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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.3 Remain remember

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嘘はついていない

「おお、姫様。お会いできて嬉しいッス」


「姫様、ご無事で何よりであります」


「何処かケガはされておらぬでござるか? 姫様」


 扉を開けて直ぐ、このドレッシングルームに三人が現れ、あたしの方へと駆け寄った。この三人がいてくれるのはとても安心する。さっきの今までかなり状況は詰んでいたところだったし。


「妾ならこの通り、大丈夫じゃ。三人とも、心配掛けたのう」


 とりあえずビリアちゃんのモノマネを継続しておく。まだ真横にバカ王子もいるし、部屋の中には他にも兵士が十数人ほどこちらの様子をうかがっている。


「再会できてよかったな。ま、この通り王女は何事もない。つまり心配することはないということさ。何より、王女は俺と結婚するのだから無事で当然なのだがな!」


 高らかに笑うバカ王子。正直何を言っているのか理解し辛い。


 この犬、本当に物事を考えるという知能を持ち合わせているのか本格的に疑問に思い始めてきた。あまり深くは考えてはいけないのかもしれない。考えたらこちらにもバカがうつってしまいそうだ。


「ここからは拙者たちが姫の護衛を引き受けるでござる。警護の者は必要最低限に抑えてもらいたいのでござる」


「ああ、そうだな。数が多すぎても困るもんな。おい、そこのお前と、あとそうだ、お前だ。姫と侍女たちをよく見張っておけ。他は外側の警護に当たってもらおうか」


 そう言ってバカ正直にもバカ犬は兵士の数を減らしてくれる。


 指定されなかった犬兵士はぞろぞろと部屋の外へと出ていく。というか、今までも随分と多かったように思う。密集しすぎて本当に息が詰まりそうだったし、何よりみんなあたしの方に注目しているのが色々と辛かった。


「ええと、なんだっけか。ああ、そうそう。お前らを疑うわけじゃあないが、コードの認証っていうの? ソレは確認させてもらうぞ」


 何それ普通にそんなのやるの? コードってアレでしょ? 身分証明書を見るようなものでしょ? そんなのを確認されたらまずいんじゃ……。


「はい、どうぞッス」


 そういって何食わぬ顔でエメラちゃんが前へ。続くようにジェダちゃんとネフラちゃんも整列していく。


 王子はといえば、何やら無駄に大きいゴーグルをそこに残っていた兵士から受け取り、自ら装着する。本当に何だこのゴーグル。あたしの知っているものよりも相当古いようなイメージだ。でも使い古した感じもなく結構新品っぽい。


「ええと、コレか。ふむふむ」


 使い慣れてなさそうな様子で王子がゴーグル越しに三人を見る。


「なるほどなるほど。情報通り、マシーナリーであることは確かなようだ。んで、階級は保護観察員? はぁ、なるほどねぇ。んーと、これで実績も見れるのか? おお、見えた見えた」


 端から見たら、なんかゴーグルを抱え込んで独り言ブツブツ呟いてる気色悪い奴なんだけど、どうやら片っ端から情報を閲覧しているようだ。こんな型の古そうな代物でもちゃんと性能は悪くないらしい。


「そうか、分かったぞ。どうやら怪しくないみたいだ」


 これほどまでにバカっぽい発言も早々にないと思う。


 あたしの知っている限りでは、コードに関することは捏造が難しかったはず。下手に改変することもできないと聞いている。


 でもまあ、保護観察員という肩書きは本当だし、嘘はついていないのか。


「王女がマシーナリーに保護するように求めたそうだな」


 これも確かに嘘はついていない。


「護衛艦を手配してもらって、渡航領域を横断するワープ中にこちらの機構に引っかかってしまったわけか。ああ、そうそう。親衛隊のアイツもそんなこと言ってた」


 ああ、何処にも嘘は言っていない。間違いない。


「お前らはどう思う?」


 他の兵士にも振る。お前自身は判断できないのかよ、バカ王子。


「我々もコードの確認はいたしました! 特に問題はないかと思われます!」


「右に同じ!」


 あっさりすぎるくらいに、兵士が賛同する。


 ああ、そっか。このゴーグル自体も兵士の使っていたものだから当然王子が確認する前からとっくに知っていたことになるのか。いやいや、じゃあ何のために王子自身が確認したんだ。全く意味ないじゃん、ソレって。


「いいだろう。お前らは信用しておいてやる」


 というかだけど、兵士を数を減らしてから安全を確認するってのもどうなのよ。せめて先にコードを調べてから警備を減らしなさいよ。本気で怪しい人だったら普通に王子の命、軽く狙われてたよね。


 あたしたちの目的が王子の暗殺じゃなかったことが救いだったのでは。


 王子のバカっぷりがヤバすぎる。


 よくもまあ今まで無事でいられたもんだ。人望もなさそうだし、下手したら民衆からも嫌われていそうだし、不用意に城下町でも歩いていたら命がいくつあっても足りなさそうなもんだ。


 それとも、こんななりでも民衆からの好感度は高かったりするのだろうか。あまり考えられないのだけれども。


「ええと、確認できそーなのはこんなとこか。ふむ。才腕にして敏腕たる俺様にとって造作もないこと。流石の手腕といったところか!」


 相変わらずワンワンとうるさいことで。


「それではラセナ王子。姫様の部屋まで案内してもらえるでありますか?」


「ああ、そうだな。もう夜も遅いしな。ちゃあんと用意してあるぞ。とびきりゴージャスな部屋をな。だが、お前らの部屋はないぞ? 急な訪問だったからな。空いている部屋はあったと思うが、ええと、まあなんだ。誰かに言えば用意できると思うが」


「いえいえ、お気遣い無用でござる。拙者たちは姫の身の安全を守るため、姫と同じ部屋にて寝泊まりさせていただくでござる」


「んー、そっか。まあ、ならいいのか。ビリアはそれでいいのか?」


 本当馴れ馴れしく名前呼んでくるな、コイツ。まあ、あたしはビリアちゃんじゃなくてナモミなんだけど。


「妾は構わぬよ」


「いいだろう。案内してやろう。ビリア、わざわざお前のためにこの俺様が用意させたとびきりワンダフルな部屋だぞ」


 なんかさっきとちょっと言っていることが違うような気がするが、まあいいか。細かいところを気にしてるとバカになりそうだ。


 何にしても今日は色々ありすぎて疲れた。ヨタ疲れた。


 生きるか死ぬかでずっと緊張しっぱなしだったせいか、心臓が休暇届を投げつけるチャンスを今か今かと伺っていたくらいだ。


 休めると思った途端、身体から力が抜けていくようだった。

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