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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.3 Remain remember

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惑星の破壊者 (3)

「ブロロ、シルル。エメラたちと連絡は取れるか?」


 もし、向こうが無事にナモミを救出し、サンデリアナ国を脱出しているとしたら何らかの手段によって惑星『フォークロック』の外に向かっているはず。


 いずれにせよ、情報規制の掛けられているサンデリアナ国の外にいるのなら通信は使えるだろう。傍受される危険性もあるが、この期に及んでこれ以上の危険な状況などあるものか。


 甲冑姿のブロロが何やら宙にパネルのようなものを出現させる。その横にいる同じく甲冑姿のシルルも、モニターらしきものを表示させた。


「ダメです、アニキ。反応がないっすよ」


「ズーカイ、サンデリアナ国の通信はどうなっているんだ? お前だって報告に通信の一つや二つくらいするだろ?」


 自分の国とも連絡が取れないなんてことはないはずだ。今朝早くも、ジニアとザンカは伝令を受け取ったからこそ早急に国へと帰ったのだから。


「はい。サンデリアナ国内であれば、兵士に支給された通信端末にて連絡を取り合うことができます。しかし内と外はシャットアウトされております。国境にそういった装置を設けていますので。ちなみにザンカさんが手配したものです。それと、今朝の伝令はアナログ端末によるものです。うちの兵士が足で届けてきました」


 そういって、ズーカイが小さな棒状の端末をヒョイと取り出す。何かの骨のようにも見えなくもない。どうやら通信機能を持たないツールのようだ。簡単なメッセージを記録する程度の代物か。


 おのれ、ザンカ。肝心なところは抜けているくせに、こういったところは抜け目ない奴だ。アイツの作った機械ならプロテクトもさぞかし強固なんだろうな。


「じゃあ、ジニアやザンカにも連絡は付かないのか」


「そうです」


 短い一言で締めるな。


 今、エメラたちと連絡が取れていないということはつまり、みんなまだサンデリアナ国とブーゲン帝国との国境を跨いでいないということになる。


 昨晩向こうから抜け出しておいて、まだ国境にも辿り着いていないのか?


 生身で宇宙に出て行くわけにもいかないだろうし、何処かで宇宙船をチャーターしなければならない。


 段取りでは、俺たちはここから安全を確保次第、護衛艦を預けてある宇宙空港に向かう手筈になっており、エメラたちは別ルートから宇宙船に乗り込んで何処か別な惑星で落ち合うことになっていた。


 つまり、向こうのルートは臨機応変に切り替わるため、こちらからではある程度の絞り込めはすれども予測はできない。何より連絡が一切できない状況なのだから、途中経過すら分からない。


 こんな面倒くさく厄介な作戦にしてしまったのも、あのザンカのトラップのせいだ。技術や権限で圧倒的な脅威を見せられてしまった手前、こちらの動向が把握されている可能性を見越して、なるべく攪乱させるためにこの手段を執ったんだ。


 おのれ、ザンカ。ろくでもない男だ。


「どうしたのじゃ、みな血相を変えて。そろそろ出発する時刻ではないのかの」


 呆然と立ち尽くしていると、廊下の向こうからモフモフとしたソレが二足歩行でこちらに向かってきていた。その後ろには昨晩挨拶した教育係の老猫や、大臣らしき猫たちが数匹ほど。


 アレは本物のビリア姫だ。どうやらお見送りするつもりだったらしい。


「ひ、姫様? 大丈夫なん? そんな城ん中平気で歩き回って」


「大丈夫じゃ、ここにいるサンデリアナ国の兵士どもも妾は見つかっていることが周知になっておるしの。さっきもすれ違い様に挨拶してくれたわ。ちょっと首を傾げておったがの」


 多分、ソレ違う意味で首を傾げていたんだと思うぞ。


「ビリア王女……本物ですか」


 ズーカイ、やっぱりお前知らなかったんだな。


「ん? なんじゃおぬし。その制服、あのバカ王子の親衛隊かの」


 ビリア姫の表情が強ばる。さすがに、この厄介オーラが伝わってきたらしい。


 状況は一刻一刻と混乱の渦が大きくなっていくばかりだ。



 ※ ※ ※



「うぅむ……ナモミが妾の代わりに……」


 ビリア姫が唸る。あの険しい表情は一層責任を感じている顔だろう。


「アニキ、やっぱりエメラ姐さんたちと連絡ができないですね」


「うぅ……ナモナモぉ……何処でどないしてんねや……」


 向こうの状況があまりにも不透明すぎる。不安は募れども晴らすことはできない。せめて連絡手段でもあればいいのだが、ザンカの奴め、厄介な代物を用意してくれたものだ。


 今、サンデリアナ国は混乱していることは間違いない。


 何せ、探し回っていたビリア姫が再び失踪してしまったのだから。今頃向こうはビリア姫捜しに躍起になっていることだろう。


 しかもどういうわけか、ナモミがビリア姫として認識されてしまっている現状、それは言い換えれば、国中からナモミが追われている身ということになる。


 そこにジニアやザンカも加わっているらしいが、本物のビリア姫の居場所も知らずにアイツらはどう収拾つけるつもりなんだ。


 ナモミを救出に向かったエメラたちとも連絡がつかない。おそらくはナモミを連れ出したのはエメラたちだと思う。つまりエメラたちは今頃ナモミと同行しているはずだ。


 まさかナモミ一人で国から抜け出したとしたら状況はもっととんでもないことになってしまうが。


「……妾がサンデリアナ国に向かおう」


「待て、それがどういう意味か分かっているのか? 今、ブーゲン帝国は不安定な状況なんだぞ? 実は偽物の姫を送りました、なんて冗談でも許されない」


「せやで。向こうの国もこっちの国も、やっと姫様見つかったって騒いどる最中なのに、まぁた姫様逃げ出して混乱しまくってるとこなんよ?」


「偽物など送っておらぬ。それは向こうの勝手な勘違いなのじゃろ?」


 ジニアとザンカのな。アイツらもう一度顔をあわせたらぶん殴っておかねば。


「だが事実はともかくとして、向こうはそうは受け取らない。今ここで本物が現れたら国が乗っ取られる以前に、また襲撃される可能性だってある。即位式の話だって譲歩されての話だ。今度こそ武力を持って国ごと潰されるかもしれない」


「そもそも偽物呼ばわりされる可能性だってあるんや。そうなったら姫様どうなるんや。ほんまに首撥ねられるかもしれんやないか」


「じゃが、妾は責任を負う義務があるのじゃ」

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