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ぷらとにっく・ぎゃらくしぃ  作者: 松本まつすけ
Episode.3 Remain remember
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Punica Report (2)

「どうやら無事に開通したようでござるな」


「ラグも特にないであります。後のプロテクト強化は我が輩達に任せるであります」


 そういってジェダとネフラの二人が何事もなく、ゲートを潜って姿を現わす。


「ジェダ様、ネフラ様。ようこそ『ノア』へお越しくださいました」


 二人の前へと歩み寄り、プニカがペコリとお辞儀する。


「これからよろしくであります!」


「よろしくでござる」


 加えて、プニカのやや隣側にクリスタルのような立体映像が出現する。マザーノアだ。


『識別名称『エデン』。個別名称、ジェダ。個別名称、ネフラ。コード認証。ようこそ『ノア』へ。歓迎いたします。人類の繁栄へのご支援、感謝申し上げます』


 ピカピカと光り、何やら単語を細切れにしたような何かを呟きながら二人をスキャンすると、何も問題がないということを把握できたのか、そのまま直ぐさま消えていった。あまり感情らしきものは見られないが、精一杯の歓迎であることには変わりない。


「簡単なメンテナンスが終わったら、早速みんなに挨拶に行くッス」


「この程度の調整なら朝飯前であります。サッサと取りかかるであります」


「もう大部分はエメラ殿がパパパっとやってあるでござるからな。そこまで時間は取らせないでござる」


 ジャキン、と手のひらを工具のような形状に変形させ、三人がゲートのまわりを取り囲むように配置する。そしてまた無数のディスプレイが宙を埋め尽くし、夥しい文字列が高速で行き交いし始める。


 それが何分だったか、あるいは何秒だったか。作業はたった今始まったような気がするが、丁度今終えたようだった。


「ゲート座標定着を仕上げたッス。今の転送履歴のデータを元に、より高精度に転送できるようになったッス」


「ジャミングプロテクト展開したであります。ちょっとした妨害電波くらいであれば何の問題もなくカットできるであります」


「ショックコーティング完了でござる。超高圧電磁砲をドガガーンと撃ち込まれても破壊されることはないでござる」


 既にもう完成状態だったゲートもさらなるアップデートが加わったようで、見た目的には何も変わっていないように見えるし、機能的にも大幅に変化したわけでもなさそうだが、より完璧に近いものになったらしい。


「迅速で丁寧な仕事、本当にありがとうございます」


 その差異を、外見は元より内部データを眺めても見極められるほど今のプニカは観察力に優れているわけではないが、律儀に首を垂れる。


「それでは、皆様がお待ちしております。ミーティングルームへご案内します」



 ※ ※ ※



「――というわけッス」


「これからこの『ノア』でお世話になるであります」


「どうぞよろしくお願いするでござる」


 そういってエメラの一声に、ジェダとネフラの二人がペコリとお辞儀する。


「ああ、こちらこそ、よろしく頼むよ」


 ゼクラ(コロニー『ノア』の居住者。名称無し。軍事用に遺伝子改造された人造人間。発音しづらいコードの略称を暫定的に呼び名としている。人類)が会釈で返す。


「よろしくね」


 その隣のナモミ(コロニー『ノア』の居住者。本名、中野ナモミと自己申告。ただしそれを示す明確なデータは無し。コード非付与ではあるが人類)もパチパチと小さく拍手を添える。


「よろしゅう」


 一方で、キャナ(コロニー『ノア』の居住者。本名はリリー・カーソンとデータは示しているが、何故か自身をキャナと名乗る。意図は不明。超能力者サイコスタントであり、人類という種では機械人形オートマタに次いで進化している存在。分類としては人類で相違なし)は何処か上の空のような顔を浮かべつつも、笑顔で濁らせる。


「まさか我が輩たちがエメラの尻拭いする羽目になるとは呆れる話でありますな」


「エメラ殿もまだまだ尻が青いということでござるな」


「いやいやいや、べ、別にボクはそういう……」


 言葉にしようとするも適した返答を検出できなかったのか、口から何も発することができず、代わりにエラーブザーのように「うぅぅ」と唸る。


 コロニー『ノア』には現在、ごく少数の人類が居住しているが、現状のままでは人類が絶滅してしまうという可能性が考えられた。そのため、絶滅危惧種保護観察員として機械都市『エデン』からエメラが派遣されることとなった。


 ところが、つい先日のこと。この『ノア』において、セキュリティに関する重大な穴があり、居住していた人類の命が危ぶまれるという事件があった。


 それにより、本来は一人で十分と考えられた観察員に増員が必要であると判断され、新たにジェダとネフラが派遣されることとなった。


 今しがた、小一時間ほど掛けてそんな紹介をしたところだった。


 実際のところは、エメラ自身に非があったかどうかは判断し辛い状況ではあったものの、危うく絶滅危惧種を目の前で減らしてしまうところだったという事実は揺るがない。エナメル質を持たないが、エメラは歯痒い心地だったに違いない。


「エメラちゃん一人でもかなり助かってるのに、ジェダちゃんとネフラちゃんまで来てくれたらもう大・大助かりだよね」


 このコロニー『ノア』も造られてから長い。端的に言って旧式。過去の遺物。あちこちガタがきていて修繕を必要とする箇所も多い。


 さらには機械人形オートマタ(進化した人類の一つ。機械細胞などの埋め込みにより知能や技能等、あらゆる面で従来の人類と比べると飛躍的に進化している。便宜上人類であるが、厳密に人類と分類するか、マシーナリーと分類するかの議論は未だ終結していない)の技術によって造られているため、今いるごく少人数の人類だけでは手に余る。


わたくしも大変助かります」


 現『ノア』の管理者のプニカも力強くうなずく。


 何百年分もこの『ノア』で過ごしてきて、一言では語りきれないような苦労の積み重ねもあったのだろう。いかに文明の利器に頼ろうとも全てにおいて万能に対応できるほど、人類は著しい技術的革新には追い付けてはいない。


「それでは、お互いに簡単な挨拶も済ませたことですし、このまま定例ミーティングに入りましょう」


 そう言いながら、プニカは壁に取り付けられた大きなボードに向けて手を伸ばす。


 宙で手のひらをわしゃわしゃと動かすと、それは起動し、ミーティングモードへと移行した。

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