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最弱パーティのナイト・ガイ  作者: フランジュ
エターナル・マザー編
103/250

ダーク・ナイツ戦(5)


闘技場の観客席が沸き立つ中、ガイはステージを降りた。


待っていたのは長い黒髪で顔が見えない女性、エリザヴェート。

表情がわからず、なにを考えているのかはわからなかった。


「なんとかなったぜ……」


そう言うと途端に力が抜けるガイは、そのまま吸い込まれるように彼女の胸へ倒れ込む。

エリザヴェートはそれを抱きしめた。


「……いい匂いがする」


ガイはそれだけ言って気を失う。

いくら闘気でガードしていたとはいえ、ルガーラの正拳突きや斬り上げ攻撃をまともに受けていた。

そのダメージは確かに蓄積されていたのだろう。


エリザヴェートはゆっくりとガイを寝せる。

呼吸は浅いが命には別状はない。


「よ、よ、よく頑張ったわね……」


長い黒髪の中に少しだけ覗かせた口は笑っていた。


エリザヴェートは地面に置いてあった布に包まれる大きな何かを背負うと黒マントと長いスカートを靡かせてステージへと上がる。


相手パーティからも1人、巨漢の男がステージへと上がってきた。

軽装の鎧から見える腕の筋肉は凄まじい。

ルガーラとはまた違った圧を感じさせる、角刈りの優しそうな男。


濃いブラウンの波動石を見るに土の波動を使うのだろうと予測できた。


両者が向かい合い、その間に審判が立つ。


「大将戦は波動の使用を許可する。ただし、相手を死に至らしめるようなことがあれば即時失格だ」


審判はピリピリしていた。

何せ予選での一件がある。

赤髪の男の波動によって死傷者が多く出たのを懸念して強く促しているようだった。


エリザヴェートと巨漢の男が頷く。

審判に促され、ゆっくりと距離を取る2人。


位置に着くと巨漢の男は背負った大斧のグリップを掴むと勢いよく前へと振る。

そのまま両手で力強く握ると前に構えた。


エリザヴェートも大きな布に包まれた何かを掴むと前へ。


そして、その布を取った。


歓声が上がる闘技場は、ゆっくりと静まり返った。

みなが絶句したと言ってもいい。

明らかにエリザヴェートの武具を見てのこと。

唖然とし、息を呑む者すらいた。


エリザヴェートの武具は人の背丈ほどある持ち手部分、さらに人の背丈だけある湾曲した刃。

折りたたまれているのか、持ち手側に刃がある。


エリザヴェートは勢いよく横に武具を振ると

鳥が羽を広げるが如く展開し、甲高い金属音と共にL字を作った。


誰がどう見ても、それは"巨大な鎌"だった。


華奢なエリザヴェートの体では、どうやっても操れそうにないと思わせるほど、とんでもなく大きな鎌だ。



巨漢の男の大斧を握る手には、さらに力が入る。

相手は噂に名高いS級冒険者。

未だに、たった3人しか持たない"ナイト"の称号を賜った者だ。

女性だからといって甘く見ると怪我では済まない……そう思っていた。


審判は両手を上げつつ、2人の姿を交互に見る。

そしてついに、その時が来た。


「始め!!」


審判が叫んだ瞬間、動いたのは巨漢の男だ。

大きく足を上げ、それを一気に地面へと落とす。


ドン!という轟音と共に、石造りのステージに亀裂が入る。

それはエリザヴェートの足元へと届くほど長い亀裂だった。


そして、それを追うかのように巨漢の男の足元から無数の突起した岩がエリザヴェートへ向かって猛スピードで突き出していく。

当たればひとたまりもないような形状である。


「これで終わってくれ……!!」


一撃必殺。

これがバトルにおいて最も望ましい展開であることは間違いない。

長引けばお互い疲弊し、泥試合になることもある。


「ヒヒ……」


「な、なんだと……」


俯くエリザヴェートは笑ったようだった。

逆に驚愕した表情の巨漢の男。


それもそのはず、エリザヴェートにあと数メートルで届くはずの岩が途中で途切れたのだ。

再び発生する気配を見せない。


「なぜだ……この技はステージぎわまでいくはずだが」


「ざ、ざ、ざ、残念ねぇ……私には波動は効かないわよ。ヒヒ……」


巨漢の男はエリザヴェートから放たれる"ドス黒いオーラ"が見えた。

触手のようにウネウネと伸びる黒いオーラは、ちょうど岩が止まったあたりまで伸びている。


「なんという……吐き気がする波動だ」


「よ、よ、よ、よく言われるわ。じゃあ、今度は私の番ね」


エリザヴェートは顔を上げた。

長い黒髪から少しだけ覗かせる眼球。

それを見た者、すべてを恐怖させ動けなくした。


巨漢の男も、その1人だった。


エリザヴェートが鎌を下に構えて地面を蹴る。

たった、"ひと踏み"で数百メートルある距離を縮める。

その際、地面の岩は全て砂へと変わり四方へと飛び散って消えた。

エリザヴェートの闇の波動は巨漢の男が放った土の波動を完全に打ち消していたのだ。


「クソ……動け……動いてくれ!!」


恐怖で動けない巨漢の男は自分自身に叫ぶ。

迫るエリザヴェートの髪は風で靡いて、全ての顔があらわになる。


とても美しい女性だった。

だが、その表情は一転して不気味な笑みを溢す。

口は裂けそうなほど吊り上がり、目は眼球が飛び出しそうなほど見開かれていた。


エリザヴェートが放ったのは高速の大鎌の片手横振り。

巨漢の男はギリギリ反応し、大斧の刃をちょうど自分の頭のあたりまで上げてガードした。


だが、音もなく振り抜かれる大鎌。

時間差で巨漢の男の額に、一線の切り傷ができ、ゆっくりと血を滴らせた。


「くっ……」


片膝を着き、俯く巨漢の男。

大斧は先端が綺麗に真っ二つになっていた。


そこにエリザヴェートは鎌を振った勢いで横に一回転し、両手持ちに切り替えた大鎌を振り下ろす体勢。


「……マズイ!!そこまで!!」


審判の叫び声だった。

だが、エリザヴェートの勢いづいた振り下ろしは止まる事がない。


闘技場は一瞬で緊張感で包み込まれたが、鎌は軌道を横に少し変えて地面に突き刺さるようにして振り下ろされた。


「あ、あ、ああ、いけない、いけない。殺すところだったわ」


会場は騒然とした。

巨漢の男は審判の判断に助けられたと言ってもいい。


"この女は間違いなく相手を殺すつもりだった"


皆がそう思った。

相手パーティのメンバーもエリザヴェートの発言には言葉が無かった。

"自分たちは運が悪かった"……そう思うほかなかったのだ。



こうして、この試合はナイト・ガイが勝利を収め、次の試合へと駒を進めた。


次の試合は翌日であったが、ここである問題が起こることとなる。

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