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妖艶な罠

 爽児は、ジェットバイクでハイウェイを飛ばし、ミレーヌに指定されたカオスシティのパレスホテルに到着した。威容を誇る荘厳な建造物を眼前にして、暫く我を忘れた。

「普通なら、俺には一生縁の無い所だな。」

 エントランスを潜ると、更に壮麗な装飾が施されたロビーと、業務用の笑顔のフロントマンが爽児を出迎えた。

「いらっしゃいませ。御客様。当ホテルにどの様な御用件でしょうか。」

 言葉の端々から、爽児を値踏みしている事が窺い知れる。

「ここに滞在中のミレーヌ・ロッケンマイヤーに面会したい。こちらの名前を伝えてくれたら判る筈だ。・・緑野爽児だ。」

「畏まりました。シムチップに依る認証はしない様に仰せつかっておりますので、御身分を証明出来るものを提示して頂けますか?」

「ああ。これが、俺のIDだ。」

「少々お待ち頂けますか?・・・確かに、ソージ・ミドリノ様御本人である事が確認されました。それでは、ミレーヌ様に御取次ぎ致します。」

内線電話でフロントマンが、ミレーヌに来訪者を告げる。

「はい。畏まりました。それでは、御部屋の方に御通し致します。」

爽児に対して、羨望の様な眼差しを向けると、フロントマンは言った。

「ミレーヌ様のお部屋は、最上階のスイートルームで御座います。ベルボーイが御案内致しますので、どうぞこちらへ。」

「有難う。」

 豪華な服装で身を飾り立てた宿泊客達の中を、爽児はベルボーイに従って最上階を目指した。

一際壮麗な扉の前で立ち止まると、ベルボーイが呼び出しスイッチを押した。

扉の横の壁に有るマイクに向かって話す。

「ミレーヌ様。ミドリノ様を御連れ致しました。」

 スピーカーから、返答が有った。甘く魅惑的な声が響く。

「どうぞ。今、ロックを解除したわ。中へ通して。」

 ベルボーイの羨望の眼差しを背後に受けながら、爽児は部屋の中へ入った。


 部屋の中は、中世の王宮を想起させる様な調度品の数々が上品に配置されている。

天蓋付きのベッドの上で、ミレーヌは嫣然と微笑んでいた。

「良く来てくれたわね。有難う。」

バスローブ一枚で、下には何も身につけていない。

胸元が少し肌蹴て、豊かな谷間が露になっている。

眼のやり場に困って、爽児は視線を逸らした。心臓の鼓動が聴こえる様な気がした。

「あ、あの・・・ホログラフィックディスクで貴女が言っていた、ザイードの犯罪に関する重要な証拠の事なのですが・・。」

「ふふふ。判っているわ。それより・・・ねえ、少し付き合って頂けない?」

用意していたドンペリをグラスに注いで、爽児に差し出した。

 グラスのアルコールと、ミレーヌが放つ香水の甘い香りが爽児の鼻腔を擽る。

「は、はあ。でも、そんな場合じゃ・・・。」

「こんな状況だからこそ、アルコールで気分を落ち着かせたいの。御願い、一緒に飲んで。」

仕方無く、爽児はグラスを受け取り、滅多に飲まない高級酒を少し口に含んだ。

思考力が僅かずつ失われていく事に違和感を覚えた。こんなに効く酒だっただろうか。

「・・・私と踊らない?」

ミレーヌの言葉に抗えず、爽児は呆然とした状態で頷いた。

豊満で均整の取れた姿態を爽児に密着させる様にして、ミレーヌは甘い吐息を漏らす。

数ステップを踏んだところで、足が縺れた。そのまま、ベッドに倒れ込む。

バスローブから覗く艶かしい肌が、汗で妖しく濡れて光っている。

慌てて離れようとする爽児を、ミレーヌは両腕を絡ませて自分の方へ引き寄せた。

抵抗を試みたが、筋肉が弛緩して意識でコントロール出来ない。次第に意識が薄れていく。

朱に染まり、濡れた唇が眼前で艶かしく動いているのが最後に見えた。


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