表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
フレイム・ビースト編
163/250

赤き強者


雪埃から飛び出した赤い閃光。

ガイは逆手に持ったダガーを振る。

刃の行き先は首元だ。


その動きを見た赤髪、黒いロングコートのゾルア・ガウスはニヤリと笑った。


「そうでなくてはな」


上体を後方へと少し逸らしてダガーの横振りを簡単に回避するゾルア。

だがガイはさらに一歩踏み込んでから回し蹴り。

ゾルアは体の筋肉を引き締め、回避行動の状態からバックステップしてそれをかわした。


「まだだ!!」


ガイの猛攻は続く。

手に持ったダガーの遠投、さらに踏み込み……と人間離れした動きを繰り返す。


ダガーの遠投も首を捻って簡単に回避するゾルア。

踏み込みに対しても後方へ下がって距離を取り、間合い調整を図る。


「凄まじい動きだ。そんな華奢な体でそのムーヴは命を縮めるぞ」


その言葉に構うことなくガイは雪の地面を蹴って前に出る。

腰のダガーのグリップを握ると一気に引き抜いて横へ振った。


かろうじて首を捻ってダガーをかわしたゾルアは、この回避行動と同時に体を回転させて蹴りを放つ。

ゾルアの足はガイの胸に直撃して数十メートルもの距離を後退させた。


滑るように地面に着地して片膝をつくガイは、赤く光る鋭い眼光をゾルアへ向ける。

前へ重心を置いて臨戦体制だった。


ゾルアは自分の頬を少し指で撫でる。

サングラスによって"色"は見えないが、その手触りによって血であるということはすぐわかった。


「しかし、なぜ波動を使わない?」


「……」


逆手に持ったダガーを前に構えるガイの右手の薬指に着けられた黒い指輪。

ゾルアにはそれが封波石の指輪であることはわかっていた。


「なぜ指にそんなものを着けてるのかは知らんが、舐めるのもいい加減にしてほしいものだ」


「舐めてるわけじゃない。これは俺が自分で着けたわけじゃないからな」


「契約者は別にいるのか……邪魔なら俺が外してやるよ」


「必要無い!!」


ガイは勢いよく地面を蹴るとゾルアとの間合いを詰めた。

やはり人間離れしたスピードで数十メートルの距離を一瞬にして移動する。


高速のダガーによる斬撃。

ゾルアの首元まで伸びるが、それは甲高い金属音と共に止まる。


「な、なに!?」


ゾルアが逆手に持っていたのはダガーよりも小さいナイフだった。

そのナイフの小ささを見るに戦闘用ですらない。


「そう遠慮するな。すぐ終わる」


そう言って一歩踏み込み、ガイの腹に横から膝蹴りを放つとガイの体は簡単に宙に浮く。


「が、はぁ……!」


ゾルアは片腕を振り上げて、ガイの下がった首に一気に振り下ろした。

ズドン!という轟音が周囲に響きわたると同時にガイの体は瞬時に仰向け状態で地面に叩きつけられる。


衝撃でガイの握られていた右手が開く。

すかさずゾルアはナイフを薬指の付け根へと突き刺した。


「があああああああ!!」


ガイの薬指が切断された。

気を失うほどの凄まじい激痛に身が悶えそうになる。

しかしゾルアの攻撃はこれでは終わらず。

ガイの腹に蹴りを入れて浮かせると胸の辺りに両手のひらを重ねてかざした。


「これで死んだらそれまでだ」


音も無く、ゾルアの体を中心として熱波が広がる。

時間差でガイの胸元に爆発が起こった。

勢いよく数百メートルは吹き飛び、未だ舞う雪埃の中に姿を消す。

するとガイが飛び去った方向からドン!という音が聞こえた。

恐らくどこかのコテージの壁を突き破ったのだろう。


「さて、どうなるものか」


笑みを溢すゾルアは黒いロングコートのポケットに手を入れると、ゆっくりと歩き出す。

目指すのはガイが吹き飛んだ方向だ。


その時、横方向から高速で飛来するものがあり、ゾルアは瞬時に反応して手に取った。

見るとそれは弓矢だった。


「なんの感情も見せないような顔をして、攻撃する時の殺気は随分と鋭いな」


矢の飛んできた方向を見ると、そこには額から血を流している女騎士が足を震わせて立っていた。

服はところどころ破け、火傷を負っているようだ。

見るからに今にも倒れそうな状態だった。


「なぜ、そうまでして残る?貴族である騎士様が平民の冒険者を助ける意味なんて何も無いだろう」


「わからない……でも、ここで退けば私は必ず後悔する」


「他人には興味なさそうな顔して意外だな」


「確かに私は人間になんて興味は無い。だが、その少年には私には無い何かがある……それが知りたいだけだ」


「よくわからんな。これが最後のチャンスだ……よく考えることだ」


「考える必要なんてない。これが私の答えだ」


ローゼルは震える手で背中の矢筒から一本の矢を抜くと弓に添える。

それをゾルアに向けると最後の力を振り絞って矢を引き、狙いを定めた。


「その威勢は認めるが、"勇敢"と"無謀"を履き違えるなよ」


「……私のこれは勇敢とか無謀みたいな、そんな立派なものではない」


ただローゼルは知りたかったのだ。

自分のためではなく、他人のために戦うことで何を得ることができるのか。

なぜ、それが人を強くさせるのかを。


目を見開き、ローゼルは矢を放つ。

高速で飛ぶ矢は一直線にゾルアへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