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先週の土日 駅のホーム 眠そうな人が w

作者: 阪中楓

 これは先週の土日、そう、土曜日から日曜日にかけての日を跨ぐ時間帯のなさそうでよくあるお話。

 俺は社畜、あの日も納期に追われて残業して終電で帰る悲しい日常を過ごそうとしていた。何のために生きているのかぼんやり考えていた、駅のホーム。

 ふと自販機近くのベンチに目をやると、それはもう絶世の美女がものすごい勢いで舟を漕いでいた。嵐の中心の大型船にすら迫る豪快さだった。もしやあの人は助走をつけて自分の膝を頭突きで勝ち割ろうとしているのではないか、もはや世界で一番どうでもいいことを考えざるを得ないほど見事な眠そうな人だった。

 あんなに眠くなるほどの何かに耐え、終電が来ようとする時間まで起きていたのか。美人でも苦労するんだな。いつの間にかくだらないことを考える半面で、美人のそれまでの人生を妄想していた。そして気づいたら眠そうな人が漕いだ船の数を数えていた。

 ふと我に返った。何をやっているんだ俺は。……。

「ふっw」

 小さく、鼻を鳴らすようで、確実に笑ってしまった。いや、笑った。いつぶりだろう、自然と笑みがこぼれるのは。仕事ではいつも愛想笑い、周りの人に合わせるような仮面のような笑顔が張り付いていたが、こうやって何気なく笑ったのはいつぶりだ。

 なんだか急に体が軽くなったような気がした。時計の針は12時を超えていた。そろそろ電車が来る頃だろう。アナウンスが流れる。

 アナウンスに反応して眠そうな人も目が覚めたようだ。立ち上がり黄色い点字ブロックの二歩前まで進んでいた。

 あの日のことはそれだけだ。そのあとはただいつも通り帰って寝た。眠そうな人とは乗った車両が違ったためどこで降りたかも、車内でも舟を漕いでいたのかも分からない。

俺はその三日後に仕事をやめ、のんびり過ごしている。本当にそれだけだ。

終わり。

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