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5(終)
体育館の隅に一人ぽつんといたいつかの俺の隣には、今は天野がいる。それは、やっぱり俺にとって一番楽しい時間で一番大切な時間なのかもしれない。
一緒に居る代わりに恋人になってくれなんて正直ずるい聞き方だけど、俺の中にどれだけ天野の存在が大きいのか、天野は多分知っていてそんな聞き方をしたんじゃないだろうか。何となく天野の思惑に乗せられた気がして、少し悔しくなる。
でも俺だっていつかは今より友達を増やせるように頑張るし、恋人になってまで一緒に居なくても大丈夫なくらいに、徐々に天野の存在がちょうど良く俺の中に収まってくれればいい。
けれど…
(…そうは言っても、天野とのデートは本当に楽しかった…)
だからどんなに友達ができようが、可愛い女の子の彼女ができたとしても、やっぱり天野は俺の中で大きく占めるのかな、なんていう予感がするのも確かだった。
新しい俺たちの関係性が始まった今、これから先の事なんて分からないけれど、今はただ天野と楽しい時間を過ごしていたい。
煌めく月の下、手を繋いで帰る天野の隣で俺はそんなことを願うように思った。
終わり