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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.3 Remain remember
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惑星の破壊者 (6)

 ズーカイの方を見る。無言で返された。


 ザンカに視線を送る。目を逸らされた。


 ジニアを睨みつける。愉快そうに笑う。


 もしかしなくてもお前らの仕業か?


「おい、そこの。見ない顔みたいだが、なんだ、知らないのか? あの伝説の、惑星の破壊者(スター・ブレイカー)を」


 俺だよ、とは流石に言えない。というか、名乗りたくもない。


「かつてマシーナリーが宇宙を制していた時代、突如何処からともなく現れて、圧倒的な力を持ち、何者も寄せ付けず、数多もの星を一瞬にして滅ぼしたという、あの伝説の英雄だよ」


 なんか脚色が入りすぎじゃないか? とはいえ、もう二十億年も昔の事だ。有機生命体が知っているとは思えない。


「俺様の親衛隊にはその惑星の破壊者(スター・ブレイカー)がいるんだ。どーだ。恐ろしくてションベンちびるだろ!」


 どんな経緯があったのかは詳しく聞きはしないが、アイツらはシングルナンバーで、しかもコードZだ。何処かで尾ひれが付いてしまったのかもしれないな。


 俺たちには名前なんてものがないからな。コードZという名称が歴史上を浮揚して惑星の破壊者(スター・ブレイカー)の存在だけが一人歩きしてしまったのか。


 別に、その名前には未練も愛着もないから勝手に使ってもらってもいいのだが、これはかなりキツいものがあるぞ。


 なんで目の前のコイツはこんなにも誇らしげに俺の武勇伝……しかも、かなりの脚色も加え美化されたお伽噺のようなものを語ってくるんだ。


「俺様に楯突こうっていうなら、惑星の破壊者(スター・ブレイカー)が黙っていないからなぁ?」


 ひょっとすると、アイツらが俺に固執するのはこういう側面もあったりするのではなかろうか。よほど吹聴していたようだ。傭兵稼業なんて力量で足下を見られたら商売にならないだろうしな。


 それはそれとして、お前ら、後で覚えてろよ。


「ふぉふぉふぉ。王子よ、その辺りでいいだろう」


 しわしわの顔をした犬の大臣が割って入る。


「ふん、そーだな。ところで大臣。俺のビリアは何処にいるんだ?」


 ギョッとする。俺だけじゃない。大臣も、その後ろにいるジニアやザンカもだ。


 どういうことだ。ビリア姫……じゃない、ナモミはサンデリアナ国から抜け出したことになっていたんじゃなかったのか。


 話では王子はビリア姫の代役と結婚することになっていたと思うが。まさか、本物のビリア姫の居場所を突き止めたとでもいうのか?


「い、今は結婚式の準備で忙しいのだ。ふぉふぉふぉ。王子と王女の結婚式は盛大に盛り上がりますぞい」


「そーか! それは楽しみだ!」


 まさか、コイツ騙されているのか? 自分が偽物の王女と結婚させられることを分かってないとでも言うのか? まさかまさか、いくらなんでもそこまでバカなわけがないだろう。


「明日は記念すべき日になるのだ。なんといっても俺様とビリアが結婚する。そうだ、ブーゲン帝国とサンデリアナ国が一つになり、俺たちも一つになる。なんて素晴らしい日だ。未来永劫祝われ続けるということだ!」


 ああ、バカだ。こいつは間違いなくバカだ。自分が騙されている事にも気付いていないようだ。そうでもなければこんなに大喜びできるものか。


 ふと見ると、大臣とザンカが何やらコソコソと話し合っていた。そしてしきりにこちらの方へチラチラと目配せしている。あまりいい予感はしない。


「お前さん、少し話があるぞい」


 とうとう手招きまでされてしまった。後ろにいるブロロとシルルに念のために警戒の合図を送る。


「なんだろうか?」


「ビリア王女を隠していると、ためにならんですぞ」


 ヒソヒソと、あの王子に聞こえないように小声で語りかけてくる。


 バレている? やはりザンカの解析はそこまで進んでいたのか?


「何のことだろう」


「しらばっくれても無駄ですぞい。この城でビリア王女が出歩いている報告が来ておるのだからな」


 しまった。なんという間抜けなことをしてしまったのだろう。サンデリアナ国の兵士をしめておくのを忘れていた。昨晩からこの城の中を出歩いていたのだからもう少し気を遣うべきだった。


「どうやって我が城から逃がしたのか知らんが、このままではタダではおかぬぞい」


 ん? 城から逃がした? 何か少し話がズレてきているような気がする。


 まさか、偽物のビリア姫を偽物だと気付いていない? 昨晩逃げ出したナモミを本物だと思っているのか?


「誤解があるようだ。俺はそちらの姫の脱走なんかに関わっちゃいない」


 実は本物の姫がここにいる、とは言うまい。


「そうですよね。昨晩は我々と一緒にいましたからね」


 ザンカ、お前が証人だろう。というか、お前はちゃんと大臣に話していないのか? あのビリア姫は偽物だと。


「ですが、手引きしていないという証明にはなりません」


 何を言っているんだ、ザンカのヤツは。


「俺に一体何の権限があると思ってるんだ」


「聞くところによると、お前さん、この者達と同じシングルナンバーというじゃないか。何の理由もなしにこのような場所にくるなど不自然ですぞ?」


 待て待て、何か話が噛み合っていないんじゃないか?


「何処まで話を聞いているのかは分からないが、俺は今、マシーナリーに管理される立場にある。平穏に過ごし、繁栄することを望んでいる。今回この地を訪れたのはお忍びであり、旅行を目的として申請してあるはずだ」


 マシーナリーの権限を利用して、旅行という名目で申請を通しているのは紛れもない事実であり、お忍びというのも実際にその通りだ。


 俺の言葉には端から探りを入れても嘘偽りはない。


「無論、極力目立つことを避けるため、当たり障りのない程度に都合のいい内容にはしてあるがな」


 申請したルートも前もっていくつか分岐を考慮してある。改竄と言ってしまえばその通りだが、ルートを解析されて内容に齟齬があったとしてもそこに不整合は生まれないようになっている。これはプニカがやってくれた。


 何より、全てのデータはオープンになっているもので、大臣であろうが、ザンカであろうが、明確に確認することができる状態だ。


 ザンカが何を吹き込んだのかは知らないが、今この状況でこちらに何かの罪を被せる手段はないはずだ。何せ、俺たちは善良な旅行者なのだから。


 まあ、それも、ザンカが俺たちの護衛艦に本物のビリア姫が乗っていたことを突き止めていなければの話だが。

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