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1 転生先は魔鉱石!?

 「今日も、ここは平和だなぁ……」


 俺はいつものように青く広い空を見つめる。

 

 ここへと飛ばされ、一体どれだけの時間が経ったのだろうか。

 時間を調べようにも、ここにはスマホはおろか時計すらない。

 はぁ、流石にこれだけ一人なのも暇だなぁ……。


 っと、危ない危ない。

 皆さんには何がどういう訳か意味が分からないだろう。

 暇な事だし、ここで俺がこの場所に来たいきさつ、そしてその理由をお教えすることにしようか……。



 ドラゴンに巨大な鳥、更に爬虫類や昆虫を巨大化したような生物まで、様々な生物が行きかうこの渓谷。

 今より少し前、世界に飛ばされた当初はそれらの見慣れない、いや恐怖すら覚える生物達を目の当たりにし、俺は命の危険を覚えた。

 だが、逃げようとしても上手く体が動かず、前を見ればこちらへと向かってくるドラゴン


 俺の命もここで終わりかぁ……。


 そう考え、諦めた俺は逃げようとするのをやめた。

 だが不思議なことにドラゴンはそんな俺などまるでいないかのように目の前を通り過ぎたのだ。


 どういうことだ??

 でも確かに目があった気がしたが……。


 通りすぎるドラゴンの巨体。

 その姿を見つめる俺は、強い衝撃を受け突如吹き飛ばされる。

 痛みは無いが、どうやらドラゴンの尾が当たったらしい。


 宙を舞い、先ほどの場所からどんどん離れていく俺。

 だがしばらく地面を転がり、小さな水たまりの前でようやく動きが止まった。


 「くそ、ひどいことしやがるなぁ……。でもあのドラゴン、なんで俺を無視して……、な、何だこれ?!」


 俺はそこでなぜドラゴンが俺を無視したのかを理解する。

 水たまりに映る俺の姿。そこには見慣れた自分の姿はなかった。


 あったのは、美しく七色に光る石。

 そしてそれはどうやら間違いなく、この俺の姿だったのだ。


 「……どういうこと??」


 そう、俺はどうやらこの石、魔鉱石に転生したらしいのだ。











 更に少し時間は遡り、場所は変わる。

 そこは真っ白な世界。言葉通り白以外は何もなく、ただ白が広がるその世界。


 俺はおおとり勇也ゆうや、20歳。近所の大学に通うゲーム好きな大学生だ。

 そんな俺は気がつたときにはこの世界におり、いつの間にか目の前には光輝く10歳ほどの黒髪の少女が1人こちらを見つめているが、口を開くことは無かった。


 「あの……、何か? それよりもここって一体……」


 ここはどこなんだ??

 俺はここに来るまでの経緯を思い出そうと考え込む。

 すると、目の前の少女がようやく口を開いた。


 「鳳勇也……。あなたは先ほど三輪車に轢かれその生涯を終えた。これが証拠。そしてここはいわゆる死後の世界よ……、クククッ」


 三輪車だって………?

 ここで俺の頭の中で記憶が一気に蘇った。

 そうだ、俺確か3日間徹夜でゲームをしてて……。

 食べ物が底をついたから外に出たけど、寝不足でフラフラで……。


 「後ろから三輪車に乗った子供に気づかないで、それで」


 いつもなら三輪車如き、ぶつかったところでなんてことないだろう。

 でも体力の限界だった俺はその衝撃で道路に……。


 「ククククッ……、アハハハハ!! 私も長い間この仕事をしてるけど、三輪車に轢かれて死んだ人は初めて見た」

 

 お、お願いだからそれ以上言わないで!

 

 「…………も、もうやめて」


 「お、お腹痛い……」


 こいつ、やっぱり笑いを堪えるのに必死なだけだったのか!!

