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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.3 Remain remember

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さっさとおっ勃てなさいよ (2)

 ※ ※ ※



 記憶がハッキリとしない。


 どういうわけか、あたしは服も着ないまま、ベッドの上、ゼクの隣で横になっていた。妙に気分はスッキリとしている。むしろ、心地よい余韻があるくらい。


 強いているなら、下腹部からジンジンと広がる感覚に心当たりがなさすぎて不気味に思っている。いつ、なにを、したんだっけ。


 ゼクを挟んでベッドの反対側には、あたしと同じように裸のプニーがすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。ちょっと可愛い。


 しかし、あたしは何も覚えていない。


 確か、そう。プニーに相談されて、ゼクと三人で、って話をされて、ついオッケーと安請け合いしてしまって、それでゼクの部屋に来て……。


 ダメだ、途中から何も思い出せない。何か変なものでも食べたのかな。


 少なくともこの状況。何事もなく寝入った感じではなさそう。いや、どう考えてもヤることをヤった後じゃないと逆におかしい状況だ。


「ん……、目が覚めたのか?」


 ゼクがこっちに向き直る。


「ぅん、でもなんかボーッとしてる……いつの間に寝ちゃったんだろう? 全然覚えてないの……。あたし、何かヘンなことしてなかった?」


 ウトウトと訊いてみる。すると、途轍もない何かを喉奥に詰まらせたかのような表情を浮かべ、ゼクは数秒の間を置いて口を開く。


「とくに、なにもなかった、よ」


 何かあったらしい。


 思い出そうと必死になってみるも、欠片も記憶が手繰り寄せられない。何があったのかは分からないけれど、ただならぬことをしでかしたような気がする。


 自然と顔がカーッと熱くなっていくのを感じた。


「おはようございます、ゼクラ様」


 遅れてプニーも目を覚ましたらしい。


「あ、ご主人様もおはようございます。今朝の目覚めはいかがでしょうか?」


「ご、ご主人様……?」


「ええ、昨晩、ナモミ様の方からそのように呼ぶようにと言われましたので」


 何をしたんだ、昨夜のあたし。なんでプニーにそんなことを要求した。


「いやはや……昨晩はとても勉強になりました。私、未だにヘトヘトで上手く身体に力が入りません。あのようなことは初めてのことでしたので腰が抜けてしまったようです」


 そういって、珍しくもうっとりとしたような赤面を見せるプニー。かと思えば、身体の方はくったりとしていて、本当に疲れ果てているようだ。


「え、あ、いや……」


「また今度もご主人様にレクチャーをお願いしてもよろしいでしょうか?」


「ぅぅ、と、とりあえずそのご主人様というのをやめてよプニー。いつも通りでいいから」


「分かりました、ナモミ様」


 ジーッと瞳でゼクに訴えかける。一体何があった! 答えろゼク!


「さてと、そろそろ起きるとするか」


 ベッドから抜け出て、引きつった顔でスルーされてしまった。真面目に答えられてしまったらそれはそれであたしも引きつってしまいそうなんだけど。


 代わりにプニーの方からは羨望のまなざしが届いてくる。こっちに訊いたらきっととびっきり正確な答えが返ってくるに違いない。恐ろしくて訊くのが怖い。


「今度はいつになさいますか?」


 この目はとても期待している。そんな感情をヒシヒシと突きつけてくる。


「えっと……当分はなし、かな……」


「そうですか」


 心底ガッカリしたかのような無表情だ。


「男性と女性以外でもあのようなことができるなんて私知らなかったものですから」


 何も聞こえない。あたしは何も聞いていない。プニーは何も喋ってないから。絶対そうだから。聞こえない、聞こえない。あーあー。


 あたしもゼクに続いてベッドから跳ね起きる。手元の端末に触れ、服を着る。着るというよりかは出現させるという表現の方が正しいような気もするけど。


 今日のコーディネートは柔らかい風のようなイメージで清楚なワンピーススタイルだ。フローラ・ブランドの服は気分次第でそのデザインを変えてくれるから凄い。元々あたし専用に構築されているのでどんな服でもあたしに合うようになってる。


 に、してもこれまたのほほんとした服だね。あたしの浮かれている感じがよく表れている。これからゼクと二人きりでデートでも楽しもうと言わんばかり。


「は、ふぅ……」


 熱い吐息に後ろを振り返ると、まだプニーがベッドの上でへばっていた。本当に動けないらしい。一体何をどうしたらそんなことになるのだろう。


 なんかふと見たらベッドの周囲に大量の小道具のようなものが散らかって見えたような気がするけれども見なかったことにしよう。使った記憶もないし、あんなもの見た記憶もない。そういうことにしておく。


「プニー、大丈夫?」


「あ、はい……申し訳ありませんが、もう少しだけ……」


 身体を起こすのも怠そうな調子で、くたぁっとベッドに落ちる。なんともレアなプニーだ。写真に収めておきたい。


「ナモミはブラックコーヒーで、プニカはマゼンタココアでいいか?」


 キッチンスペースでパネルを操作していたゼクがこちらに向き直る。


「あ、うん。それでいいよ」


「はい、ありがとうございます……」


 返事と同時に、二つの温かい飲み物が香りを立てて壁から現れる。相変わらず便利なもんだ。何処からどのようにして作っているのか、多分説明されても半分も理解できないと思う。


 ゼクからコーヒーを受け取る。ああ、温かい。ブラックなんて以前はただただ苦いだけであんま飲めなかったけれど割と最近は飲める。


 特に美味しいものだと苦い以外の味が分かるから不思議なものだ。それとも、ずっと前のあたしにはこの味に気付かないくらい鈍感だったのかな。


「ほら、プニー、ここに置いておくよ」


「ありがとうございます、ナモミ様」


 謎の小道具を退かし、真横のテーブルに不思議な色をした飲み物を置く。


 そういえば、昨晩も何かを飲んでいたような気がする。なんだったっけかな。まあ、思い出せないなら無理して思い出すこともないか。もうさすがに怖くなってきた。


 ふぅー、とコーヒーに一息。そしてもう一口。


 こうやって一つのベッドを三人で囲って過ごす一時も、なんとなく平穏でいいんじゃないかな、なんて思えてしまったけれど、どうなんだろう。


 またいつか、ゼクとプニー、はたまたお姉様も巻き込んでピロートークする日が来てしまったりするのだろうか。


 あたしはどうともとれない小さな息をついた。

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