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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
エターナル・マザー編
108/250

波動殺しの雨


雨が降ってきた。


次第に雨足は強くなり、ステージ上にいる2人の女性の体を濡らしていた。


巨体の女は目の前に立つ青髪の少女から放たれる青色のオーラに押され、無意識に後退りする。


一瞬たりとも目は離せない。

少しでも目を逸らしたら、この女に"食い殺される"……そう強く感じさせた。



そして巨体の女はある違和感に気づき、同時にステージ上で変化が起こった。


"巨体の女の波動である竜巻が消えた"


ようやく見えたステージに観客は困惑の声を上げていた。


その中には赤髪のサングラスの男と青髪の青年もいた。

最後列で立って観戦しているが、2人とも雨粒を全身に受けていた。


青髪の青年が笑みをこぼしつつ口を開く。


「なるほど、彼女はワイルド・ナインでしたか。しかし、これはまた……とんでもない能力だ」


その言葉に赤髪の男は無表情に反応した。


「昔、南の砂漠地帯で同じような能力を使う女がいた。滞在中、三度ほど戦ったが勝てなかった」


「へー。ボスが勝てないなんて相当な強さだ」


「あの頃は波動の力には絶対的な自信があった。だが、まさかあんな辺境の地にあれほど強い人間がいるとは」


「まぁ、この能力と同じ能力だっとするなら……どんなに高波動だろとワイルド・ナインであろうと無意味でしょうからね」


青髪の青年はクスクスと笑った。


観客席も次第に気づき始めていた。

この"雨"が何を意味するのか。


ステージの下で見守るエリザヴェートも、この能力について気づいてしまった。


「は、は、は、波動の粒子を感じない………わ、わ、わ、私の闇の波動で無効化されない波動……むしろ私の波動が無効化されるなんて……」


ブルブルと身を震わせて、そう呟いた。

エリザヴェートがステージ上を見ると後退りする巨体の女にローラがゆっくりと迫っていた。

その姿は髪は発光し、体からは青色のオーラが放たれる。



巨体の女は恐怖していた。

見たことも聞いたこともない波動だ。


推測するに、


"波動を封印する波動"


しかも、その条件が"この雨"に当たったことによるのであればとんでもないことだ。


なにせこの雨は闘技場……いや恐らく町全体に降っている。

つまり町の人間すべての波動を封印していることになる。


「ありえない……ありえない……」


巨体の女は顔を引き攣らせて首を横に振った。

見るにステージ下にいるエリザヴェートにも雨が当たっている。

エリザヴェートの能力はある程度の高いランクの冒険者の間では有名だ。


エリザヴェートの能力は、

"近くにいる人間の波動を無効化し、放たれた波動を掻き消す"


だが、この雨はそんな闇の波動すらも封印していた。


ここで少し冷静に思考する。

いくら波動の能力を封印したからといって本人の戦闘能力が上がるわけではない。


今のローラは奇怪な姿ではあったが、どう考えても自分より戦闘経験は浅い。

それは先ほどの攻防で明らかだ。


巨体の女は後退りをやめた。

大斧を両手で持ち、前に構えるとニヤリと笑った。


「いくら、波動を使えなくしたところで、あんたは、あたいには勝てない!!」


そう叫び、ドン!と地面を蹴った。

大斧を振り上げてローラへ迫る。

数メートルしかない距離を一瞬で詰め、勢いよく大斧を振り下ろす。


大斧はローラの肩へ落ち、簡単に腕を切り落としたかに見えた。


だが、ローラの体は瞬時に青い液体と化して地面に落ちる。


「なんだと!?」


「"瞬水幻夢しゅんすいげんむ"」


ローラの声が聞こえてきたのは背後。

頭上からだった。


巨体の女は天を見た。

雨粒が目に入り顔を顰める。


その瞬間、右肩に激痛が走った。

ローラのレイピアが縦に突き刺さり、刃は肩から脇にかけて抜けた。


「がはぁぁぁぁ!!」


もともとヒビが入っていたレイピアは簡単に折れ、ローラはそのまま巨体の女の背後に着地する。

そこからアキレス腱を狙った水面蹴りで巨体の女を転ばす。


ローラは倒れ込んだ巨体の女の顔面目掛けて、逆手に持った折れたレイピアを突き刺そうと振り下ろした。


だが、刃の折れた先端は彼女の顔面を逸れて地面に突き刺さる。

ギリギリのところでズラしたからか巨体の女の頬には血が滲んだ。


「あ、あ、あ………」


ローラの眼光を近くで見た巨体の女は恐怖で涙を流した。

口を開け、体を震わせるだけで動けない。


そこにようやく事を理解した審判が入る。


「そ、そこまで!!勝者ローラ!!」


審判の言葉が闘技場内に響き渡たる。

観客席から歓声が上がるまで時間差があった。

それは誰も予想だにしないことの驚きと興奮からだった。


"低波動のローラ"はもういない。


ローラの通り名が"低波動"から"龍涙りゅうるい"に変わり広まるのは、この町を出る頃だ。



____________



ローラの双水龍


・一の龍水 青の龍涙(広範囲の波動使いの波動を封印する。さらに雨が降っている時は一度見たワイルド・ナインの能力を可能な限り水でコピーして使用できる)


・二の龍水 青龍極海(敵を水の牢獄で拘束する。"青の龍涙"中も使用可能)

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