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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.0 Sleeping beauty

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閉ざされる未来 (9)

「ザンカ、ズーカイ。応答してくれ。とりあえずジニアと合流した。ゾッカのことで何か分かったことはあるか?」


『はいはい、ちょっと待ってくださいよ』


 目の前に再び、ザンカとズーカイの立体映像が出力されてくる。


 向こうの状況は特に変わった様子もなく、『サジタリウス』号のコクピットで待機しているようだった。


『さてと、これで少しはお互いの状況も分かりやすいでしょう』


「ズーカイは何をしているんだ?」


 ザンカはともかくとして、ズーカイの方は渋そうな顔をして、ブツブツと呟きながらも目の前に広がる端末と格闘していた。色々と解析しているのかもしれない。


『解析してます』


 本人から明瞭な回答を得られる。


 それ以上でもそれ以下でもないらしい。


『先ほどの映像も踏まえて、惑星『セレーネ』中の次元歪曲の解析ですよ。結構骨が折れましたがね、粗方調べ終わりましたのでズーカイさんに投げてました』


 次元歪曲、ねぇ。要はゾッカの移動痕跡を調べているということなのだろう。


 空間と空間を瞬時に移動するには、結局のところ、何らかの方法が用いられている。空間そのものに穴を空けるか、はたまた歪曲させてしまうか。


 さっき、映像を確認した限りではそのような痕跡は見当たらず、ズーカイ曰く高次元の接触がどうとからしいが、あれからまた、今度は惑星『セレーネ』全域のデータをぶち込んで色々な方面から調べ上げているのだろう。


 空間移動に関しては、俺も専門分野ではないので詳しくは理解できないが、二人が協力するならばかなり心強い。


「それで、成果は?」


『今のところ、ゾッカさんのコードは検出できていません』


 ズーカイは溜め息まじりに言う。成果が出せてないことに不満といったところか。


 それも予想通りの結果ではあるのだが。


「ジニア、一応お前のデータも送っておいた方がいいだろう」


「ほいよ。じゃあそっちに送るわ。ま、大したデータじゃねぇけどな」


 一先ずは、これでお互いの情報交換が完了した。


 ヘルサの爆破事件は、ゾッカが犯人であるというところでまとまりつつある。


 状況証拠としてもかなり乏しいところなのだが、話せば話すほどに他に疑いの余地がなくなっていくばかり。


 どうせなら、俺も知らない全くの第三者の登場でも願っていた。


 例えばゾッカが誘拐されていたり、あるいは何処ぞの組織と共謀していたりといった可能性もけしてゼロではなかったが、決定打に欠ける以上、除外せざるを得ない。


『ゼクラさんのその仮説、正直バカらしいとは思うのですが、かといって否定する材料もありません。いずれにせよ、総当たりになってしまうでしょうから、一案として採用としましょうか』


 どうしてこうまでザンカに言われなきゃいけないのだろう。


『僕はゼクラさんの意見に賛同します』


 ズーカイのシンプルな優しさが心に沁みる。


「じゃあよ、具体的に今後のプランはどうするつもりだ?」


「ゾッカと接触を試みる。そしてそこで全てを聞き出す」


 それ以外にない。


 現状、この惑星『セレーネ』では犯人捜しの検問が行われている。それによって『サジタリウス』号の乗組員クルー全員がこの惑星を発つためには、真相を明らかにしなければならない。


 ゾッカから真相を聞き出して何もなかったならそれでいい。


 今回の騒動の容疑者からも外れて、ただ任務を続行していくだけだ。


 だが、もしその真相が不都合なものだった場合、それなりの覚悟をしなければならないだろう。


『ゼクラさん。もし、ゾッカさんが我々と敵対すると言ったらどうするつもりなんですか?』


「そのときに考える」


 こればかりは、今の俺には答えられようもない。


 しばしの沈黙が流れる。


 何とも痛ましい沈黙だ。


 誰もが何をどう取り繕うべきなのか迷っていた。


 何せ、ゾッカは長いこと共に戦ってきた仲間なのだから。


 いつか何処かで別れるときはあると想像したことはあっても、敵として対峙することなんて一度だって想像したことなどない。


 全てを許せる権利を持てるのなら、俺は行使するつもりだ。機械民族の極刑を白紙にしてでも俺は、俺たちはゾッカと共にまた宙に往く。


 きっとザンカも、ジニアも、ズーカイも、同じように考えていたのだと思う。




 しかし、沈黙を破ったのは、安寧を遮るものだった。


 一言で言い表すならば、爆発音。かなり遠くの方だった。


 咄嗟に、端末を確認する。


「ジニア、お前の予測が正解だった」


 爆発された現場の情報が飛び込んでくる。それは間違いなく、先ほどジニアが列挙して見せた、極力被害が少ないと思われる条件の似通った物件だ。


 つまり、次なる計画が進んでいるということだ。


 模倣犯による犯行も考えられたが、それも直ぐさま否定されることになる。


 ニュース速報からは、やはり現場には証拠らしきものが見当たらないと報じられていた。そこまで模倣できるような高度な技術を持つ輩がそこら中にポンポンいてたまるかという話だ。


「次の場所を予測できるか?」


「できるか、じゃねぇんだ。しなきゃならんだろ」


『僕も頑張ります』


『やれやれ……面倒なことですねぇ』


 この場にいる全員の決意が固まったようだ。


 どういう結末が待っているかなんて分かりはしない。


 それでも、真相を究明しなければならない。


 アイツが一体、どんな未来を見て、どんな変革を臨んでいるのか。これから先に何を成そうと考えているのかを、全部聞き出してやる。


 そのためにも、これまで収集した情報を全部洗い出し、アイツの行動を予測して、追い詰めなければ。


 状況証拠の塊に思えた憶測や予測にまみれた情報も、束にしてみれば存外、紐を解いていくことはそれほど苦ではなかった。何より、あのゾッカの行動パターンを考えてみれば、思っていたよりも分かりやすかった。


 日頃は何を考えているのかまるで分からなかったゾッカだったが、それでもやっぱりアイツは俺たちの仲間なんだと再認識できる。


「俺の予測では次の場所はここだ」


「オレの勘ではここだな」


『僕はここだと思います』


『解析した結果、ここの確率が高いかと』


 ほぼ同時に、それぞれが結果を弾き出す。


 なんともはや奇妙なものだった。だが偶然ではなかったと確信できる。


 全員が指し示したその場所は、ものの見事に一致していたのだから。

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