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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.2 Xanthium strumarium

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好きだよ (2)

「それで、ここから何処に向かうの?」


「まずは今世話になっているコークス・コーポに挨拶に行かないとな」


 コークス・コーポ。確か物流関係の仕事を担っているエントランスフロア、だったかな。運送会社みたいなイメージを持っているけれど、実際はもう少し違くて、あちこちのエントランスフロアにパイプを持っているらしい。


 プニーが調べ上げた結果、選んだ最初のエントランスフロアだ。好都合な条件を探していたとは言っていたが、想定していた以上に好都合だったよう。


「あ、あと皆さんにご連絡ッス。ゲートから先は新しい護衛がつくッスよ」


「はい、その話は出発の前にも伺っておりましたね」


「ちゃんと信頼できるんやろうなぁ?」


 エメラちゃんを先頭に、一行は『エデン』の玄関へと進んでいく。


 観光ツアーみたいで少し安心してしまう。しかし、護衛か。それはまあ仕方のないことではある。


 護衛がつけられるなんてお姫様気分もいいところだが、それだけあたしたちは重要な存在ということなのだ。


 何せ、あたしら絶滅危惧種だし。


 むしろ、これまでエメラちゃん一人に頑張ってもらっていたことが異常だったんじゃないのかって思うのだけど。


「さ、ゲートを抜けるッスよ」


 なんだかんだ警戒しつつ、先導される。絶滅危惧種保護観察員としての使命感だろうか。緊張感を駆り立てられてしまう。


 一応『エデン』は治安が良い方だという話は聞いている。ただ、無条件に信用できるという話ではない。それは前回の経験を持ってよぉく分かっているつもりだ。


 お姉様ほどではないけれど、少し自分の足がすくんでいるのを感じていた。あまり不安なところを見られたくない。普段通り、普段通りのつもりで足を進める。


 大丈夫、大丈夫、大丈夫。何も一歩踏み出した途端、マシンガンで蜂の巣にされちゃうってわけじゃないんだから。そう、自分に言い聞かせながらもざわつく心を落ち着かせるのに精一杯だった。


 ゲートを抜けて、『エデン』へと足を踏み入れる。


 コンクリートジャングルとはまた違う、それはまるで水晶の柱が規則正しく整列させられたかのような高層ビルが立ち並んだ都会。それが目の前に広がる。


 今こうして地面に足がついているというのに、重力の存在がないんじゃないかって思わされるほど、空には様々なものが飛び交っている。


 人のようであったり、乗り物のようであったり、あるいは何とも形容しがたい物体であったり。不思議を通り越しすぎて夢の中に飛び込んでしまったみたい。


「お待ちしていたであります。ヒューマンの皆様っ!」


 そういった感想を吹っ飛ばしていくかのように、元気ハツラツな一声が飛び込んできた。見ると、ゲート前の大衆の真ん中に、淡い緑色の瞳をした女の子が両手をめいっぱい振り上げて、こっちだこっちだと言わんばかりにそこに待っていた。


 どうやら今さっきエメラちゃんの言っていた護衛のマシーナリーのようだ。


「紹介するッス。護衛のジェダッス」


「はい、我が輩こそはジェダでありますっ! 今後ともお見知りおきをっ!」


 これまたいい声で敬礼をされた。


「ジェダ殿、はしゃぎすぎでござるよ……。仮にも拙者たちは護衛が目的。目立つようなことは控えるべきではござらんか?」


 ジェダの隣でボソっと違う、透き通るような緑の瞳の女の子が呟く。あまりにもテンションの差がありすぎて、まるで置物かと見間違えた。


「こっちはネフラッス」


「ネフラでござる。この度は護衛にあたらせていただく。どうぞよしなに」


 礼儀正しく、その場で足を揃えて座り込み、両手をついて深々とお辞儀をされてしまった。これはこれでまた目立ちそうな気もする。


 エメラちゃん、ジェダちゃん、ネフラちゃん。緑の三姉妹。三者三様、なんとも可愛い女の子トリオだ。なんだか想像していたのと大分違う光景なのだけど。


「ジェダにネフラか。よろしく頼む」


「護衛の方は貴女方二名でしょうか?」


 エメラちゃんと変わらないくらい小さな女の子が二人。なんだか見た目だけなら心許ない感じなのだけど。


「いえ、こちらもであります」


 そういって、ジェダちゃんが大衆に向かって手を翻す。


 とはいっても、誰を差しているのだろう。


 人型だったり、丸形だったり、四角型だったり、何ともバリエーション豊かなマシーナリーたちが並んでいる。まるで古今東西ロボット博覧会。


 というか、なんでこんな一カ所に集まっているのかな。


 なんかのお祭り……、なんて発想が出てしまうのは田舎丸出し感もあるが。


「この者どもも拙者らと同じく護衛の者でござる」


「ふぇ……? まさか、これみんなそうなん?」


 お姉様がたじろぐ。


 まさかとは思うけれど、ここに集まっている人たちみんな護衛?


 なんかこう駅前で待ち合わせているその他もろもろの通行人かと思っていたのに、なんという数だろう。二十人、いや三十人はいるか。


 まるで一国の大統領クラスみたいな扱いなのでは、ってくらいかなりの規模だ。


「これは随分と凄い数だな……」


 さすがのゼクも圧倒されているよう。


「ここ『エデン』は治安がいい街ッスけど、それでも人類差別がないわけじゃないッスからこのくらいは当然の対応ッスね」


「以前訪問された際には襲撃に遭ったとの報告を受けているであります」


「今後はそのようなことのないよう全身全霊、努めさせていただくでござる」


 熱意を感じる。


 人間嫌いと、そうでない側とで随分と待遇の差があるのね。


 確かに前回の時は何をするわけでもなく、ただエントランスフロアに足を踏み入れた瞬間に閉じ込められるわ、銃を乱射されるわで散々だった。


 あれは本気で死ぬかと思った。


 思い出すだけで未だに足が震えてしまうくらいだ。


「我が輩たちがいるからには大船に乗ったつもりで安心するであります」


「まあ、あまり目立つような行動は控えていただきたいでござるが……」


 むしろこの状況下、目立っていないとでもいうのだろうか。


「ともあれ合流もしたッスから、これより予定通り護衛開始ッス」


 護衛組の皆さんが揃えて敬礼のようなものをする。


 ようなもの、というのはまあ腕がなかったり顔が何処だか分からない人もいるからなのだけど。


 二度目の『エデン』訪問。今度は何事も起きないことを祈ろう。


 まあ、これだけいれば大丈夫だよね、きっと。

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