 可愛い顔してるくせに、なんて失礼な……。

 でも俺、本当に死んでしまったのか……。


 「……な、なぁ? 俺はこれからどうなるんだ? もしかして地獄に……」


 俺が少女が笑い転げる姿に苛立ちを隠しながら尋ねると、少女もようやく息を整え答えた。


 「そ、そんなことは無いわよ? 流石にあんな死に方した人に地獄送りは可哀そうでしょ。あなたは特に悪いこともしてないみたいだしね」


 「よ、よかった……。それじゃあ天国に行けるのか??」

 

 「え、えっと……、そういう訳にもいかないのよね」


 俺は先ほどまでとは打って変わり、視線を逸らす少女の態度を見逃さなかった。

 

 「どういうことかな? 詳しく教えてくれる??」


 「あ、あはははは……。じ、実はね」


 少女は俺に両肩を掴まれたことで観念したのか、小さく話始める。


 「本当はね、あなたは死ぬはずじゃなかったというか……」


 「はぁ? どういうことだよ!」


 「だからぁ! 私が間違ってあなたを殺しちゃったの! 寿命だと思って今日死ぬように設定したんだけどあんな死に方したから変だと思ってさっき調べて見たら、同姓同名の別人だったのよ、えへへへ」


 えへへへ、じゃねぇよ!

 それなら俺は勘違いであんな恥ずかしい最期を迎えたってことか?

 ふざけんなよ……。


 「で、でもね! あなたを生き返らすことは出来ないけど、他の世界に転生って形でなら生まれ変わらせることは出来るの! だからそれで何とか……」


 「いやいや、無理だろ。大体そんなこと……」


 「お願い!! じゃないと私この仕事から降ろされる! い、いやそれどころかこの世界から追放もあり得るの~」


 「そ、そんな事俺の知ったことじゃないだろうが、この馬鹿幼女が!」


 「そこを何とか、お願いします!!」


 な、なんて素早い土下座なんだ……。


 俺は初めて目にした素早く、これ以上ない程の美しい土下座を前に、呆気にとられそれ以上何も言うことが出来なくなる。

 そしてしばらくその姿を見つめた後、大きく息を吐き少女に口を開く。


 「……あぁもう! わかったよ! でもその代わり俺の願いは叶えろよな?!」


 「それはもう! 何でも仰ってください!」


 少女は俺の言葉に、目を輝かせ側にすり寄ってくる。

 

 こいつ、調子よすぎだろ??

 でも転生ねぇ……。漫画やアニメなんかでは見たことあるが、何を願えばいいのやら……。


 俺は考えた。しばらく考えた。

 そしてようやく思いついた言葉を少女に伝えた。


 「……それじゃあ、二度とあんな死に方をしないように、朽ちず痛みも感じない体に転生してくれ」


 「そ、それでいいの??」


 「ああ。それにお前と話すのも、もう疲れてきたんだよ。早くやってくれ」


 「分かったわ、ありがとうねユウヤ! これで私も救われる……。 あとオマケにいくつか能力もつけておくわ!」


 「……はぁ、とんだ勘違いでこんな目に合うとはな」


 「まぁまぁ、きっと次の世界も気に入るはずだから!」


 それは俺が決めることだと思うのだが……。

 俺がそう思ったのも束の間、笑みを浮かべる少女の腕が青く光を放ち始めると、俺の足元に魔法陣が浮かび上がった。

 

 どうやらこれで次の世界に転生されるらしい。

 全く、俺の人生呆気なかったけど、次は上手くいくといいなぁ……。


 「それじゃあ行くわよ! 転生~!!」


 「……ぬあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺の体が光に包まれると、一瞬で視界は失われ意識が遠のいていく。

 だがしばらくして、俺の意識は再び覚醒したのだった。



 目が覚め、目にしたのは見たことも無い生き物、そして美しい自然。

 しかし先ほど言ったように、俺は以前の姿ではなく、魔鉱石に転生していたのだが……。

  

 「あの糞幼女……。確かに朽ちず痛みを感じない体って言ったよ? でもさ、これは違うだろぉぉぉぉ!!!」


 こうしてこの異世界で俺の第二の人生、いや魔鉱石としての魔鉱石生? が始まるのだった。 

 

 


 

 









 


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