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2 魔鉱石って意外と凄くね?

 「さて、これからどうするかな」


 俺はこんな姿に転生させたあの少女に憤りを感じるも、こうなっては仕方がない。

 時間も有り余っている現状、今のこの魔鉱石の体について調べてみることにした。


 「うーん、この体どうやら声は出せるみたいだな。ただ、想像通り動くことは出来ないか……」


 俺は何とか体を動かそうと力を込めようとするが、手も足もない魔鉱石。

 今いるその場から1ミリも動くことは出来ない。

  

 しかしそれでも諦めずに全身に力を込めると突如体から2本のトゲの様なものが発生。

 それは地面に突き刺さりまるで2本足で立っているような状態になる。


 「な、なにこれ……。き、きもい!! 気持ち悪いんですけど!!」


 こんなの、知らない人が見たら絶対引くだろ……。

 だって、石が細い棒で立っているみたいなもんだし……。

 まぁ、ここにはその誰かが1人もいないんだけどな。


 「……でもこれ、どうやったら戻るんだ??」


 恐らくこれはゲームとかでよくある形状変化というものなんだろう。

 でもここからどうしたらいいのか……。

 いや、待てよ? この力を使えば移動も出来るんじゃ……。


 俺は先ほど動きたいと力を込めた際、足で動くイメージを思い浮かべた。

 それがこの2本の足の様なトゲを生み出したのだとしたら、俺の体はイメージで形が変わるということだ。

 

 俺は意を決し、あるイメージを思い浮かべる。


 すると正面部分に先ほどと同じトゲが生まれ、その重みで俺の体はゆっくりと前方へと回転を始めると先ほど発生したトゲが地面に刺さり、最初に発生したトゲが地面から離れたのだった。


 「よし、上手くいった! これを繰り返していけば転がりながら移動が出来る!!」


 自分の考え通り上手く言ったことに調子に乗った俺は、先ほどと同じように移動したい方向にトゲを発生させ転がるように移動を続ける。


 「アハハハハッ!! これはおもしろい!!! 久しぶりに動くからな、楽しくてしょうがないぜ……、あ、あれ??」 


 だがしばらく移動を続けた俺は突如視界が真っ暗になり、意識を失った。

 

 その後ようやく目を覚ました俺だったが、その時には辺りは暗闇に包まれ夜になっていることを理解するのに時間はかからなかった。


 「……な、何がおきたんだ? 急に意識が」


 そこで俺はあることに気が付く。

 視界の右上、そこに浮かび上がっている数字に。


 ……MP3/50?? MPってことは、魔力のことだよな??

 もしかしてこの数字がさっき意識が飛んだことと関係あるのか?? 


 「試してみるか……」


 俺はそう呟くと、元の姿に戻っていた自分の体に再びトゲを発生させる。

 すると、MPの数値は3/50から2/50へと下がったのだ。


 「なるほど、つまり俺が体を形状変化させるとMPが減るってことか」


 それなら0になったら意識を失うってことか?

 でも今は2/50で、0ではないよな……。


 俺は浮かび上がる数字を不思議に思いながらも体のトゲを収める。

 だがその後しばらくすると、浮かび上がる数字に変化が起こった。

 

 そう、また3/50へと数字が増えたのだ。


 「……あれ、増えた。どういうこと??」


 もしかして、魔力は時間で増えていくのか??

 あ、そう言えば……。


 俺はそこであることを思い出す。

 あの白の世界にいた少女、その言葉を。


 「あいつ、俺を転生させる前にいくつか能力もつけてやるって言ってたな……。もしかしてこれがその能力なのだろうか?」


 いや、ゲームやアニメでもMPは時間と共に回復するものだったような。

 うーん、もうよくわからん!


 「……寝るか」


 俺は考えるのをやめ、眠ることにした。

 この体は、以前と同じように寝ることが出来るのをこの世界に来てから気づいていた。

 だがその時の俺はまだ知らなかった。


 少女が俺に与えた能力、その一つによってMP値がどんどん上がっていることに。








 



 「……うわぁ!!」


 どれだけ眠っていたのだろう。

 俺は体を襲う衝撃で目覚めると、辺りを見渡した。


 どうやら先ほどの衝撃は、俺の体をオオトカゲが蹴り飛ばした際のものだったらしい。

 

 吹き飛ばされた衝撃で転がる俺だったが、しばらくしてようやく動きが止まると、そこで辺りが既に明るくなっていることに気が付き、太陽の位置から昼頃であることが想像できた。


 「……ったく、いくら俺が魔鉱石だからって蹴り飛ばすことは無いだろう! 次やったらこのトゲを思い切り突き刺してやるからな!!」

 

 シュッ! 俺は頭上にトゲを発生させ先ほどまでいた場所に見えるオオトカゲに声を上げるが、オオトカゲは全く気にもせずその場を離れていった。

 

 その後ろ姿に俺も徐々に落ち着きを取り戻すと、意識を失った以前の事を思い出し急いでトゲを元に戻す。

 だが俺がMP値に目を向けると、その数値は記憶にある物とは全く違っていたのだ。


 えっ……、62/63??

