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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.3 Remain remember
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惑星の破壊者 (8)

 結局そこからは話にもならなかった。ラセナ王子のワガママに振り回されるようにしてサンデリアナ国の連中はブーゲン帝国を去り、ジニアともザンカともろくに会話できず終い。


 一言でさえ、ナモミの名前を聞くこともなかったということは、どうやらアイツらは結局保身に走り、偽物のことを打ち明けなかったと見れる。


 残されたブーゲン帝国の猫たちは絶望的な顔を浮かべ、呆然と立ち尽くす暇も惜しんで即位式、そして結婚式の準備へと取りかかるしかなかった。


「ズーカイ、お前にも聞いておかないとならない話があったようだな」


「……」


 必要最低限のことしか喋らず、それでも口を開けば饒舌には物事を吐き出すこの男は、アイツらと比べれば口数は少なく、自分から何かを喋ることも早々ないので、無口といえば無口な方だ。


 多分俺たち以外の相手では会話することもロクにないんじゃないだろうか。


 さて、話としては、ズーカイから聞き出すことは容易だった。相変わらずのゆったり口調で朝だというのに酷い睡魔に襲われたが、知りたい情報は概ね得られた。


 やはり、アイツらは惑星の破壊者(スター・ブレイカー)の名前を使っていたらしい。獣人族ブルートゥは力にひれ伏す種族だ。()()()()()()()都合よかったのだろう。


「ゼクラさんは、これからどうするつもりですか?」


「ちょっとアイツらを殴ってくる。お前にも手を貸してもらうぞ、ズーカイ」



 ※ ※ ※



 天気はよく、視界は良好。見渡せる先にはかつて戦場になっていたとは思えない景色が広がっていた。こちら側の方面は戦火に呑まれていなかったのだろうか。


 見下ろしてみても、地上は遠く、そこまで明瞭に見てとれるわけでもないが。


 さて、二十億年前の人間である俺が見ても旧式だと分かる程度の飛行車両の内装は、戦闘用に特化した簡素な作りになっている。


 あるのは運転席と、兵士が待機するための席だけだ。武器も積んであるようだが、基本的には空中戦向けではなく、着陸した先で戦闘を行う装備のようだ。


「ゼクラのアニキ、マジでやるんすかい?」


「ああ、覚悟がなきゃここにはいない」


「度胸が据わってますのね……」


「お前らにも仕事があることを忘れるな」


 この場にいるのは待機スペースにいるブロロとシルル、そして運転席にいるズーカイだけだ。この位置からだと顔を確認することはできないが、「なんで僕が……」という表情をしているに違いない。


「あの人、信用できますの?」


「害のある男じゃない。そこは信用していい」


 そう言われても仕方ない。一応、サンデリアナ側の親衛隊だ。だが、今のところ命令から逸脱した行動は取っていない。承っているのはラセナ王子の「式典を準備を進めろ」とジニア隊長の「ゼクラをサンデリアナ国まで送り届けろ」くらいだ。


 サンデリアナ国まで俺を運ぶのなら別段、何ら問題はない。


「ゼクラさん、間もなく国境です」


 外を見ると、何やら球体の機械が無数に浮遊していた。なるほど、アレがザンカお手製のシステムか。あれがサンデリアナ国を文字通りに隔離しているわけだ。


 アレを破壊すれば内部との通信もできるようになるのだろうが、そこは考えていない。数が多すぎるし、十機百機潰したところで意味がないだろう。


 何より国境を越えれば結局通信ができるようになるから壊すだけ無意味だ。


 規則正しく並ぶシャットアウトマシーンをすり抜け、俺たちの乗っている飛行車両は国境を言葉通りに飛び越えていく。仮にもサンデリアナのものだ。いちいち妨害してくることもないのだろう。


 見通せる視界の端にはサンデリアナ国の首都が広がっていた。


「通信機借りるぞ、ズーカイ」


 運転中のズーカイの横から端末に触れる。そこからツールのデータを拝借し、俺の手元の端末へと移す。直ぐさま聞こえてくるのは無数の声だ。


 これでサンデリアナ国内の通信が拾える。下手に傍受する手間が省けた。普通ならチャンネルを絞り込んで特定の者同士と対話をするものだが、面倒なのでこのまま全ての通信を拾わせてもらう。


『予定時刻。離陸準備』『ラセナ王子、搭乗――』『ジニア隊長、何のんびりしてるんですか!』『こちら城下町――』『これよりブーゲン帝国へ向かう』『――総員配備に付け』『――ビリア王女、依然として発見できません』『へへへ、じゃ、行くとするか』『――護衛部隊発進します!』


 情報が筒抜けだ。笑えてしまえるほど。情報規制なんていいつつも、その主な理由というのはこの杜撰なまでの管理態勢なのでは。


 ザンカの奴も、相当窮屈な思いをしていそうだ。アイツの持つチームだけではこの惑星の文明をカバーするには足りないのだろう。


 それでもある程度の統制は取れているようだから評価すべき点なのだろうが。


「どうやら間もなくこちらに来るみたいですね。アニキ」


「さ、ブロロ。私たちも行きますよ」


「二人共、ナモミたちのこと、頼んだぞ」


「あいあいさー!」


「お任せください!」


 そういって、二人は外へと出ていく。ここはサンデリアナ国の遙か上空なわけだが、マシーナリーの二人なら特に問題はないのだろう。


 あの二人には連絡の取れていないナモミと、救出に向かったエメラたちのことを託すことにした。サンデリアナ国の中にまで入ればいくらでも通信が使える。


 ただ単純に通信ができたところで他にも色々と障害など面倒なこともあるのだろうが、その辺はマシーナリーの技量に任せるしかあるまい。


「ありがとうな、ズーカイ。久しぶりの飛行、なかなか快適だった。腕が落ちてなくて何よりだ」


「ジニアさんとザンカさんによろしく言っておいてください」


「ああ」


 さてと、俺もそろそろ行くとするか。


 サンデリアナの首都の方から艦隊が飛んでくるのが目に見えた。


 無数の通信も雨のように入ってくる。


 ここにくるまで連中を説得するのも一苦労だったが、悲しませる結果に終わらせないためにも、俺も人肌脱がねばなるまい。何より、ナモミを助けるためだ。


 正直なところ、人類の将来のためにも、ここまで目立つ行動というものは極力避けてきたし、これからも下手に目立つわけにはいかないが、最終的に俺たちの存在が認知されることがなければいい。


 幸いにも、この場所は情報規制とやらで外部との情報がシャットアウトされる都合のいい場所でもあり、それはザンカの腕前を持って保証されている。


 それに何より、相手勢力の力量はもう見定めた。


 ともなればここは一つ、このしっちゃかめっちゃかに絡み合った面倒ごとを片付けるのに最も手っ取り早い方法をとらせてもらおう。


 今こそなまった腕を振るう時だ。

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