」


「兄貴を探してる。もう近くまで来てるんだ」


「へー。お兄さんとは仲がいいですか?」


不意な質問だった。

そういえば兄と会わなくなってから何年経っただろうか?

父親が生きている時だったので3年は経っている気がする。

ガイは兄が今の自分くらいの歳に家を出て行ったと記憶していた。


「どうだったろ?乱暴なところもあったけど、優しかったかな」


「いいですね。兄弟って」


「妹は生意気だけどさ。ミラにはいないのか?」


ミラは足を止めた。

少し考えているようだったが、すぐに口を開いた。


「いますけど、ずっと会ってないです」


「もしかして家を飛び出して来たとか?」


「いえ、私は低波動なので家を追い出されちゃいました」


背中越しだったが、それは悲しげに聞こえた。

恐らく低波動で追い出されるとなれば貴族の人間だろう。

ローラも低波動が原因で家を出て来たが、ミラの場合はその逆だった。


自分も最初に低波動とバカにされた時は落ち込んだし、妹のメイアの方が数値が高いことを知って居た堪れなくなったことも覚えている。

冒険者にならずに、このまま村に戻って静かに暮らしたいと悲観したものだ。


「それに私はなぜか色んなことがわかってしまうので、周りからは気持ち悪がられてしまって」


「……」


「最後には"魔女"なんて呼ばれてましたよ」


ミラは再び振り向いて苦笑いしながら言った。

確か昔にメイアから"魔女"という単語を聞いていたような気がした。

確か未来がわかるとかなんとか、そんなありもしないような、くだらない話だ。


「でも、私のことをわかってくれる方が近くにいらっしゃったんです。その方の紹介でこの町にやって来ました」


「味方がいてよかった」


「ええ。とても頼りになる存在ですよ。でも、もう少しでお別れなんです。これで"7"から"8"になりますから、あと一つです」


「それって、どういう意味だ?」


「大事な人が一人、とても遠くに行ってしまうんです……だけど、この町に来てよかった。ガイ君に会えましたから」


「なんで俺なんだよ」


「あなたが特別だからです」


これは答えになっているのだろうか?

そう考える暇すら与えずミラはまた歩き出した。

旅の途上、様々な人物から特別視されてきたとは思う。

それはワイルド・ナインだからなのか、闘気が見えるからなのかはわからない。

ミラには一体、何が見えているのだろう。


ガイが眉を顰めて思考していると先を歩き始めていたミラが突然、声を上げた。


「あ!猫ちゃん!」


ミラの少し前をゆっくりと横切る白黒の影。

しっかり手入れされた毛並みの猫だった。

白い毛と黒い毛が縦真ん中で綺麗に分かれ、首にはゴールドの首輪が巻かれていた。


声に反応した猫は立ち止まり、じっとミラを見ていた。


「大丈夫ですよー。怖がらないでー」


静かに近づくミラだったが、猫はすぐに足を動かして走り去る。


「あっ!ガイ君、追いかけて下さい!」


「お、おう!」


ガイも一気に踏み込んだ。

猫のスピードとフットワークには到底、人間は追いつけないだろう。

しかし、ここで逃したら今度いつ目の前に現れるかわからない。


ガイは路地に逃げ込む猫を追いかけ続けた。

この後、猫を捕まえたのは3時間後。

時刻にして午後六時頃だった。

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