 最大値そのものが増えているのか??

 

 「MP値が上がるときって、レベルアップとか職業クラスチェンジとかだよな? でも俺寝てただけだし……」


 そこで俺はもう1つの変化に気が付いた。

 視界の左下、そこに文字が浮かんでいたのだ。


 「なになに……、MP値が吸収ドレインによって63に増えました? 吸収ドレインってなんだ?」


 吸収ドレイン。確かゲームだと相手から魔力とかを吸収する魔法だよな?

 でも俺は誰からも魔力を吸収していない……、そうなると……。


 「もしかして、俺って周りから魔力を少しずつ吸収してるんじゃないか? だから寝ている間にMP値が増えたってことなのか?」


 もしそうだとすると、俺は無限に魔力をため続けることが出来ることになる。

 ……あれ、これってもしかして凄くね??


 「フフフフフッ……、これがあいつがくれた能力って訳か。いや、魔鉱石は元々魔力が付与された鉱石。これも魔鉱石の能力なのかもしれない」


 「グオォォォォォ!!」


 「うわっ、びっくりした……、ドラゴンか。そうだ、こいつで試してみるか!」


 俺は背後から咆哮を上げたドラゴンに気が付くと、トゲを出しこちらに地響きを起こしながら近づいてくるドラゴンへと向きを変える。

 そしてドラゴンが俺の頭上を過ぎ去る直前、体からいくつもの小さなトゲを出し右後ろ脚にへばりついた。


 「よし、上手くいった! あとは……」


 こいつも俺が付いていることに気が付いていないみたいだし、少し実験台になってもらうぞ。

 

 俺はしばらくドラゴンの足にへばりつき続けた。

 すると足にドラゴンは元々魔力の多い生物だからなのか、これまでは感じることのなかった魔力が体の中に流れ込んでくる感覚を味わうことが出来たのだ。


 それは数値にも現れる。

 俺が十分と感じドラゴンの足から離れた時には、MP値は181/181にまで増加していた。


 「ほうほう、これはすごいな! なになに、吸収ドレインによりMPが181まで増加、とな」


 俺は左下に浮かび上がった文字を見つめ笑いをこぼす。


 吸収ドレイン、少しだが分かってきたぞ。

 俺は何もしなくても周囲から、いや大気言うべきかそこから少しずつ魔力を吸収できるらしい。

 そしてドラゴンなどの生物からも直接吸収することも出来る、という訳か。


 それなら他の生物、人間からも吸収することが出来るんだろうか?

 まぁ、ここには人間なんていないから確かめようもないんだけどな。


 「……でもこれは面白い! やることも無いし、どんどん魔力を吸収してやるぜ、ハハハハ!!!」


 俺はそう意気込むが、ドラゴンが去った今、辺りに生き物の気配は感じられない。

 どうやら俺は先ほどオオトカゲに吹き飛ばされたことでドラゴンの縄張りに入ってしまったらしい。

 

 ドラゴンはこの世界でも最上位に位置する生き物らしく、そんな生物に近づくもの好きな奴はいないようだ。


 その後、時折現れるドラゴンから魔力を頂きつつもその他にやることのない俺。

 移動も考えたが、魔力を減らしたくないという訳の分からない理由からその場に留まり続け、近くに生えている木々に1日ごとの印をつけ続ける毎日。




 そして気づいた時には、俺はこの場所で100年の年月を過ごしていたのだった。


 「…………暇すぎる!!!」


 いくら何でも移動すればよかった!!

 でもここまで動かなかったから、変な意地が出てしまったんだよなぁ……。

 

 「はぁ、まぁいいか。どうせ死ぬことは無いんだし………。よし、寝るか」


 だが眠りに落ちる俺は気づいていなかった。

 背後の森の中からこちらを見つめ、徐々に迫ってくる者がいることに……。 

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