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愛されない転生魔女は魔王に愛される  作者: 星影ネル
1章 聖王謀殺編
2/3

2話

何とか続きを書けました…戦闘シーン初めて書いたのでたぶん微妙かもしれないです…申し訳ないです

グラッジの首飾りを探して魔界に行った時はまだ空は明るかったが人界に帰って来た時には外はすっかり暗くなっていた。時計を見れば二十時を過ぎている。

食事をしないまま行ってしまったので腹の虫が鳴いてしまう。

ヴァルプルギス家の者は家に居ることが少なかったり居ても部屋に篭ってるいることが多いので、皆食事をする時は各々食べたい時に食堂に行って使用人に頼むようにしている。

自分も何か食べようかとグラッジを抱いて部屋を出ようとドアノブに手を掛けた時。


「コンコンッ」


窓硝子を啄く音が聞こえ振り返ると窓の向こうに一羽の大鴉(レイヴン)がいた。

近づいて窓を開けてやると大鴉は喋り出した。


「コンバンハ、ヴァルプルギスノ魔女。急ナ仕事ヲオ願イシタイ」

「こんばんは。管理者(ガルディアン)の仕事かしら」

「サヨウ」


管理者。強い力を持つ魔法使いや聖者によって構成されており、悪魔や精霊に関するものや、一般の人間では解決出来ない事件を解決するための組織である。

ヴァルプルギス家の者は管理者になることが多く、私も無論管理者の一員として働いている。

この大鴉は管理者の上層部の契約している悪魔だ。仕事の伝達や報告役として動いている。

急な仕事という事は大きな事件だろうか。私は大鴉に話の続きを促す。


「どんな内容かしら」

「近頃悪魔ノ行方意不明者ガ増エテイル。密売人(ブローカー)ノ可能性ガ高イト」

闇市(アンダーグラウンド)絡みね。わかったわ。すぐに行くわ」

「受諾感謝スル」


仕事内容を聞き私は腕に抱えていたグラッジを床に降ろす。大人しく話を聞いていたグラッジは自分も行くと言わんばかりにこちらを見上げて尻尾を振っている。だけど。


「グラッジ、貴方は魔界にお帰りなさい」

「なんで!?ボクも行く!」

「いいえ。今回は様子見も兼ねて貴方はお留守番よ。何かあったら呼ぶから。だからいい子にしてるのよ」

「そんなぁ……」


落ちこみ大きな耳を垂れさせているグラッジの頭を優しく撫でてあげる。

密売人の相手は少々厄介だ。密売人は悪魔や聖霊を違法に捕獲しては闇市などで売り捌く犯罪者達の事だ。対聖魔の道具や術を使う事が多い。だから今回はグラッジを連れて行かない。

グラッジの強さはよくわかっている。それでも他人が傷付く姿はあまり見たくない。

グラッジの頭から手を離し私は開け放っていた窓から飛び降りた。

飛び降りた瞬間大鴉が下から舞い上がり私を背に乗せて雲で月が隠れ明かりのない暗い夜空へと飛んで行く。大鴉と書くだけあってその身体は大きく翼を広げれば二メートルを越す。人一人なら背に乗せて飛ぶことが可能だ。本当は空を飛ぶのは嫌なのだが早く目的地まで行くには飛んだ方がいい。


「場所は?」

「王都ノ南西ニ密売人ラシキ人物ガイルト報告アリ。スデニ二人ノ管理者ガ現場ニ向カッテイル」

「わかったわ」


王都の南西ということは一般市民の多い区画のはずだが何故そこに密売人がいるのか疑問が湧く。ひとまず先に向かっている二人と合流して情報を確認しよう。

目的の王都南西部付近で仲間の管理者を見つけ大鴉がその側まで急降下していく。思わず背中の羽を強く握ってしまい少し羽が抜けてしまった。

地面に降り立ち大鴉から降りると見た目が三十代くらいの仲間の男が話しかけてくる。


「増援とは貴女か魔女」

「えぇ、現状報告をお願いするわ」

「現在ここから西南西方向の二つ先の通りで密売人らしき男が三名、対魔用の道具を所持しているのを確認した。もう一人の管理者が近くで動向を監視している」

「わかったわ。それじゃあ私達もそこに行きましょう」

「噂に聞いた通り話が早くて助かるな。こっちだ」


男性の後をついて走っていく。路地を通りもう一人の仲間の所に合流しようとした矢先、路地の出口から魔力の閃光と爆発音が聞こえた。


(監視がバレて戦闘に入ったという状況……みたいね。監視していた管理者では人数で不利に近いわね。仕方ない)


