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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
エターナル・マザー編
110/250


向かい合ったのは青髪の青年と金髪角刈りの太った中年の男だった。


青髪の青年の名はレイという。

全身を包むローブと大きい杖を持つ。

どこからどう見ても遠距離型の波動使いだった。


一方、金髪の男は、その太った体型に合う服が無いのか、大きめのレザーパンツにノースリーブのジャケットのみ羽織る。

首から下げた波動石は"濃い紫色"だ。

腰には中型の杖を差すところを見ると、こちらも遠距離型なのは明らかだ。


審判が両者の間に立ち、ルールの説明を始めた。

この試合は大将戦であるため波動が使用できる。


金髪の男が思うに、赤髪の男の強さを見るかぎり、このレイという青年の強さも並大抵ではないだろう。

ニコニコと笑みを浮かべるレイという青年は何を考えているのかわからず、得体の知れない"何か"を感じさせた。


最初の試合の噂は聞いていた。

遠距離型と思われる風貌なのに、近距離戦で剣士を圧倒するほどの強さ。

もしかすれば見た目を誤魔化して、実は近距離戦が得意なのかもしれない……ということを考えていたらキリはないが思考は止まらない。


両者、審判に促されて距離をとった。


どちらにせよ近づかせなければ問題はないし、遠距離型であればそれでもいい。

金髪の男は中型の杖を腰から抜くと前に構えた。


審判が大きく手を広げて開始の合図の準備に入る。

そして、その時はきた。


「それでは大将戦……始め!!」


審判が叫んだ瞬間、高速で波動を発動させたのは金髪の太った男だ。


男の周囲に雷撃が走ると同時に拳よりも二回り大きい球体がいくつか出現し浮遊する。

ただ漂うだけの球体が数にして15個ほど作られた。

金髪の男は杖を横に振ると球体がステージ上の四方八方へと飛び停止する。


さらに杖を前へ構えると雷撃が走り、再度10個ほど球体を作り出すと男の体を取り囲んだ。


金髪の男は審判を指差して言った。


「"波動爆雷"……審判、動くなよ。こいつに少しでも触れればひとたまりもないぞ。わしの波動数値は10万程度だが、この全てがそうだ」


そう言ってニヤリと笑う金髪の男。

だが、レイは冷静に構えも取らずに周囲を見渡していた。


「なるほど。これほどの球体をほぼ一瞬で出現させるとは……数値が10万ほどならギリギリ可能か」


「貴様、何を言ってる?」


「"波動連続展開"でしょう。このテクニックは波動数値が"極端に高い人間"はできない。逆に"低すぎる"と何の意味もなさない」


「まさか、これを知ってるとは」


「波動のことは大体ボスから教わってるんでね」


そう言ってニコリと笑う青年レイ。

さらに続けて、


「ちなみに私にはできない。なにせ波動数値が高すぎるからね」


「嫌味で言ってるのか?いくら高いとは言っても、この爆雷の数を凌ぐ波動数値でなければならなし、"髪の色"を見たところ貴様の波動属性は水だろう。相性が悪すぎる」


青年の髪の色は青。

古来より髪の色は波動の影響を強く受けると言われている。

赤、青、緑、茶、銀、紫が炎、水、風、地、氷、雷の五属性。

金色は貴族に多く、こちらは波動の属性は様々である。

黒色は珍しく闇が混ざると言われているが詳しいことは不明。

さらに珍しいのは髪の色が二色に分かれている者だ。


「確かに"水属性"では不利な組み合わせだね」


「降参するのは今のうちだぞ。痛い思いをしてステージを下りるよりよっぽどマシだと思うがね」


「いやぁ、さすがに降参なんてするわけにはいかない。それに無傷でステージを下りたとしても、敗北を持ち帰ったらボスに殺される」


「なら……痛い目を見て殺されることだな!!」


金髪の男はそう叫ぶと勢いよく杖を振る。

するとステージに散らばって浮遊していた雷の球体が一斉に青年レイ目掛けて集まった。


男の体に浮遊する雷球以外、すべての雷球がレイに命中し凄まじい爆音と共に稲妻を走らせる。

稲光によって目を閉じる観客が多くいた。


ステージ上は土埃が舞い、青年がどうなっているのかわからない。


金髪の男は笑みをこぼす。

簡単な試合だった。

相手が高波動だったとしても"水の波動"なら掻き消されてもダメージは残せる。

だが高波動とは言っても数値が150万を超える人間の数は限られているため、勝利は必然だと思った。


「審判!無事か?」


「あ、ああ」


「さっさと生存確認して判定を下せ」


そう言った瞬間、舞い上がった土埃の中から声がした。


「おいおい、まだ終わってねぇぜ」


「な、なんだと……バカな……」


土埃が風に吹かれて消えた。

そこにあったのは岩のドームだった。


ゆっくりと岩に亀裂が入って割れた。

割れた岩の破片はステージ上に落ちる。


「な……こんなことがあるのか?ありえない……」


金髪の男はレイの姿を見て息を呑む。

それは"青髪の青年"ではなかった。


「なぜ、髪の色が違う!!」


立っているのは間違いなく青年だが、髪の色が"青色"から"茶色"になっていた。

さらに目つきが鋭く、印象が全く違う。


ステージ下の赤髪の男が呟く。


「"グラッツォ"か……こりゃ厄介なヤツが出てきたな」


青年レイ……いやグラッツォはニヤリと笑うと持っていた大きな杖を放って投げた。

そして、ローブを徐に脱ぎ捨てる。


あらわになったのは鍛え抜かれた肉体。

無数の切り傷が入り混じる中、首から下げた波動石も見えた。


その波動石の色は赤、青、緑、茶、紫、銀が混合された"虹色"だった。

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