5.ランプの秘密とカード
「それではお聞かせ願えますか?ランプについて」
そろそろ外は日が少し傾きかけていた。昼過ぎであろう。努に特に用事はなかったので問題はなかったのであるが・・・。
「わかりました。あのランプは、おっしゃる通り、磨くことによって煙が生じ、小人が現れます。その小人はランプを磨いた人、つまり、ご主人様の願い事を一つだけ叶えてくれるというものです。そして、願い事を叶え終わると、再び煙が生じ、ランプへと吸い込まれ、ランプは光となってどこかへと飛んでいきます。そのどこかというのは、誰にもわからないのが事実なのですが、地球上で、地上であることは確かなのです。海の中や、空中には漂いません。これをどうやって見つけるのかについてですが、一つは、このランプの不思議な現象を利用するのです。1日に1回大きな光を空に向かって放ちます。それを偶然見つけることが出来ればいいのですが、昼間であったりすると、見えませんのであまり役に立たないとされています。そこで、ランプを探す研究者はランプのこの光を検知する機械を作成しました。違う光などにもたびたび反応してしまいますので、なかなか正確というわけには行きませんし、具体的な位置までも特定できるわけではありません。その気になる機械のことなのですが、シャインキャッチマシンという機能そのままの名前です。これは当初、このランプが悪用されないように回収し、ランプを保管することを目的としている機関向けに開発されたものでした。しかし、金に目がくらんだ研究者の1人がそれを持ち出し、外観をごっそりと変更し、量産し、各地のランプハンターへと高額で売りさばいたのです。それが高額で売れる理由は言うまでもないでしょうが、ランプが見つかればすぐに取り返せるからです。こうして、ランプはランプハンター誰の手に渡ってもおかしくない状況へとなりました。
さて、ここで、ランプはいつごろからあったのかと言うことに関して話をしたいと思います。このランプはおよそ300年前に発見され、善良な人間によって100年前に地下奥深くに封印されました。それが20年ほどたったときの大規模な火山の噴火により地上へと戻されたという説が有力です。確かではありませんが・・・。」
黙って聞いていた努であったが、こらえきれずに口を開いた。
「なぜ?なぜ地下に封印するのです?それは確かに光などは地上に出てきたりしないのでわからないでしょうが、地殻変動などによって地上に出てきてしまうことは明らかでしょう?」
「ええ。それはそうです。しかし、ランプの願い事はランプに関することは出来ない決まりとなっているのです。つまり、ランプを無くして欲しい、だとか、ランプの次の場所が知りたいだとか・・・」
「だったら、ランプを壊すなり、溶かすなりすれば・・・」
「もちろん、試みています。しかし、無駄でした。そこで、またランプを回収し、地下にシェルターを作りそこに収めました。それを行ったのは私です。ちょうど今から50年前のことです」
「ということは、あなたはそのランプを回収する機関の人間であったと?」
「いいえ、違います。ですが、後でその機関には報告しました。そして、機関の人間によりチェックされ、この様子だと大丈夫だろうということになりました。しかし、機関は監視のために活動を続けています」
老人は一気に話をしているので、一呼吸おく必要があった。
「それで、私はそのランプを回収し、再び封印しようと思うのです。先ほど機関にもランプが復活したことを伝えましたが、私なんかが気づく前に気づいていたでしょう・・・。今頃はランプ探しに出かけているはずです。
しかし、大人数でかかればランプハンターに見つかりかねません。あのとき現役のランプハンターだった者は私のような老いぼれとなってしまっていますが、その子孫に継がせる可能性は否めません」
さらに老人は一呼吸おいた。
「人間の欲望は周りがどうなろうと気にならないくらい強いものであることをしっかりと覚えて置いてください」
すべてを言い尽くした老人はポケットからカードくらいの大きさのケースを取り出し、そのケースを開けた。中からは少し分厚いいくつかのメータが付いたカードが出てきた。
「これがシャインキャッチマシンのカード型です。これだと携帯に便利でしょう」
「本当にこんなものでわかるのですか?」
「ええ、この方位磁石みたいなものが付いているでしょう?」
二つのメモリと供に確かにそのようなものが確認できた。
「これが前回に光を確認したときの方位です。ずっとその方位を指し続けます。それから、このメータの一つは光までの水平方向の距離を表します。もう一つは鉛直方向の距離、つまり高度の差を現しています。これを参考に地図などで場所を割り出すのです。そうですね、明日の夕方にまたここへ来ていただけますか?そのときのメータなどを地図と照らし合わせてみましょう。ただ、違う光を感知する場合もありますからなんともいえませんが・・・」
努はソファを立とうとしたときに、老人はさっきの封筒を指して言った。
「これは明日の地図との照らし合わせの具合に応じてお渡しします。それなら受け取られるでしょう?」
努はわずかに頷いた。