元々人間離れをした魔力を持って生まれたこの身体は一般人に比べかなり丈夫に出来ている。そこにさらに局所的に魔力を廻して強化することにより、身体能力を飛躍的に高める事ができる。その強化魔法を足に使い強く地面を蹴り前へ跳ぶ。その勢いのまま狭い路地の壁を並行に走り先に走っていた仲間を追い越し通りへ飛び出て状況を確認する。

三メートル先に茶髪の若い青年が一人防御魔法を貼っている。おそらくもう一人の管理者だ。

十メートル先に顔をフードで隠していて年齢や人相がわからない男が三人、手に何か道具を持っている。こちらが密売人で間違いないだろう。

管理者の青年は密売人の対魔用の道具で魔力を削られているのか肩を上下させて消耗が激しいように見える。

状況を確認しながら密売人と対峙している内に仲間の男も通りに出てきた。これで人数では五分となった。青年の守りは彼に任せよう。


「そこの茶髪の貴方は下がりなさい。もう一人の方は彼の守りに専念を。密売人は私が捕えます。」

「あぁ……わかっ、た」

「了解。おい坊主こっち来い」

「貴様……その傷んだ赤毛……もしやヴァルプルギスの魔女か」


仲間に指示を出していると、どうやら密売人はこちらを知っているらしい。明らかな敵意と憎悪の空気が伝わってくる


(傷んだ赤毛か。そうね、醜い色の髪の毛をしていればわかるわよね)


「えぇそうよ」

「ふふふ、ふふふふふ」

「……何を笑っているのかしら」


密売人の一人が不気味に笑い出す。

密売人とは何度も相手をしてきたから恨まれていても当然ではあるが何か別の感情が混ざっているように感じられる。これは、悦び?

何を企んでいるのか読めない。時間を与えて何か術などを使われると面倒になる。ここは一気に終わらせよう。


「悪いけど貴方達と遊ぶつもりはないわよ。薔薇の花弁は我が望み、“薔薇(ローゼン)の荘園(グルントヘルシャフト)金鎖(きんさ)”」


詠唱と共に上昇した魔力を茨の形へと具現化させていく。咲く花弁の色は黄色。

薔薇の荘園は私の魔力を花の色に合わせた能力に特化させた変異魔法。金鎖は拘束に特化した性能を持つ形態だ。


「さぁ大人しく捕まりなさい」


複数の茨を地面へと潜らせ密売人達の足元から瞬く間に出現させる。捕らえた。


挿絵(By みてみん)


「くくく!術式発動!」

「ッ!?」


茨を密売人達に巻きつかせて拘束したと思った瞬間、笑っていた密売人が手にしていた道具を発動させ周りにあった茨を霧散させた。


(以前までの対魔具よりも性能が上がっている?私の茨を無効化するものなんて……まさか)


「我々も貴様と遊びたいのだがね、今はそんな暇がなくてな」

「何、これが魔女に効いたという成果だけでも上々だ」

「そういうわけだ。これにて失礼させてもらう」

「待ちなさい!」


この場を去ろうとしていく密売人を追っていこうと前へ一歩踏み出した同時、無効化した道具とは別の道具を持った密売人がこちらに何か術式を発動しようとしていた。


(あれは攻撃の術式。狙いは私じゃない。後ろの二人……!)


