表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.4 Paradox answer

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

235/304

プレイボール! (2)

※番外編

時系列的にはEpisode.3の前後

「先取、凄いじゃないかナモミ」


「えへへ、思ってたより上手くいっちゃった」


 狙い目通りにいったのはなかなか爽快感がある。まだ手始めとして、キーパーのネフラちゃんも手加減してくれてるのかもしれないけど。


 ゴールはフィールド内にある三つのリング。大きな輪っかだ。どれも同じくらいの大きさで、どれに入れても構わない。いずれも壁際にあるので、反射を狙って二枚打ちなんてこともできるらしいけれど、高等テクニックすぎるのであたしには無理そうだ。


 ゴールであるリングを抜けたボールは数秒後に消失するため、この消失するまでの猶予時間が連続攻撃のキーとなるとかルールブックに書いてあった。相当な連携プレーも必要になるのでは。


 何はともあれ、ボールが消えたことにより、攻守が交代する。キーパー以外は再びフィールドの中央へと戻り、仕切り直しだ。


 なんか、戻ってみたらお姉様は相変わらず動けていない様子。この後、攻撃に移るんだけど大丈夫なんだろうか。


 そうこうしているうちに、新しいボールが出現する。


 今度はあたしたちは叩けない。スタートのときと違い、今回はゴールを入れられた側、つまり相手チームが最初にボールを打つ権利をもらえる。プニーかお姉様がこれを叩いて、ソレを追いかけるんだ。とはいっても、お姉様は今のところ戦力外なので、プニーが狙いをすます。


「行きます!」


 とプニーが両腕で構えたスティックを身体ごとグルンと振り回す。が、しかし、勢いはあったものの、ボールには直撃せず、コツンと掠った程度だった。このくらいなら追いかけるまでもない。


「ごめんプニー、もらったよ!」


 プニーは追撃をしようと試みるが、その前にあたしのスティックがボールを補足する。相手チームのサイドまでボールが押し込められた。


「そ、そんなっ!」


 今回は目と鼻の先だったから簡単だったけど、これがゴール手前とかだったりすると大変だったんだろうなぁ。


 ルール上、このまん丸のフィールドの中央を基準に自分チームサイドの陣地と、相手チームサイドの陣地で分けられ、攻撃側チームが自分の陣地にボールを入れられてしまったとき、攻守が交代する。


 たった今のプニーのコツンによってボールはこちらチームの陣地に入り、そしてあたしはそのボールをタッチした。これで再び、あたしたちの攻撃が回ってきたというわけだ。


「いくよっ!」


 思いっきりスティックを振り回して、ボールを打ち込む。攻守が交代するタイミングでボールは、さっきゴールをしたときと同様に数秒後に消失するわけだけれど、その消える前に稼いだ距離分、スタート地点をズラせる。逆転ボーナスだ。


 今、フィールドど真ん中の境目ギリッギリで思いっきり真っ直ぐにボールを叩いたものだから、相手サイドを超えて相当な距離を稼いでしまった。さっきよりも相手ゴールに近い位置からスタートを切れる。


 一見かなり有利なようでいて、実は陣地も同様に伸びているので、稼いだら稼いだ分だけ攻撃側の陣地は広く、防御側の陣地が狭くなる。それはつまり、相手側の陣地に返しやすくなるということ。


 油断しているとここからまた逆転されることもあるわけだ。


「よし、一気に攻めていくぞ」


 気合いを入れてゼクがスティックを構える。


 ボールが出現し、ゴールに目掛けて振りかぶられた。この距離ならゴールまですぐだから狙いも十分だ。打ち込まれたボールは弾丸のようにゴールまで飛んでいく。


 プニーも追いかけようとするも、さすがに無理がある。となると、ここで守りに回れるのはキーパーのネフラちゃんだけだ。


「こっちでござるな?」


 三つあるゴールの内、どれが狙われているのか見定めたのか、ネフラちゃんはその方向へと移動する。そして、バッターよろしくスティックを両手に構えて、タイミングを見計らう。


「ここでござる!」


 カッキーン、という音でもなかったけれども、ネフラちゃんのスウィングは見事にボールに命中。あたしもゼクもいない、ガラ空きの方向へと目掛けて跳ね返されてしまった。


 為す術もなく、陣地のラインを越されてしまった。これでまた攻守交代だ。しかもキーパーが相手陣地に入れた場合、ボーナスラインが設けられる。とどのつまり、どういうことかというと、延ばした分の飛距離に加えてさらなる距離が追加され、一気に陣地が持っていかれてしまうということだ。


 さっきまでリードしていたのに、そのままそっくり逆転されてしまった。スタートラインがあたしたちのゴール近くまで来てしまっている。これは少しまずい。


「うちもそろそろ活躍せんとなぁ……」


 無重力でフラフラと、逆に器用な移動の仕方でお姉様がスタートラインでスティックを構える。


「お願いします、キャナ様」


「いっくでぇ~、えぇいっ!」


 ボールが弾かれる。その先はゴールの方角よりやや逸れて、障害物地帯だ。そのいずれかにボールが当たれば一気に減速する。そこを狙って返せばまだ取り戻せる。


「って、えっ!?」


 何が起きたのか理解に遅れた。


 ボールの位置を確認できない。


 障害物の隙間をキレイに抜けていったのだ。慌てて追いかけていくも、障害物が邪魔をして先に進めない。まさか、お姉様狙ってこんな隙間を通したっていうの?


 そして次の瞬間、何故かスコアボードが更新されていた。


「やられた……裏から入れられたのか」


 ゼクが言う。何を言っているのかやっぱり気付くのが遅れた。障害物を通しただけじゃない。さらにフィールドの壁のバウンドを利用して裏からゴールに入れたんだ。


「そんで、もういっちょ!」


 呆然としていると、ゴールの真ん前まで来ていたお姉様がスティックを振りかぶっていた。


 あ、しまった。ボールはまだ生きているんだ。裏から抜けたボールをそのまま正面から叩き入れられてしまった。一気に点数が逆転だ。しかも連続ゴールは点数が倍になる。よって、現在こちらは一点、向こうは三点だ。


「こっからは、うちらのターンやで! にゅははははっ!」


 さっきまで移動もロクにできなかったお姉様とは思えない。まさかそんなトリックプレーをかましてくるだなんて。


「大丈夫だ、ナモミ。まだ取り返せる」


「ええ、そうよね。まだ試合は始まったばかりなんだから!」


 あたしの中で何かが燃えたぎるのを確かに感じた。


 ああ、こういうの、こういうのだよ。あたしが求めていたのは。自然とテンションが上がっていく。割とあたしもスポ根なんだなぁ、と改めて思った。


 スティックを強く握りしめて、今の溢れんばかりの感情を込める。


「絶対に勝つんだからね! ゼク!」


「おう!」


 今、きっとあたしの瞳の中にはメラメラとした炎が燃えているに違いない。


 全身のアドレナリンが沸騰する白熱の戦いは、まだまだ続くんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