ダークネス
ネルーシャン
雪が少しだけ積もる広場には2人の姿があった。
"黒髪の青年クロード"と"ブラウンの髪に黒が混ざったツインテールの少女アイヴィー"だ。
アイヴィーは既に波動を発動していた。
土で模った楽譜台に大きな本が置かれている。
一方、クロードは全く構えもせず、武具すらも見せない。
2人は数十メートルほどで、離れて向かい合っていた。
「"かなり邪悪"……」
アイヴィーはクロードの言ったセリフを復唱するように呟いた。
不敵な笑みを浮かべるクロードに嫌悪感を抱く自分がいる。
波動石を身につけていないため、この男の属性は不明。
さらにボスであるゾルア・ガウスが"この世界に3人いる危険人物の1人"として名を上げていた者だ。
ここで戦うのはリスキーではある。
だが、この男をここで倒すことができたとするなら……そんな淡い期待を抱きつつアイヴィーは臨戦体勢を取っていた。
「どうした?来ないのかい?」
クロードの不意の言葉。
「先に攻撃してもいいと?」
「どうぞ。レディファーストさ」
紳士的に笑みを浮かべて言うクロードだが、この男の"素性"を少しでも知っていたら警戒しないわけにはいかなかった。
だが逆に攻撃しないことには始まらない。
アイヴィーはクロードの言葉に乗る形で攻撃に出た。
「"26ページ・土の魔槍"」
聞こえるか聞こえないかほどの小声でアイヴィーがそう口にすると土の台の上に置かれた本のページがパラパラと捲られ、ある場所で止まる。
するとアイヴィーの体の周囲に土で模られた長槍が無数に作られ、その矛先はクロードの方へ向けられた。
「"槍射"……」
再びアイヴィーが小声で呟く。
瞬間、無数の長槍が勢いよくクロードへ向けて放たれた。
そのスピードは常人が目で追うには早すぎるほどだろう。
だがクロードの笑みは崩れない。
そして長槍は到達する。
「"ダークネス・セカンド"……"無限収納"」
クロードが詠唱の如く言う。
すると長槍はクロードに直撃する前に一本一本何処かへと消える。
突き抜けたわけではない。
全てがクロードに当たる前に闇に消えていったのだ。
「この能力はこれで終わりでは無いよ。……"反射"」
その言葉を言い終わると同時にクロードの周囲には無数の土槍が出現する。
「どんな原理なの……」
「今、"原理"なんてものを考えてる暇はあるのかな?」
ニヤリと笑ったクロードは手のひらをアイヴィーに向けてかざすと、土槍が一斉に発射される。
この攻撃は完全にアイヴィーのものと同等だった。
ハッとしたアイヴィーはすぐさま動く。
再び台の上の本のページがパラパラと捲れて止まる。
「"55ページ・土の大盾"」
アイヴィーの波動発動スピードは一瞬だった。
すぐに自分の目の前に巨大な土の盾を作って土槍を防ぐ。
「凄まじい展開スピードだね。メイアと同等か……それ以上か。いいものを見せてもらったから少し面白いものを出そう」
そう言うクロードの表情は大盾によって見えはしないが、確実に戦いを楽しんでいる……と、アイヴィーは感じた。
「"ダークネス・サード"……"迷子人形"」
その瞬間だった。
アイヴィーの大盾にズドン!と音を立てて何かがぶつかる。
一瞬にして大盾にヒビが入り、少しの時間差があってから簡単に崩れ去ってしまった。
息を呑むアイヴィーは数百メートル先の青年を見ると隣にもう1人、若い女性が立っていた。
その女性は目が虚でブロンドのショートカット、グレーのスーツに膝まであるスカートを履いていた。
土盾にぶつかった"球体のような何か"が女性の手元へと跳ね返って戻る。
すると女性は糸が切れた人形のように力なく地面に倒れ込むが、なぜか地面は"ドス黒い泥"のよう。
倒れた衝撃で黒い飛沫を上げ、そのまま女性はドロドロとした地面に飲まれるように消えていった。
「なんなの今のは……」
唖然とするアイヴィー。
だがクロードの攻撃は終わらない。
「"メリル・氷結潜光"」
そう呟くとクロードの背後から白いワイシャツにブラウンのパンツ、黒いブーツを履いた美しい銀のストレートヘアの色白女性が現れた。
女性は一本踏み込むと右手に構えたレイピアを擦り付けるように地面を斬る。
下から上への切り上げる攻撃によって氷の線がアイヴィーへ向かって走った。
「"102ページ・土の巨兵"!!」
アイヴィーの反応は早かった。
パラパラと捲られた本のページが止まると一瞬にして巨大な土の人形が作られる。
土の巨兵はアイヴィーの目の前に立つと地面を走ってきた氷の線を最も簡単に防いだ。
一直線に来た氷はV字に割れ、周りにある、かろうじて立っていた家屋を破壊した。
「凄いね。天才的な波動センスだ」
笑みを溢すクロードに"ドン!"と地面を蹴って跳躍した巨兵が襲いかかる。
太陽を遮るほどの巨体は上空から流星の如く飛来した。
「無限収納」
直撃寸前で土の巨兵はクロードに吸収されるように闇に姿を消す。
同時にクロードの隣に立っていた銀髪の女性も力なく倒れるとドロドロとした黒い地面に沈むように消えていった。
「君が気に入ったよ。"ロスト・マリオネット"の席はもう一つある。是非とも君に座ってもらいたいね」
「なんという……ボスとはまた違った方向の強さだわ……」
アイヴィーの額には汗が滴る。
ここが決して暑いわけではない。
目の前にいる悪魔のような男の圧に自然と流れ出るものだった。
「さて、そろそろ決着をつけようじゃないか」
ゆっくりと歩いて近づく青年を見てアイヴィーは体を震わせた。
恐らく自分はここで死ぬ……いや、"死"よりも残酷な目に遭うのだろう。
その瞬間、町の奥の方からズドン!という凄まじい轟音がした。
クロードは思わず振り向いていた。
「これはガイたちが行った方向からだな」
そして、すぐに視線を戻すが、アイヴィーが立っていた場所には誰もいなかった。
「ほう。この一瞬で姿を消すとはね……まぁいいだろう。楽しみはあとにとっておくとしよう」
そう言ってクロードは笑みを溢すと、ガイたちが向かったであろう町の奥へと歩みを進めた。
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kkkkkkkkkの闇
1.ダークネス・ファースト
ソウル・ディザスター 説明を開示できません
2.ダークネス・セカンド
インフィニティ・ストレージ 説明を開示できません
3.ダークネス・サード
ロスト・マリオネット 説明を開示できません
これ以上の情報を開示することはできません
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