前に飛び出した体を咄嗟に攻撃の射線上を遮るように転換させる。私の魔法を無効化した道具を持っているのだ。後ろの二人の防壁魔法など紙切れのように破られるかもしれない。

術式から強烈な閃光と共に光の矢が放たれその矢が左の二の腕に突き刺さり痛みが走る。


「ツ……ぅ……」


閃光が止み眩んだ視界が戻った時には密売人の姿は消えていた。逃がしたか。


「お、おい大丈夫か魔女……」

「大丈夫よ」

「でも血が、それに抉れてるんじゃ……」

「問題ないわ。密売人は取り逃してしまったから貴方達はここの後片付けをお願いします。私は上に報告しに行きますので」


彼らに怪我ないのを確認し後始末をお願いする。左腕から血を滴らせる私を見て彼らは何か言いたげな目をしていたけど少し恐怖の色を宿していた。畏れられようとも仕事はしてもらう。

この場を任せゲートを開いて移動する。


(私にはこれしか最適な判断が出来なかったからいいのよ。どうせすぐ治るのだから守れたならそれでいいわ)


人界から人界へとゲームを使っての移動は出来ない。上手く座標を繋げないからだ。なので一度魔界を経由して目的の場所に行く。

着いた場所は王都の中央区にある屋敷。管理者の本部だ。この時間なら悪魔と魔法使いの方が多くいるだろう。

正面の扉から入り受付の悪魔嬢に報告の為の謁見を取り次いで貰い階段を登って幹部の部屋へと向かう。血はもう止まっているから廊下を血痕で汚さずに済んでよかった。後で怒られてしまう。

長く入り組んだ廊下を歩いて行き目的の部屋の前に着いて扉をノックする。


「入れ」

「失礼します」


入室の許可を得て部屋の中に入ると白髪混じりの黒髪に皺の刻まれた鋭い目をした壮年の男性が綺麗に手入れをされた机越しに両肘を肘掛に置き深く椅子に座っていた。この人は管理者の幹部であり私の叔父にあたる人だ。

私は机から三歩離れた所まで行き先程の仕事の報告をする。


「先刻王都の西南区画にてあった密売人の案件についてご報告致します。密売人の数は三名。それぞれ対魔具を所持しており、交戦の結果取り逃してしまいました」

「お嬢が取り逃し怪我を負わされるとは珍しい。何かあったか?」

「はい。密売人が所持していた対魔具ですが以前の物よりも強力な物になっておりました。私の魔法を無効化していたのでここからは憶測なのですが」

「構わない。報告を続けてくれ」


そう、憶測。でも強い魔力を持つ私の魔法を破った事に違和感がある。

対聖魔の道具を作るには聖界や魔界の材料を使う。強い道具を作るには比例して珍しい素材を使用することになるが並の人間ではまずそれを揃える事は出来ないし作れても私の魔法を破るのは難しい。だが、もし可能にするものがあるのならば。


「おそらく、その対魔具の材料に聖霊が使われた可能性があります」

「聖霊をか……」

「はい」


どの材料よりも高純度の聖力や魔力を持つのは他でもない聖霊と悪魔だ。本来なら条約に反するし倫理的にも許されないことだ。しかし密売人なら有り得るかもしれない。


「わかった。そちらについてはこちらでも調べておこう。お嬢にも協力を頼むとは思うが」

「わかりましたスクレト叔父様」

「もう夜も遅いからお嬢は屋敷に戻りなさい」

「はい、おやすみなさい叔父様」

「あぁおやすみ」


叔父に報告をし終え部屋を退出する。ようやく張り詰めた糸が切れ空腹を感じた。


「そういえば……ご飯を食べないで出て行ったんだったわね」


早く帰って何か食べよう。そう思い再びゲートを開いて屋敷へと戻る。

対魔の力のせいか傷の治りが遅い。血は止まっているがまだ塞がっていない。これなら食事の前に着替えた方がいいだろうかとそんな事を考え廊下の角を曲がると自分の部屋の前に人影があった。


「お前その怪我はどうした?」


明かりの少ない夜の廊下でも目立つ赤毛に燃える瞳をした仮面をつけた青年の見た目をした魔王がそこに。

一話だけでなく二話目も読んで頂きありがとうございます!

次から魔王と魔女の関係が始まっていくので更新をお待ち頂ければと思います!

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