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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
エターナル・マザー編
105/250

伝説の武具


問題、大問題であった。


闘技場に到着したローラとエリザヴェートは控え室まで歩く道中に多くの視線を浴びることとなる。


視線の理由は2人しかいないことだった。


それもそのはずで、優勝候補と言われるナイトガイのリーダー不在は注目を集めないわけがない。


「やっぱりリーダー不在は問題よね……でも……」


ローラが呟く。

それは淡い期待だった。

ガイが目覚めて駆けつけてくれる。

そう願っていたのだ。



運がいいことに、昨日おこなうはずだった赤髪のパーティの試合は時間の関係上、今日に持ち越されていた。


つまり早朝一番でおこなわれる予定のナイトガイの試合は本日の二戦目となる。

それがナイトガイにとって唯一の救いであった。


赤髪のパーティの試合中にガイが闘技場まで来てくれたら万事解決。

そう思いながらローラとエリザヴェートは選手控室に到達する。

そこにはベルバルド姉妹もいた。


ローラたちの到着と同時あたりか、アナウンスが響く。


"ブラック・ラビット対シュアイ・ロウはブラック・ラビットの勝利。次の試合出場パーティは中央ステージへ"


そのアナウンスが流れた瞬間、ローラの顔は青ざめた。


「はぁ!?なんでよ!!始まったばかりでしょうがぁ!!」


控室に響き渡るローラの怒声。

そこにいた他2チームはその声に反応してローラの方を見たが、どちらも彼女の言葉には同意だった。


なにせ始まって間もない。

明らかに"降参"したとしか思えないスピードだった。


「ありえないでしょ……どうやったらこんなに早く終わるのよ」


そう言っていると、ステージへ向かう入り口から出てきたパーティがいた。


たった2人のパーティだ。


赤髪でサングラス、漆黒のロングコートの男。

青髪のローブ姿で大きな杖を持った青年。


2人が歩くと他の2つのパーティは道を開ける。

みなが通り過ぎる赤髪の男を横目で見ているが、直視する者はいない。


それもそのはずで赤髪の男の表情は"怒り"に満ちていたからだった。


そんな状況だが、少し離れた場所にいたローラはまじまじと赤髪の男を見る。

尋常でない圧をこの男から感じていた。

一方、赤髪の男の後ろを歩く青髪の青年はニコニコとした笑顔で全く覇気を感じない。


2人はそのまま控室を出て行った。


息を呑むローラにエリザヴェートが声を掛ける。


「そ、そ、そ、そろそろ行かないとマズイわ」


「ええ、そうね……」


結局、ガイ不在のまま中央ステージを目指す2人。

緊張感の中、暗く長い通路を抜けて日光を浴びる。

瞬間、観客の声援が大きく響き渡った。


北側の入り口から入場した2人は南側の入り口を見る。

3人の女性が遅れて入場。

笑みを浮かべながら並んで佇む。


試合が始まるかと思われた時、またアナウンスが流れた。


"いよいよ、今回の闘技大会も残りわずかとなりました!そこで本日は特別に優勝者に贈られる優勝賞品をご覧に入れます!!"


そう言うと、さらに会場は沸いた。

ステージの西側に大きな台が用意され、そこに布が被さっている。

そこに露出度の高い服装でスタイルのいい色白の女性が現れて、覆い被さっていた布を勢いよく取った。


台の上に置かれていたのは"小さな剣"だった。

ダガーと言っても差し支えないほどの大きさ。

色はシルバー、形はS字で鋭利な作り、なにより持ち手の部分と刃の形状が一緒だった。

つまり、どちらを握っても刃になり、手を切ってしまうような不思議な形をしていた。


ここに再度、アナウンスの声が響き渡る。


"今回の賞品はこちら!!かの有名な六大英雄の一人が愛用したと言われる伝説の武具。星屑の短剣・スターブレイカーです!!"


ヒートアップしていた会場は一転して、しばらく嘲笑が聞こえた。

六大英雄はおとぎ話として語り継がれている。

その存在を否定する者も多い。


"六大英雄が使用した武具"なんて出されても信用に値しないのだ。


だが、もし本物だとするならば……


疑う中に、ごく僅かでもそんな思いが生まれる者たちもいた。


本物の六大英雄の武具。

世界で最強と言われたいにしえの魔王を討伐した武具であるならば、その価値はどれほどなのだろうかと思う者は少なからず会場にはいたのだ。


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